タクシー事情追記
「タクシー規制緩和の見直し」といった記事を7日に書いたばかりなのだが、今日までの間だけでも若干の追加すべき情報を得ることができた。
目次:
不況と自殺者の増加
タクシーの社会的規制
タクシーの社会的役割
閑話休題:タクシーと防犯
健康増進法と遅れている禁煙タクシー化
タクシー 便利さと安心の両立を(新聞の記事から)
→ 5月10日頃より自社のタクシーに貼ってある「タクシーこども110番」なるステッカー(5月15日撮影)。
少子化対策の一環として「タク育児輸送に助成」という構想も国交省が検討しているとか。あるいは「タク運転者の歩合賃金に問題意識」という北側国交相の参院委での発言も注目される。(←「東京交通新聞」)タクシー・ハイヤー・バス・介護などの専門新聞)より。05/16 追記))
不況と自殺者の増加
上記の記事の中で、「97年8月から始まった橋本龍太郎不況(その年の4月に行われた減税の廃止、消費税のアップなどなどの結果が表面化したのが8月だった。実際は、財務省(旧大蔵省)不況というべきだろう。財務省当局の言いなりで政策を決定したツケが国民に、国に回ってきたのだ)で、一気に流しの営業が不調となった。」と書いているが、データ的な裏付けを施していない。
「参考資料:警視庁発表 自殺者数の統計」なる頁に載っている「自殺者数の年度推移」という表が不況ぶりを如実に物語っている。
特に平成9年(97年)から10年(98年)の間での数字の変化に注目してもらいたい。
98年は97年に比べ、24,391人から32,863人と、一気に約8,500人も増加している!
増えたのは主に中高年の男性である。被雇用者と無職者とあるが、給料や待遇の急激な劣化、乃至はリストラ(首!)によって無職となった人が増えたのだろうとは容易に想像ができるだろう。
橋本不況、それに続く小泉不況の結果がこれである。
痛みに耐えて改革をというが、痛みが痛みでは収まらず、死という極限にまで至っている、その現実。
橋本・小泉不況の結果、98年から昨年までで増えた分だけで単純計算すると、約7万人が政策の結果、あるいはセイフティネットを後回しにした結果、死に至ったと考えることは、決してこじつけではないと思うが、どうだろうか。
このほか、凶悪で粗暴な犯罪の増加、特に「オレオレ詐欺」や「未公開株詐欺」など、経済事犯が急激に増えたのも不況の結果ではないのだろうか。
病気になっても、医療費の負担割合が高騰しているから(1割負担から3割負担と実際に負担する額が一気に3倍となった!)、うっかり病院へも行けない。病気による死亡や病気の昂進があったとしたら、自殺者の数には入らないけれど、政策の結果であるというべきだろう。
年金不安、介護疲れ…。数え上げると心配の種は尽きない。
(前回、「朝日新聞(5日朝刊)に「便利さと安心の両立を」という記事が社説の欄に載っていた」と書いたが、参考に末尾にその記事の一部を転記し示す。)
タクシーの社会的規制
タクシーについては、国もある程度の社会規制を実施している点を書かないと国に対して不公平だし失礼に当るかもしれない。タクシー運転者の適切な労働環境の確保に力を入れるなど、規制緩和一方ではないのだという点は銘記しておいていいだろう。
例えば、タクシードライバーがスピード違反などの交通違反や飲酒運転をしたら、従来は運転手が切符を切られ罰金を払うだけだったが(当然、点数も加算される)、社会規制が課せられた結果、違反した当事者への罰則は強化されたのみならず、運転手の所属する会社へも一定の罰則的な事項が科せられるようになった。
つまり、運転手と会社とは運命共同体的なつながりを持つようになったわけである。最早、規則違反は運転手だけの問題ではなくなっている。よって、会社での運転手への健康面を含めた管理体制がシビアーなものに変わっている。
そのほか、今、何が検討されているかは、「厚生労働省:タクシー運転者の適切な労働環境の確保に関する連絡調整会議における検討結果について」などを参照のこと。
タクシーの社会的役割
タクシーの果たす社会的役割については、7日付けの記事である「タクシー規制緩和の見直し」の中でも「サポートCab]など若干、書いた。
すると、9日の朝、営業の日に当るので営業所へ向かったら、タクシーの窓に「タクシーこども110番」というステッカーが貼ってあった。過日の報道で(確かテレビで見たような)、都内のタクシー2万数千台が「子供110番」の運動に協賛し、活動を始めたとあったが、我が社は加入しないのかと思っていた。
それが、やや遅まきながら、我が社も運動の主旨に賛同し活動に加わることになったと、その日の朝礼で言われたのだった。
「子供110番」という活動の内容や目的に付いては、縷々報道されているところであり、かなり知られているのではないか。
例えば、「こども110番の家」なる頁を覗くと、「緊急避難所」と銘打った表題が目に入る。
「全国的に児童・生徒等をはじめ社会的弱者を狙った通り魔的犯罪が多発傾向にあり、国民に恐怖と不安感を与えて」いる。「児童・生徒等が「声かけ」や「つきまとい」などの身の危険や不安を感じたときに、直ちに駆け込み、救助を求められる緊急の避難所として「こども110番の家」を設置し、この種事案の未然防止を図って」いるということで、「こども110番の家」の活動が既に始まっているのだが、そのタクシー版もいよいよ始まっているということである。
閑話休題:タクシーと防犯
防犯というと、98年頃だったか、当時としては珍しく地方へのロングの仕事が入ったことがあった。不況のどん底にあった時のことである。
不況で金融不安が喧伝されていて、日本の経済そのものが破綻する懸念さえ一部には真剣に語られていた。アジアの金融危機が実際に発生していた頃でもある。
都内を夜半を過ぎた時間帯に走ると、空車のタクシー以外に一般の車が走っていないのではないか、という時期が数ヶ月ほど続いた。日中は最低限、一般の車も走るが、ビジネスなど必要不可欠の時以外は、トラックも含め乗用車が走っていないかのようだった。
そうした状況は地方(東京から見ると郊外の地域)が歴然としていた。
そんな中、空車とはいえ、タクシーのみが薄ら寒く感じられる街灯がそぼ照らす街頭を走っている。
小生は、そのとき、大袈裟ではなく、タクシーは治安の維持に一定の役割を果たしていると感じたものだ。
何しろ、車はおろか、人影が見当たらないのだ。ポツポツと見受ける人影は、もし人目の付かない町角で強盗などに遭ったら、孤立無援だ。
けれど、タクシーだけは日中はおろか、夜半だろうと、夜半過ぎだろうと、未明だろうと、乏しい数のお客さんだろうが、乗せて郊外や人気のない町外れだろうが、走るのである。実車で向かい、空車で帰る。
タクシーは車の入れるところは、縦横無尽に走っている。都内だけでも数万台のタクシーが日々二十四時間走っているのだ!
好不況に関係なく津々浦々を走っているはずのタクシーが「こども110番」のみならず、一定の治安維持に資するなら、素晴らしいことではないか。
健康増進法と遅れている禁煙タクシー化
9日、仕事をしていたら、タクシー運転手には聞き逃すことの出来ないニュースがラジオから聞こえてきた。テレビでもこのニュースが報じられていたのか、残念ながらテレビ環境の整っていない小生には分からない。相変わらず醜聞的なワイドショーネタに終始しているのだろうか。
そのニュースとは、「タクシー全面禁煙を」 横浜地裁支部、受動喫煙に裁判官が警鐘」というもの。
近い将来、記事が削除されるだろうから、一部でも転記しておく。
その主旨は、「禁煙タクシーへの乗務が認められず受動喫煙で健康被害を受けたとして、横浜市戸塚区の運転手大畠英樹さん(39)が勤務先の神奈中ハイヤー(神奈川県厚木市)に50万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁小田原支部(尾崎智子裁判官)は9日「提訴前に会社側への被害申告がなかった」として請求を棄却した」というものだった。
不思議なのは、「判決によると、大畠さんは2003年6月に入社し04年6月以降、禁煙車での乗務を希望したが実現せず、同年8月に「受動喫煙によるとみられる慢性気管支炎」と診断された」のにも関わらず、「「提訴前に会社側への被害申告がなかった」として請求を棄却した」のは理解に苦しむ。
記事はさらに、以下のように続く
「しかし尾崎裁判官は判決理由で、会社側に受動喫煙による健康被害から乗務員を守る責務があるとし「タクシー全面禁煙化の早期実現が望ましい」と述べた。
その上で「喫煙者、非喫煙者が互いの立場を理解することが必要」とも述べ、全車禁煙化実現までは喫煙車、禁煙車に分けて乗客の喫煙を一定限度で認め、会社側は乗務員の定期健康診断などで被害が生じないよう配慮する義務があるとした。
一方、乗務員も受動喫煙による体調の変化を明確に会社側に告知する必要があると指摘。大畠さん側は「判決は受動喫煙の影響を軽視している」として控訴する方針。」
この「会社側に受動喫煙による健康被害から乗務員を守る責務があるとし「タクシー全面禁煙化の早期実現が望ましい」」といった判決、乃至は付帯意見というのは、昨年の裁判でも裁判官により判決文に記せられていたはずだ。
この記事を書く過程でネット検索して情報を探っているうちに発見したのだが、関連するサイトに「タクシーの全面禁煙化を目指すと同時に、職場・生活の中で受動喫煙を受けない環境作りも目指します」という主旨の「受動喫煙の完全防止を目指すブログ」があった。
その最新の記事は、「判決要旨」である。
他に、「分煙社会から無煙社会へ」と銘打っている、「たばこ問題関連訴訟情報」なるサイトも今回、見つけた(但し、新しい情報が載っていない!)
さらに、「健康増進法第25条適合の禁煙タクシーにみんな乗ろう!」という主旨の「禁煙タクシーを応援しよう」というサイトもある。
タクシー一般の知識に付いては、「タクシー - Wikipedia」が宜しいようで。初耳の知識が結構、あった!
「東京タクシーセンターのホームページ」を紹介しないと、あとあとが怖い。お世話になってます。
●付録:「asahi.com :朝日新聞今日の朝刊-社説」(2006年05月05日(金曜日)付)より
タクシー 便利さと安心の両立を
大都会でも地方でも、客待ちのタクシーがあふれている。
「30年間、この仕事をして子ども2人を育てた。今の収入では難しい」。ここ5年ほどで800台以上増えた全国有数の激戦地、仙台市の運転手の実感だ。
リストラと離婚を体験した大阪市の50代の新人運転手は話す。「年収は以前の4分の1に満たない200万円余りだが、ほかの仕事は見つかりそうにない」
タクシーの規制緩和は02年から始まった。地域一律だった初乗り運賃が、一定の範囲内とはいえ自由に決められるようになった。新規参入や増車もしやすい。
成果は大きかった。各地に初乗り500円のワンコインタクシーが登場した。大阪では5千円を超えた分は半額になる割引が当たり前。深夜の車探しに苦労した東京でも、いまは簡単に乗車できる。
規制緩和の時期は、金融危機後の不況のさなかだった。転職を迫られた中高年の職の受け皿にもなっている。
しかし、影の部分は無視できない。
企業などが交通費を削ったあおりで市場が縮んでいる。04年度の利用客は5年前より5%減り、水揚げも落ちている。
そこに新規参入が増えたのだから客の奪い合いは激しくなる一方だ。運転手の賃金は歩合給の割合が大きく、収入減に直結する。法律が定める最低賃金の水準を割り込むこともある。
年金生活の岡山市の運転手は「育ち盛りを抱える人は、月20日以上働いている。健康を無視した働き過ぎを会社も見て見ぬふりだ」と若い同僚を心配した。
信用調査機関の東京商工リサーチは、業界はなお増車が続くと分析する。会社はそれなりにもうかる構造だからだ。そのしわ寄せが運転手に集まる。
交通事故も気になる。タクシーなど事業用乗用車による人身事故は、この10年で48%も増えたという統計もある。
だからといって規制緩和がもたらした利点を捨て、国が利権を差配する時代に逆戻りしていいわけではないだろう。
最低賃金や労働時間の厳守は自由化の大前提だ。規制緩和に悪乗りし、運転手を酷使する悪質業者は退場させよう。
それには当局の監視はもちろん、それぞれのタクシー会社に賃金水準や事故件数の公表を求め、乗客側がタクシーを選べる仕組みをつくる必要がある。
規制緩和の中身も、きめ細かいものにしたい。例えば、過密地域での開業は、地理の知識や安全確保の実績などの基準を満たす優良ドライバーを雇う会社を優先するような方策を検討していい。具体的な選考は自治体や利用者、運転手も加わった場で進めてはどうか。
規制緩和は競争力を失った分野を力強くよみがえらせる取り組みだ。しかし、画一的に乱暴に推し進めれば、弱肉強食の横行を許し、地方の衰退などを招きかねない。
問題点を見極め、まじめに取り組む人が損をしないようその都度改めていく柔軟さが、便利さと安心を両立させる。
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コメント
「タクシーこども110番」なるステッカーの画像を載せました。
他に、若干の追加情報あり。
記事の中で、98年からの急激な自殺者の増加現象に触れているが、最近、急増し高止まりしている自殺者に関し、これは社会的な対策、国を挙げての取り組みが必要な現象であるという認識が高まり、関連のニュースがマスコミでも採り上げられるようになったのは注目すべきと思う。
投稿: やいっち | 2006/05/16 14:15