ウィットネス( Witness)のこと
今朝は会社で明集(あけしゅう)があった。
「明集(あけしゅう)」とは社内だけに通用する言葉なのか、それとも営業所内だけに限定されるのか、あるいはタクシー(その他)業界内部の用語なのか分からないが、「明け番集会」の略語である。
「明け番」とは、前日の午前からの仕事が翌日の朝(早朝)になって終わった、つまり前日から仕事がスタートし20時間とうい拘束時間の終わった(当)番の面々を指している。
タクシー業務は拘束時間においても働き方においても多様になっていて(多様は大袈裟だが、数通りはある)、一概には言えないのだが、いずれにしろタクシードライバー全員が日中や夕方、夜などに一堂に会するのは難しく、実際には朝の8時半から集会が始まる。
その時間帯に働く人が少ないからということだが、それでも、営業所やタクシー業務に支障が生じないよう二日に分けて集会が行われる。
→ 「Charlie K's Photo & Text」の「Asaha's Belly Dance - WomenFest 2006 -」から。ベリーダンス!サンバやフラメンコ同様、瞬間を切り取った画像からその動きを想像するのは不可能に近い。それでも、食い入るように見入ってしまう。魅入られてしまう(例によって本文と画像とは関係ありません)。
主催者は会社(月ごとに定期的に行われるのは営業所)である。年に一回は会社主宰の集会(大講習会)が行われる(これも、二日間に分かれて行われる。わが社の場合、運転手は4千人ほど(多分)いるので、一回の大講習会には二千人ほどのドライバーが参集する。
で、今朝は毎月恒例の(といっても、最近は朝礼が密度濃く行われているので、二ヶ月に一度のこともある)営業所が主催する集会があったのである。
開始時間は朝の8時半。小生は7時前には業務報告(日報の提出)も含め仕事を終えるので、眠たい目を擦りつつ八時半までを潰す。これがなかなか辛い。小生は仕事が終わったら、さっさと家に帰って、自宅では牛乳を飲みお茶を飲みつつネットを軽くサーフィンして、とにかく寝る。在宅したら布団の中かロッキングチェアーに腰を埋めて終日を過ごす。
なのに、集会となると起きていないといけないし、仮眠を取って八時半を待つとしても、集会が終わるのは日によって違うが九時半過ぎだったりし、まっすぐ帰宅すると十時を回っている。
普段なら八時過ぎには寝入っているはずが、十時半頃になってようやく就寝となるのだから、体が参る。
何より、生活のパターンが崩れるのが辛い。
さて、集会では、この頃はウィットネス( Witness)で撮られた事故の映像を幾つか見せることがメインになっている。
「 ウィットネス( Witness)」とは、日本交通事故鑑識研究所が開発したドライブレコーダー装置のことである。
そのサイトの表紙には、以下のように説明されている:
ドライブレコーダーWitness(ウィットネス)は、日本交通事故鑑識研究所が最新技術により開発したCCDカメラGセンサー・フラッシュメモリー等を内蔵した自動車版フライトレコーダーです。
常時、運転者の視点から自車と周辺状況の記録を行います。
乱暴で危険な運転操作を行うとセンサーが働き警告音を発してドライバーに注意を促し、ある種の緊張感を与えます。
また、万が一の事故の時にはビデオ画像と自車の走行データが運転者の正当性を明確に証言してくれる味方となります。
← 「Charlie K's Photo & Text」の「Asaha's Belly Dance - WomenFest 2006 -」から。画像は拡大してほしい。さて、ベリーダンス関連のサイトの一つ「Dance Arabesque(ダンスアラベスク)」を発見。綺麗な作りだ。ベリーダンスと音楽の関係に興味がある。「ベリーダンスでは特に、ダンサーと打楽器の間に強力な対話が存在する。それはまるでダンサーがリズムを創り出すと同時に、打楽器のリズムがダンサーの動きを創り出す、といったように、心臓の拍動にも似た打楽器のビートとのコラボレーションの中で、ダンサーの心と身体は一体となって動き出すのである」とか。
都内各所の大き目の交差点にはこうしたWitness装置(レコーダー)が設置されていて、事故が発生すると、その映像を録画する。『事故が起こった瞬間の前12秒、後8秒の映像を保存する』ようである。
そうしたレコーダーが昨年よりわが社のタクシーにも搭載されているのだ。
「乱暴で危険な運転操作を行うとセンサーが働き警告音を発してドライバーに注意を促し」とあるが、タクシーには警告音を発するようにはなっていない。
その代わり、事故でなくても、路面が荒れていたら、その振動で車体が揺れ、それに伴ってWitness装置が作動し自動的に録画される。
聴くところに拠ると、メモリーの関係もあり、十回分(ほど)の録画が可能だとか。
ということは、十回分を超えたら新規に録画される代わり、古い分は削除(上書き)されていくわけである。
「常時、運転者の視点から自車と周辺状況の記録を行います」とあるがメモリーの関係で、上記したように常時は録画しても、メモリーに残るのは営業所に戻る直前の十回分のそれぞれ十秒間の映像記録ということであろう(小生の理解が正確かどうかわからない)。
会社側(営業所の社員)の話によると、この装置の導入で事故が減ったという。
というのは、事故が発生して、運転手が言い訳しても、事故の録画を見れば、運転手がどのような運転をしたか、あるいは道路や歩行者、天候など周囲の状況が一発で分かるから、嘘をついても即座にバレテしまうから(なのだろうか)。
また、逆に、タクシー側ではなく、相手側(歩行者、自転車、車、他)が信号無視その他、事故の第一原因があることもビデオで示されるので、裁判や示談などの際の証拠になりえるわけである。
要するに、きちんと運転さえしていれば、言うことはないのだ。真面目なものが後で不当な責任を追及されないためにも、ビデオ装置の存在はありがたいと言えるかもしれない。
→ 「Charlie K's Photo & Text」の「Asaha's Belly Dance - WomenFest 2006 -」から。画像は拡大してほしい。女性特有の流麗な動きとライン。「青木香葉:ベリーダンス Lapis」というサイトを発見。青木香葉さんは、日本のベリーダンス第一人者"海老原美代子"氏に指事したという。「ベリーダンスの歴史には諸説あるが、7世紀以前から、すでに地中海沿岸一帯、中近東・北アフリカ地域の人々の間に受け継がれてきた、肩や腰を震わせて踊るこの土地固有の女性の舞踊形式が、19世紀以降、西洋世界によって「ベリーダンス」と名付けられ、その後世界各地で発展していったダンスというのが定説である」とか。
さて、昨日もWitness装置(レコーダー)で録画された事故の映像を幾つか見せられた。
交差点での一時停止を怠って、自転車とぶつかった事故(これは他の車に過度に気を取られたせいもあるが、一時停止をきちんと行っていたら避けられた事故であることは間違いない)。小生にも経験がある。
都内某日本一の繁華街、早朝(未明)のこと。裏通り。一方通行の道路の交差点角にゴミ収集車が止まっている。止まれの標識がある。その収集車の脇を運転手(タクシー)は路肩に食み出しながら強引に先に出て行こうとする。が、止まれを見逃したのか先を急いでいて焦っていたのか、一時停止をせず一気に交差点を渡ろうとして左方向から来たトラックと衝突した事例。運転手は帰庫時間(会社の車庫に帰る制限時間)に間に合おうと焦っていたと弁明しているようだが、事故の言い訳には全くならない。
夜間、工事のための車線規制(片側交互通行)を行っており、工事関係者が赤色灯を手に道路上に立って、当方のタクシー(車)に止まるように指示を出しているのだが、工事現場の照明が眩しいこと、対向車のヘッドライトがまともに目に飛び込んできたこともあってか、道路の真ん中に立っている工事関係者を見逃し(幽霊現象かもしれない)、その関係者をまともに撥ねてしまった事故。減速していないので、居眠りの可能性もある。
さらには一方通行の道を表通りに出たところ、道路の真ん中に若い女性が横断歩道でもないのに渡っていて、それを何故か見逃し、まともに撥ねてしまった事故。あまりに道路のど真ん中(車から見たら真正面)を女性が歩いているもので、眼中に入りづらかったのかもしれない。
しかし、注意不足は否めない。
また、これも夜間だが、ある幹線道路(環七)でのこと。信号のある交差点が短い間隔で連続しており、手前の信号は青だが、先の信号は赤に変わったのに、運転手は道路脇のコンビニに気を取られていたとかで、先の信号機が赤になっていることに気づくのが遅れ、既に歩行者が渡り始めているのに、車が突っ込んでいって、驚いた歩行者が後戻りしかけたところをまともに跳ねてしまった事例。運転手の注意不足かもしれないが、これも、あるいは居眠りの可能性もある。
← 「Charlie K's Photo & Text」の「Asaha's Belly Dance - WomenFest 2006 -」から。画像は拡大してほしい。女性特有の流麗な動きとライン。日本のベリーダンス第一人者と呼ばれる"海老原美代子"氏のサイトでベリーダンスのテクニックについて、「ベリーダンスに独特な動きとしては、シュミと呼ばれる腰を振動させる動き、滑らかな骨盤のうねり、激しい肩の振りがある。これらを踊るためには、呼吸で身体をコントロールし、身体の各部分の動きを使い分ける高度なテクニックが要求され、訓練と熟練を要するものである。その確かな技術から表現されるダンスは、挑発的というよりはむしろ、踊り手と観客双方に官能的な感動を呼び起こすものであるといえる」とある。
これらはここ数ヶ月の間の事故事例のうち悪質のものである。悪質乃至重大事例だが、あるいは疲労・過労が原因なのかもしれない。不況で思うように売り上げが上がらず、誰しも無理を重ねがちである。
小生はというと、これまた極端かもしれないが、逆に休憩し過ぎなほどまともに休憩している。営業拘束時間20時間のうち、一時間の休憩を三度取ることに就業規則では決まっている(法的にも明記されている)。
小生は、この1h掛ける3を軽々クリヤーしているのだ。これはこれで問題かもしれないが、短期勝負ではなく、体を労わりつつ長く働きたいので、少々売り上げが減るのも覚悟の上でこのような方針を採っている。
体力があれば、何処かの駅やホテルや空港や会社での客待ちの形を採りながら休憩するという方法もあるのだが、これだと休んでいるようでいて神経が休まらず、帰ってきたら疲労困憊の状態となるので、最早体力のない小生には無理と判断し、休む時は公園など車や歩行者の通行の少ない場所を選んで、完全に休憩の体勢を取って休憩している。多くは仮眠だが。
歩行者をドーンとまともに撥ねる映像は、正視に耐えないものがある。一時停止が大事だと分かっている。先を急いで焦ってはいけないと分かっている。それでも、経験十年のドライバーでも事故を起こすことがある。
明日は我が身なのだ。一寸先は闇。
売り上げが悪くて、帰庫するたびに溜め息の出る毎日だが、その場合、慰めの言葉がある(慰めにもならないけれど)。
それは、ああ、今日も無事故・無違反で良かった! である。
どんなに売り上げが良くたって、一回でも事故を起こせば、全てがフイになる。事故でなくても違反で罰金となると、暗然たる気分になる。あるいは交通違反でなくてお客さんとのトラブルもありえる。決してお客さん相手にトラブルを起こさないよう我慢に我慢の日が続く。
タクシーの運転手に気のいい人、人格の出来た人が多いのも、日々が人間的修業の場で、その中で人間が鍛えられてきたからなのだろう。営収(営業収入、売り上げ)が多いだけでなく、人柄・人格において尊敬すべき先輩がたくさんいるのだ。タクシードライバーになって十年を超えた自分だけれど、到底、あの人たちのようにはなれないと実感・痛感させられるのだ。
ま、小生は、何事においても平凡を以て旨としている。どの社会(学校でも会社でも、何かの集まり)でも、目立たない存在である。売り上げにおいても人間性においても、人の上にもお手本にもなれないことは重々分かっている。
だからこそ、せめて、願わくは、事故や違反においても目立たない存在でありたいものだ。
日日是好日という言葉(モットー)があるが、小生の場合、無事是名馬(無事、これ名馬)である、というと、これまた格好良すぎるかな。
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