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2006/05/05

青いチューリップ

 帰省している。今日は町ではお祭りの日。神輿を担いで回る声が聞こえてくる。写真を撮ることができなかったので、昨年の画像を。

 我が家の庭は今、チューリップが満開。これ以上ないほどに咲いている。おりしも、砺波市では連休の時期に合わせてだろうか、チューリップフェアが開催されている。
 そこで今日は歳時記上は初夏だけれど、春の花チューリップを採り上げる。富山や新潟では平野部だと今が旬の花だし。実際、両県の県花でもある。

Sionreye

→ おなじみ紫苑さんから戴いた画像です。お庭は花盛りだとか。近々ピンクの額紫陽花の画像も届けてくれるというから楽しみ。
 ところで、この花の名は?

 ネットで検索してみたら、いきなり野の花Stepping Out チューリップ (鬱金香)」なる頁が登場した。
「名の語源は、ペルシャの古語の「tulipan(頭巾)」トルコのオーストラリア大使が 花の名前を聞いた時 ターバン(チュルバン)に似ていると答えた通訳の返事から。」と、小生の好きな話題、語源の話が載っている。
 そう、画像の豊富な「毒草:チューリップ」なる頁にもあるように、「チューリップといえばオランダですが、もともとはトルコの花でオランダ同様国花にもなってい」るのだとか。

 チューリップの投機が過熱しすぎてオランダを滅ぼしかねなかったという話は有名なので、今回は割愛する。そのうち、俎上に乗せてみるかも。

『モンテ・クリスト伯』や『三銃士』で有名なアレクサンドル・デュマに『黒いチューリップ』(宗 左近訳、創元推理文庫)という本があることだけ、メモしておこう。
 レビューには、「風車とチューリップの国オランダ、その片隅で神秘の花、黒いチューリップの創造に没頭する青年コルネリウスは、陰謀にまきこまれていまは断頭台へひかれていく運命にあった。風雲急を告げるオランダ戦争前夜の史実を背景に、大自然の摂理の妙と地上の血なまぐさい係争をめぐって展開する、大デュマ会心の恋と戦乱の雄渾なる一大叙事詩!」とあるから、作品の出来はともかくとして、今の時期に読むには最高かも。
(文中、大デュマとあるが、となると小がいるわけで、大デュマの息子(私生児)で「椿姫」の原作者であるアレクサンドル・デュマ・フィスである。)

 いきなり、と書いたのは、「チューリップ (鬱金香)」と表題にあったからだ。チューリップという名称にあまりに慣れているし、慣れすぎていて、また、庶民的なイメージが強く親しみを持ちすぎているからだろうか、「鬱金香(うっこんそう)」という名前には、思わず腰を引いてしまう。
「鬱金香」という名前、薬草での名称なのだろうか。その辺りのことなども、小生は未読だが、「十六世紀半ば、欧州園芸史上に登場したチューリップは、十七世紀初頭に熱狂的な人気を呼び、江戸時代後期には日本に渡来した。チューリップの文化史・産業史を詳述する好著」という、木村敬助氏著の『チューリップ・鬱金香』が教えてくれるのだろうか。
 それとも、毒部位として「全草、球根、花、葉」があり、「嘔吐、皮膚炎、心臓毒」といった症状があらわれるという、そのことが「鬱金香」という重々しいような名前に繋がっているのだろうか。
「鬱金香」について何を教えてくれるわけではないが、画像の見事さがネット上では際立つので、「Weblog -insomnia- 鬱金香」を紹介させてもらう。

たかいち チューリップ園」なる頁を覗くと、「チューリップは16世紀にトルコからヨーロッパに伝わり、オランダ等で品種改良が加えられ、日本へは140年程前に伝わったとされており、中国と同じく鬱金香と呼ばれていました」とある。
 やはり、中国での名称を引き継いでいるわけだ。
 この頁では、李白の漢詩が紹介されている:
 

蘭陵美酒鬱金香 玉碗盛來琥珀光
但使主人能醉客 不知何處是他鄕

 読み下す力はないので、「李白 客中行 詩詞世界 碇豊長の詩詞:漢詩 libai libo」の力を借りる。
「客中行」という題名なのだろうか。以下のように読み下されている:
 
蘭陵の 美酒  鬱金香,
玉碗 盛り來る  琥珀の光。
但だ 主人をして  能く客を醉はしめば,
知らず  何(いづ)れの處か  是れ 他鄕なるを。

 いつもながら懇切丁寧な脚注が付され、山水画が載っている。
 ただ、読んでみると、鬱金香は、必ずしもチューリップとは限らないようだ。

 話は変わって…、「毒草:チューリップ」なる頁の冒頭にある、「小妖精は子どもの揺り籠のかわりにこの花の中に子ども入れて風にゆらしているといわれています。用心深い妖精なのでそっと覗かないといけません。そして、決して眠りの邪魔をしないこと。手痛いオシオキが待っています・・・。」というのは、気になる一文だ。
 そうなのだ。チューリップの花というのは、単純明快で正直そうで、眺めるこちらの目を真正面から見返す透明な瞳、というイメージがあったりする。
 ところが、実際には、ユリ科の花なのだが、花びらは閉じていて、和服姿の女性で言えば、襟元まできっちり着付けされている、ということになるか。
 だから、まあ、覗き込んじゃー、いけないのだろうが、そこはそれ、覗いてみたくなるのが人の習い、でも、そうした欲求を花が(人が)知っているから、安らかな眠りに就いている妖精の邪魔をしたら、しっぺ返しが来るという戒めがあったりするのだろう(か)。

 あああ、ここまで書いてきて、小生、昨年の三月にこの季語随筆日記にて「チューリップ・原色…」という題名でチューリップを既に採り上げていることに気づいた。
 が、ざっと眺めてみたところ、記述のダブりは少ない。助かった?!
我が家のチューリップ」は、ただのメモだし。

 気を取り直して改めて「チューリップ - Wikipedia」にてチューリップについての知識を得たい。
 冒頭付近に、和名は鬱金香(うこんこう)とあるだけで、「鬱金香」という名称の由来については説明がない。
「アナトリア、イランからパミール高原、ヒンドゥークシュ山脈、カザフスタンのステップ地帯が原産」とある。トルコが原産地ではないのか。あくまでチューリップという名称との絡みでトルコに言及されることが多いということなのか、ちょっと疑問が湧いてしまう。

 この頁で嬉しいのは、「チューリップの園芸品種群」についての記述が表にされていることか。「毒草:チューリップ」での画像と併せて読むと、楽しいかも。
 品種について一言しておくと、チューリップは富山(や新潟)の県花だと記したが、富山では新種に挑戦していて、その話題が時折、東京居住の小生にも風の頼りに(?)漏れ聞こえてくる。
 ネットでは新しい情報が見つからなかったが、例えば、「北陸中日新聞 こちら富山支局 閃(ひらめ)くまでに」を覗くと、「青チューリップに挑戦」という興味深い表題の記事を読むことが出来る。

 青色のバラへの挑戦の話題は結構、耳にするが、(真っ黒のチューリップや)青色チューリップへも挑戦が続いているのだ。
 とにかく、富山からは毎年のように新種の話題が聞こえてくる。
(青色のバラについては、昨年、最相葉月著『青いバラ』(小学館刊)を読んだこともあって、小生に拙稿「薔薇の芽それとも青いバラ」がある。)

 あああ、まだまだ調べたいことが一杯ある。
 例によって総花的(というか、総蕾的)記述に終わったけれど、あとは読まれた方が掘り下げていってほしい。
 ただ、季語随筆と銘打っているのに、チューリップ絡みの句を一つもあげていない。「日刊:この一句 バックナンバー」での句が気に入ったので、掲げておく。鑑賞文を読むと面白いかも:
 

 チューリップ友に三人まりこさん   内田美紗

 以下は、せっかくなので駄句を一ひねり…:
 

 晴れやかににこやかに咲くチューリップ
 陽光に負けじと背伸びチューリップ
 チューリップ花の妖精机にも

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コメント

こちらにお帰りですか
うららかな日が続いて
いい連休です

昨日はコメントいただき
ありがとうございました
コメント通知があったのに
何故かブログに反映されておらず 
こちらにお邪魔しました


 石楠花の目に綾なせる絹の生地
  このひとときに陽は寄り添いつ  


一昨日 朝日町の護国寺に行った人から
シャクナゲが そろそろ見頃と聞きました

http://www.town.asahi.toyama.jp/site/box/gokokuji.shtml

では また

投稿: はれあめ | 2006/05/06 09:41

はれあめさん、こんにちは。
三日にこちらにきてずっと晴れ。曇りはあっても雨はなし。洗濯に草むしりに炊事に買い物にと、雑用を愉しんでいます。
お陰で何処かへ出かける余力がなく、まあ、こちらでしか乗れない自転車での買い物が息抜きになっているような。
護国寺の石楠花やツツジは素敵なのでしょうね。

ブログにお邪魔したら石楠花の素敵な画像があったので、この季語随筆でも採り上げようとあれこれ調べたけれど、チューリップの話題のほうが庭に咲いている事もあり、先にテーマにしました。
 来訪ありがとう。

投稿: やいっち | 2006/05/06 15:28

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