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2006/04/18

クジラ後日談・余談

 昨夜は、久々の月影に恵まれた。昨日の日中は晴れていて風もなく、仕事がなかったら、絶好の行楽日和という一日だった。曇天・雨天が続いていただけに、道行く人たちもどことなく足取りが軽そう。そのせいか、タクシーに乗ってくれる人も少なめ!
 風のない晴れの夜だと、月が出ていても、霞んでしまって朧月になってしまう。恐らく黄砂の影響もあるのだろうけど、いかにも春を思わせる風情だ。

 そんな月影も夜が明けるにつれて薄明に、たださえ朧だった輪郭が一層、暈され、ちょっと目を離すと姿を見失い、何処に月があったかも分からなくなってしまう。
 そんな朝、ラジオをに耳を傾けていたら、耳寄りな話が聞こえてきた。それは、シガマッコウクジラが実は新しい属だと判明したというもの。
 仕事中なので、「シガマッコウクジラ、長谷川、20年前に発見」などのキーワードだけメモしておいた。
「白鯨」を読んでいる最中であり、白鯨のモデルはマッコウクジラとされているだけに、聞き流せるニュースではない!
 もう、クジラと聞いただけで耳がダンボになる。

Kenchansakura

→ 健ちゃんさんに戴いた、春景色。関西の何処かの池のようである。水鳥さんたち、池の中から花見する人間たちを眺めてる? 池の水面にいるから、池面の水鳥なんだろうね。

淡き花眺める人も春の色

 そういえば、「私の耳は貝のから 海の響きをなつかしむ」にて、「「高速船が衝突事故、49人負傷~鹿児島、クジラの可能性」といったニュースが、つい先日、マスコミを通じて流れた」云々と冒頭に書いている。
 まだ、確定されたわけではないが、衝突したのは流木だったのではという判断に傾きつつあるようだ。
 少なくとも、血痕・肉片その他が見つかっていないことからして、クジラではなかったことは、断定していいようだ。
 よかったね、クジラさん、犯人にされなくて。それとも被害者かな。とにかく濡れ衣は着せられずに済んだわけだ……。といっても、海の中に暮らしているから、年中、濡れ衣を着てるんだろうけど。

市民タイムス」サイトの「きょうのニュース」によると、「シガマッコウクジラの化石 20年経て新属と判明」(17日分の記事より)とか。
 冒頭には、「昭和61年に旧四賀村反町(現松本市反町)で小学生が発見し、四賀化石館に展示されている県天然記念物のシガマッコウクジラの化石について、群馬県立自然史博物館が新属の「Brygmophyseter(かみつくマッコウ)」であると論文で発表した。横浜国立大学の名誉教授で同博物館長の長谷川善和さんが17日に四賀化石館で報告する。山の中から出てきた化石が、20年の時を経て再び脚光を浴びることになりそうだ。」とある。
 さすが、「市民タイムス」は長野県・松本(市)が地元のペーパーだけに、詳しい。
 さらに、「シガマッコウクジラは昭和61年10月、地元の山田智久さん(当時小学5年生)によって、保福寺川の約1400-1500万年前の地層から発見された。63年に旧四賀村が発掘を行い、現在は四賀化石館に常時展示されている。」と続き、以下、新属と特定された特徴などの記述がされている。
「平成六年に新種の「Scaldicetus shigensis」として発表され、昨年3月に県の天然記念物に指定された。昨夏に全身骨格を複製で復元した群馬県立自然史博物館が化石を再検討した結果、種属の特徴が明らかであることから、特徴の定かでない「Scaldicetus」属から分離して独立させた。これまで報告されているマッコウクジラ科のいずれの属とも特徴が一致しないため、新属と判断された。
 シガマッコウクジラには、現在のマッコウクジラにはない上あごの歯がある。現在のマッコウクジラが下あごの片側に20-26本の歯を持つのに対し、上あご下あごともに片側に少なくとも11本の歯しかなく、原始的な形態を持っているのが特徴という。」(太字は小生の手になる。)

 マッコウクジラを含めた歯クジラ類の系等については、近年になって分かって来たことがいろいろあるようだ。
歯クジラ類の系統解析」によると、「鯨目(Cetacea)は形態学的に大きく2つのグループに分類されて」おり、「1つは歯鯨亜目 (Odontoceti)、もう1つは髭鯨亜目(Mysticeti)」だとか。
「歯クジラ(歯鯨亜目)はその名の通り歯を持ち、小魚やイカなどを食料として」おり、「頭部にメロン器官と呼ばれるものを持ち、それ通して一定の周波数の音を断続的に 出すことができ」るという。
(メロン器官は、イルカも持っている。というより、イルカのことでメロン器官の存在を知った方も多いのでは。)

「一方、髭クジラは歯を持たず、上あごから伸びているヒゲを使って小動物や小魚を濾しと って食べてい」て、「歯クジラのようなエコロケーションはできず、メロン器官も持っていませんが、低周波の音で仲間とコミュニケーションをとることはでき」るのだとか。

「この2つのグループは形態学的に見ても大きく異なり、それぞれのグループは間違 いなく単系統であるとされてき」たのだが、93年には(DNA配列比較などから)「それまで歯クジラに分類されてきたマ ッコウクジラ上科のグループは歯クジラではなく髭クジラに近縁であるという驚くべき結果が示され」たことがあった。
 が、「2001年になってようやく、SINE法によって歯クジラの系統関係を明らかにする ことができ」、「歯クジラが単系統であるということ」、つまり、マッコウクジラはやはり歯クジラだったことが証明されたのだった。
 形態学的に…、つまり外見などの観察から得られるやや直感に近い判断結果が正しかったわけだ。やれやれ。
 こうした研究結果を導き出したのは、統計数理研究所の長谷川政美氏である。

 クジラの祖先がカバ・牛と同類だったことは、5年前(2001.09)、研究成果が発表され、結構、話題になった。
 が、一度は「クジラは昔ラクダだったという説」が新聞紙上などを賑わせたこともあった!
久則庵 漫画家岩本久則の世界 久則world」の「クジラ」なるサイトの「生態1」という頁を覗かせてもらうと、詳しく教えてくれる。
 ところで、「鯨のペニスは3メートル」という記述が見つかる。そういえば『白鯨』にも、その壮観さを描く場面もあったっけ。
 当該の箇所には、「鯨のペニスは3メートル、これをブラブラさせて泳ぐわけにはいかないので、普段は体の中にしまってあるのです。用があるときに現れて、それも自由自在に動くのですから羨ましい、いや素晴らしい」とあるけど、もう少し具体的に説明して欲しいものだ。
 クジラの交尾! 迫力がありそう。

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