フィギュアスケートの魔力
梅田 香子及び今川 知子両氏著の『フィギュアスケートの魔力』(文春新書)を車中で読んだ。
凡そ、スポーツに関する本を読むのは、久々である。
まして小生がフィギュアスケート!
過去、小生が買ったスポーツの本は、ゴルフの本(や雑誌)、オートバイの本(ロードレースやツーリング関係。70年代後半から80年代前半、買って読んだ本の3分の1はオートバイ関係だったかもしれない?!)くらいのものか。
→ 16日、営業の途中、日比谷公園で休憩。画像では分からないが小ぬか雨がそぼ降っていた。
念のために断っておくが(ほとんど小生自身のために!)、フィギュアスケートとは漫画のフィギュアでもなければ、スケートするキャラクターのフィギュアでもない。
ある自薦の文(自著を語る)の中にあるように、「いま「世界で通用する」日本人選手が最も多いスポーツ、それがフィギュアスケート女子シングルです。村主章枝(すぐりふみえ)や荒川静香の活躍はもちろん、4回転ジャンプの安藤美姫をはじめとする若手の成長も著しく、2006年のトリノ五輪では表彰台独占も夢ではありません。本書は、フィギュアの歴史、選手をとりまく環境、伊藤みどりら往年の名選手の肖像など、さまざまな面からその魅力に迫ります。ジャンプの種類も分解写真で解説していますので、鑑賞ガイドとしても役立ちます」ということで、あくまでフィギュアスケートである。
そもそもフィギュアという名称は、「MSN-Mainichi INTERACTIVE フィギュアスケート」によると、「1700年代の欧州や北米では氷上の滑走術などが考案された。米国人バレエ教師、ジャクソン・ヘインズは1863年に非公式の全米選手権で優勝。その後欧州に渡り、音楽付きで振り付けして滑ることを着想した。1892年に国際スケート連盟(ISU)が発足。当時は氷上に描いた図形を滑る技術を競い、「図形」を意味する「フィギュア」が競技名称となった」ことから由来しているとか。
このサイトでは(本書でも説明されているが)、「唯一前向きに跳ぶ--アクセル」や「跳ぶ前に足が「ハ」の字--サルコウ」、「腰掛けるような姿勢--ループ」、「長めの助走から跳ぶ--ルッツ」などが図解で説明されているのが助かる。
でも、できれば本書のようにそれぞれについて複数の画像(写真)を付して説明してくれたらもっと助かる(動画が一番だろうけど、そもそも本書はフィギュアスケートという技と美とを競う芸術性の高いスポーツである。本書には白黒の写真しか掲載されていないのは、なんとしても惜しい、というより解せない。せめて冒頭くらいには選手らのカラー画像の数枚もあってしかるべきではないか。ウエブで観て、ということなのかもしれないが…。)。
小生がフィギュアスケートに関心を持ったのは、昨年末、郷里でフィギュアスケート女子シングルの試合をテレビ観戦したのが切っ掛けだった。無論、フィギュアスケートという美と技を競うスポーツ種目があることは知っていたし、伊藤みどり氏や八木沼純子氏らの名前も顔も、あるいはニュース報道などでその滑る雄姿も垣間見ていた。
(八木沼純子氏の華麗な姿を画像で!!)
が、本書でようやく認知した佐藤 有香氏のことは知らないか、これといって印象に残っていない。
フィギュアスケートはこの数年、改めて人気が高まっているように思える。が、生憎、小生の自宅のテレビは少なくとも5年以上以前より故障してしまって、今あるのは、9年前に買ったカーナビのモニターなのである。
アンテナ事情が部屋の中では不具合のようで、一般的な人気度の低い競技も扱うせっかくのNHKテレビは、土砂降り・砂嵐の画面で、小生がレオタード姿になって伊藤みどり氏や八木沼純子氏らに混じっていても、静止画像だと識別できないほどである(実験したことはないけど)。
が、田舎にはちゃんとした、それも大型のテレビがあり、画面上を、銀盤上を華麗に舞い踊り飛ぶ滑る安藤美姫(愛知・中京大中京高)、村主章枝(avex)、荒川静香(プリンスホテル)、浅田真央、恩田美栄、中野友加里、浅田舞らの姿にすっかり魅了されてしまった(尊敬の念を篭めて現役の選手たちの敬称は略させてもらう)。
もう、スッゲエーと口あんぐり状態だった。
観たのは、昨年12月24日に東京・国立代々木競技場でのトリノ冬季五輪の代表最終選考会を兼ねた全日本フィギュアスケート選手権最終日の模様だったようだ。田舎でのこと、チャンネル権は父母や親戚らの手にあり、小生も一緒に見入ったのだった。
そうでもないと他のチャンネルを選んでいたかもしれない。
実況中継だったということも、迫力を覚えさせる要因だったし、浅田真央が選考会の上位に立ってもトリノ五輪に出場は出来ない不合理を感じたり、選手のうちの誰かが身内の誰かに似ているってこともテレビに食い入らせるエネルギー源になっていた。
が、やはりあの美である。男性ならあの銀盤の女王たちの姿に魅了されないわけがない。
さて、一応、書評エッセイと銘打っているので、本書『フィギュアスケートの魔力』のことを紹介しておく。
小生は、上記したようにフィギュアスケートについての本を読むのは初めてである(雑誌も含めて)。
なので、他の本(や雑誌記事)との比較対象はできない。
いろいろなサイトで読者レビューを読むと、「最近の本にしては扱っている内容がちょっと古くさい気がする」といった類いの感想が多かったのは事実である。小生自身は、本書の刊行年が「2004/11」なので、割り引いて読むべきかと思っていたが、刊行当初からそういった読者の感想が寄せられているとしたら、ちょっと残念なことかもしれない。
まあ、類書が少なくて、何処かの切り口から深く鋭く描き、読者に感銘を与えるという意図よりも、「あらゆる角度からフィギュアスケートの世界を紹介する」必要があったのだろう。
ネット検索したら、「文藝春秋|本の話より|自著を語る」という頁が見つかった。
ここはやはり、書き手たちの弁を伺っておかないとバランスが悪い。
題名に「フィギュアスケートの愉しみ 今川 知子 × 梅田 香子」とある。
紹介するのが遅れたが、著者略歴を記しておくと、梅田 香子氏は、「一九六四年、東京生まれ。実践女子短期大学卒。八六年、『勝利投手』で文藝賞佳作。米国シカゴ在住。スポーツライターとして多方面で活躍。『スポーツ・エージェント』など著書多数」であり(「文藝春秋|本の話より|自著を語る」での記述に?の箇所あり!)、今川 知子氏は、「一九七二年、神戸生まれ。甲南女子大学卒。五歳でスケートを始め九五年の全日本選手権で四位。プロ転向後はアイスショーなどに出演。現在、コーチ兼スポーツライターとして活動中」とのこと。
梅田 香子氏について付言しておくと、今川氏の処女出版である本書や同氏のウエブサイト立ち上げに協力するうちに、公私混同し(あとがきでの本人の弁)、フィギュアスケートの魔力に取り付かれたのだとか。ミイラ取りがミイラに。
自閉症気味だった娘さんが近くの市営スケートリンクでスケートを習い始めて別人のように積極的な性格に変貌したとか。毎日、早朝5時半に市営スケートリンクに車で娘さんを送るのが日課になっているとか。
今川 知子氏については、「ごあいさつ」を読んで欲しい。
本書を読んで、フィギュアスケートの世界全般を知ることが出来たが、同時にお寒い日本のフィギュアスケートの世界、特に練習の場としてのスケート場の不足を知った。人気と相反して、不況もあってアイススケート場がドンドン閉鎖に追い込まれているという。
思えば、遠い遠ーい昔、友人に誘われてアイススケートにトライしたことが二度ほど(?)あった。怖かったけど、楽しかった。
この小生さえ、昔は、近くのスケートリンクで回りに迷惑を掛けつつも、気軽にアイススケートを楽しめた。
だから、微かながら朧ながら滑る感覚を体が覚えている。
さて、近年の環境は、誰もが楽しめる環境が整っていると言えるか。
残念ながら、ノーである。
「文藝春秋|本の話より|自著を語る」の中で、今川氏の弁(紹介)として、「明るい話ばかりではなく、リンク閉鎖の問題など、深刻なフィギュア界の状況についても言及しており、この本を読んだ実業家が将来スケート場に投資してくれたらなあと思います。特にスケート界を裏で支えてきた西武の堤さんの近況やダイエーの不振は他人事とは思えない事態です。この本を世に出してくれてありがとうと言いたいです」とあるのは、敢えて転記させてもらう。
テレビ(マスコミ)は人気に便乗することはあるが、サッカーに限らず人気が落ちるとそっぽを向いてしまう。いいとこ取り、美味しい果実だけを戴く傾向にある。トリノオリンピックもメダルが取れないことが、オリンピック終了後のマスコミの冷たい関心度合いが透けて見えそうだ。
日本は依然としてスポーツ大国ではないことを、マスコミの方ももっと喧伝すべきだと思う。有名選手であっても、練習の場を求めて車で何時間をも掛けて移動しているとか、場合によっては練習の場を得るため内外の地へ合宿せざるをえない実情をレポートするべきなのではないか。
かりにフィギュアスケート選手たちの頑張りがあっても、誰もが気軽に遊びやスポーツの場として身近に通えるスケートリンクがないと(あっても利用料が高かったり、順番待ちだったり、全くの初心者とオリンピック級の選手とが玉石混交で練習するしかなかったりすると)、一時的には高まったスポーツ熱も一気に冷めてしまうのは目に見えている。
当事者・関係者の努力も必要だし、オリンピックでメダル獲得を期待するなら、まずは土壌を豊かにすること、スポーツする人たちの裾野を広げること、日常的なスポーツ環境がどのようなものであるかを認識すること、その改善へ向けてやるべきこと、できることがあるのだろうということを厳しく認識すべきだろう。
一人二人の傑出した選手の孤独な活躍に期待するのもいいけれど、やはり裾野を広げ、多様多彩な人材を育成するほうが迂遠のようでいて近道なのではないか。
リュージュだって、普段はどうやって練習していることか。
それにしても、ゴルフやフィギュアに世界レベルの選手が出現しているのは何故だろう。
余談だが、本書でようやく認知した、日本人で唯一アメリカで成功したスケーターである佐藤 有香氏の凄さを思いつつ、同氏のテレビでの解説を聞いていると、思わず居住まいを正して謹聴したくなる。
伊藤みどりという方(選手)の凄さも、本書を読んで再認識させられた。
と言いつつ、今日もロッキングチェアーで居眠りじゃ、あかんねー!!
「Kiss & Cry」
( 本書『フィギュアスケートの魔力』の筆者(の一人)今川知子氏のサイト。立ち上げに梅田 香子氏が協力している。本書で(ウエブでも)知ったのだが、「‘キス&クライ’というのは滑り終わったスケーターがコーチと一緒に待機して、得点を待つエリアのことを指」すのだとか。そういえば、昨年末のテレビ観戦でも、、‘キス&クライ’のエリアでの選手やコーチたちの喜怒哀楽の表情を何度も何度も観たっけ)
「知子のスケート&育児の日々」
(今川 知子氏のブログ。荒川静香選手をしーちゃんと呼んでいる! 2004年9月からの半年間、放映されたNHK朝の連続ドラマ『てるてる家族』で、春子役の紺野まひるさんのスケーティングシーンで吹き替えを担当したことは有名。本書でも吹き替えをする際の苦労話があって興味深かった。
ドラマの原作は直木賞作家・作詞家のなかにし礼氏著の『てるてる坊主の照子さん』)
「日本スケート連盟」
「国際スケート連盟」
「女子フィギュア フォトギャラリー(2) - livedoor スポーツ」
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コメント
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2004年9月からの半年間、放映されたNHK朝の連続ドラマ『てるてる家族』で、今川知子氏が春子役の紺野まひるさんのスケーティングシーンで吹き替えを担当した、その際の裏話が本書に載っていることを書き忘れていた!
投稿: やいっち | 2006/02/25 19:44