黄砂に吹かれて
昨日はタクシーの営業の日だった。小生は遅番の出なので、実際の営業を始めるのは11時前。いつものように都心に向かってみると、普段とは様子が違う。交通量が多めのような。5・10日でもないのに何故。
連休前だから? と思っていたら、「[線路変形]またトラブル 乗客、怒りの声 山手線ストップ」といったアクシデントのためだった。
その内容は、報じられているように、「24日午前10時半ごろ、東京都新宿区大久保3のJR新大久保―高田馬場駅間を走行中の埼京線・湘南新宿ライン大船発宇都宮行き普通電車(15両編成)の運転士から「通常の走行音と違う音を感知した」と東京総合指令所に連絡があった。付近を走行中の山手線内回り電車(11両編成)も異常に気付いて緊急停車した。JR東日本が付近を点検したところ線路の一部が盛り上がり、変形しているのが見つかった。」というもの。
ラジオである電車関係の工事や事故の専門家の方が話されていたことが印象的だった。「線路の一部が盛り上がり、変形してい」たというが、その盛り上がりは5センチほど。だが、その方によると、線路の異常個所が直線だったから走行の異常で済んだが、これがカーブだったりすると、脱線もありえる重大な変形であり異常なのだとか。
原因については、[線路変形]JR東日本開発の工法で線路隆起」と言われているが、詳しい原因の解明はこれからだろう。
思えば 奇しくも今日は、「福知山線脱線事故から1年、きょう追悼慰霊式(読売新聞)」といった話題がニュースの筆頭に来る日でもある。
なんだか、昨年の今日の事故の教訓を忘れるなという戒めのように思えるのは不謹慎な感想だろうか。
さて、そんなトラブルの情報を折々ラジオから仕入れつつ営業していた。
→ 紫苑さんにいただいた名残の桜(画像)です。山の原で開催された「つるやオープンゴルフトーナメント」に観戦に行ったり、京都の「都をどり」を観劇したりと相変わらず活動的な紫苑さん。無精を決め込んでいる弥一としては、爪の垢でも煎じて飲ませてもらわないといけないかもね。
雨が降るような降らないような、風が出たかと思うと収まってしまう、春らしい不穏な天気。関東でも山のほうでは雷雨の地域もあったとか。
都心でも夜に入って小降りの雨が思い出したようにやってくる。
ところで、驚かされるのはタクシーのボディの汚れ具合。やたらと土埃が付着して汚らしい。
例えば雨が降ると、ボディの汚れは雨が降っている間は流れ落ちていく。雨粒の中にだって埃や塵は含まれているはずだが、ほんの微量で、水飛沫(しぶき)泥はねなどは別にして、雨で車のボディ表面が汚れるのは、あるいは汚れが目立つのは、雨上がりである。雨滴で濡れているボディに空中に舞っている埃などが付着する。
水分は車のボディのエンジンなどからの熱気で蒸発し、また、走ることによって水分が吹き飛ばされたりして、霧散するがボディに付着した微細な土埃の類いは、水分と共に去りぬとは行かず、車の表面にしがみついたままである。一緒にドライブに連れてって欲しいのだろうか。
が、昨日から今朝にかけて経験した車の表面の汚れはそんなものではなかった。
今朝、未明、某所で客待ちも兼ねて車を待機させつつぼんやりしていた。どんよりした空からポツポツ来たかなと思っていたら、やがて小雨に。
待機しているのだし、ワイパーを使う必要もないが、車の外の様子が分からなくなるのも困るのでワイパーを作動させた。小降りの雨の中、ワイバーを使い始めたのだが奇妙なことに気づいた。
ワイパーに拭い去られフロントウインドーの端っこに寄せられた雨水が濁っているのだ。
ワイパーを利かせ始めの時、汚れているのなら、それは昨日から十時間以上も都心をうろうろしていて車体にたっぷり埃がこびりついているのだろうし、汚れが雨水と一緒に流れたと考えれば、必ずしも不自然ではないのかもしれないが(実際は、雨が降り始めた時にワイパーを利かせても目で見て分かるほどにウインドーの隅っこに掃き寄せられ流れていく雨水は濁ってはいない。そもそも降ってきた直後の雨滴が目で確認できるほどに汚れていることなどないし、気づいたこともない)、ワイパーをずっと使い続けていても弾かれ流され行く雨水が濁ったままなのである。
小生、ワイパーに弾かれフロントガラスの隅を流れ行く汚れの目立つ雨水をしばし眺めて、やっと気づいた。
黄砂だ!
そういえば、過日、黄砂の飛来が激しいとテレビやラジオで言っていたっけ。でも、昨日も今日もまだ続いていたとは思っていなかった。
黄砂については、拙稿に「黄砂…地球環境の主役?!」がある(結構、幅広い視点で書いておいたつもりだ)。
が、やはり常識(礼儀?)として「気象庁 Japan Meteorological Agency」の「黄砂に関する基礎知識」なる頁を参照させてもらわないといけないだろう。
「砂は、主として乾燥地帯(ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠など)や黄土地帯で強風により吹き上げられた多量の砂塵が上空の風に運ばれて日本、韓国、中国などで降下する現象をいいます。濃度が濃い場合は、天空が黄褐色となることがあります。一般的には、春季(3月~5月)に多く観測されます。」という。画像が分かりやすくて文章の苦手な小生には助かる。
さらに詳しくは、「異常気象レポート2005」の「3.2.3 黄砂の気候への影響」が面白い:
「海洋表面に沈着した黄砂中の鉄分は、プランクトンの微量栄養源となり、海洋表面のバイオマスの分布に影響を与え、大気-海洋系の炭素循環や海洋上の雲の形成に関係していると考えられている」ことも重要なのだが、特に近年、注目されているのは、「大気中の黄砂粒子は、日射と赤外放射の吸収と散乱過程をつうじて、地球の大気を加熱ないし冷却する効果(放射強制力直接効果)がある」という点が注目されてきたようだ。
但し、調査・実験段階で、そのメカニズムの解明は今後を待つしかないようだが。
注目されている理由の一つは、地球温暖化の問題と深く関わっている(かも)しれないからでもある(場合によっては、「黄砂は地球環境問題の主役の一人に踊り出」るかもしれないのである。この点を上掲の拙稿で扱っている)。
五月の声を聞く頃になると、草木の活動が活発になる。眠っていた、休んでいた生命活動が一気に息を吹き返すようである。その証左であり現れの一つ樹液の大量発生と飛散だろうか。
樹液については、昨年、拙稿「風薫る…西鶴…近松」や「樹液のこと…琥珀」で扱っている。
五月前後、車を公園の脇などに小一時間でも止めておくと、そこに樹木が植えられていたら、さて、休憩もしたし、仕事を始めるかと車を動かそうとすると、フロントガラスなどウインドーに微細な雨滴らしきものが数知れず付着していることに気づくことがある。
雨? でも、晴れてるし?!
そうか、毎年、今頃の現象なのだ。樹木の葉っぱから蒸散し飛散してきた樹液が車にも飛び散り付着したというわけである。
そもそも春になると湿度が高くなる。すると湿気(つまりは水分)と大気中の粉塵や埃が混ざり合い、それが車(や洗濯物や道路や……)の表面を汚すことになる。湿度が低いと大気中の粉塵は、乾いたままだから車などに付着しようにも風に呆気なく吹き飛ばされてしまう(のだろう)。
こうした春先からの車のボディを汚す埃と湿気と排気ガス(つまりは油分)との混じったものは、放っておくと汚らしくなる。
東京都など関東の都県でディーゼルの排気ガス規制が厳しくなる前は、ディーゼルエンジンのトラック・バスの排気ガス(黒煙)に含まれる微粒子(粉塵)が車に付着して、車のボディやウインドーの汚れはひどいものだった。数時間に一度は車を止めて乾いた布で拭き取らないと、まるで窓ガラスが曇ったようにさえ見えて、運転手にもお客さんにも見苦しい状態となる。
ただ、布で拭えばすぐに汚れは落ちる。その意味で面倒ではあるが始末に負えないということはなかった。
が、飛散した樹液が車のボディに付着すると、それは粘り気の強いものなので、乾いた布で拭うだけでは汚れが取れない。むしろ、粒子状物質と入り混じった油っぽいような汚れが拭くことで伸び広がってしまったりする。
なので、布地に水分を含ませて油性っぽいような汚れをゴシゴシ落とす必要があった。樹液はそれほど生命力が横溢しているということか。
それが、ディーゼルの排気ガス規制以降は、そうした汚れが目立つことはなくなってきた。
樹液の飛散は毎年、つまり今年も同じだから、そんな微細な雨滴状の汚れは付着するが、ディーゼルエンジンからの排気ガスに含まれていた微細な浮遊塵が減った分、見た目の汚れ具合が以前ほどではないように見える(見えるだけだが)わけである。
だからこそ、黄砂が降ると、黄砂の汚れがクローズアップされてしまうわけでもある。黄砂は、当分、これからも続いていくと覚悟するしかない(黄砂の功罪は分からないから、覚悟じゃなく、あるいは期待かもしれないが)。
ところで、「指定装置(DPF・PM減少装置)をつけると、全く黒煙は出なくなるの?」かというと、さにあらず、である。
「①DPFは、100%ではありませんが、黒煙も含めてPMを60~70%以上低減します。②酸化触媒は、黒煙は低減できませんが、PMのうち、微小粒子が多いSOF分を低減します。あわせて、人体に有害な一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)を低減し、ディーゼル車特有の排気ガス臭も低減します。」というが、また、そのことに間違いはないのだろうが、実際にはPM減少装置で低減するのは、比較的粒の大きな微小粒子であって、「炭化水素と一酸化炭素の発生はガソリンエンジンより少ない」としても、窒素酸化物(NOx)やディーゼル燃料に残留する硫黄に由来する硫黄酸化物(SOx)などの極微細な粒子状物質は期待されるほどには低減されるわけではない。
実際に、肺(肺胞)に悪さするのは粒の大きな粒子ではなく(これらは肺胞を通らないから)、まだ規制の対象となっていない肺胞を通りえる微細な粒子状物質(ナノ粒子)なのであって、これらが取り除かれない限り、見た目にバスやトラックの排気ガスが従来に比べきれいになったように見えても、肝心の人体などに悪影響を与える物質の排気という問題が片付いたわけではないのだ。
(「サイエンスZERO-放送内容-第6回ディーゼル排ガスクリーン化最前線」参照:
「ディーゼルのクリーン化は最近研究が進むにつれさらに難しい課題が出てきた。大気中の粒子状物質をよく見ると、周りに直径50ナノメートル以下のナノ粒子と呼ばれる微小粒子が見える。このナノ粒子もディーゼル車が吐き出していることが分かってきたのである。まだ規制の対象になっていないナノ粒子、実験ではあらゆる走行状態での排出が観測された。粒子状物質に比べ小さいナノ粒子が、気管支や肺など細胞の中などより体の奥で健康に影響を及ぼすのではと懸念されている。このナノ粒子の減少に期待されているのがDPF」(太字は小生の手になる)。
「ナノ粒子については、ヨーロッパでは規制を2008年に法制化に盛り込むことも視野に入れており、日本も鋭意研究を進めているが、実態がよくまだわかっていないのが現状」とか。
またまた対策が、規制が遅れて被害が甚大深刻になることのないよう、関係当局には奮起を願いたいものだ。)
バスやトラックなどの排気ガスが黒っぽくなくなって嬉しい。けれど、解決されたのは実際には見かけ上であって、目には見えない肺胞を通りえる微細な粒子状物質(ナノ粒子)は未解決・未規制のままである。
むしろ、表面上、排気ガスがクリーンなように思える今こそ排気ガス問題への関心が薄れ、怖い状況にあるといえるかもしれない。
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