冬の草…枯れ草それとも冬青々?
今頃の時期に相応しい季語と思っていいのか、「冬の草」という季語がある。
小生、昨夜、ショックなことがあり気持ちが落ち込んでいるので、真冬の寒さの中で懸命に生き堪えている草に感情移入などしようかという思惑もあって(?)、この季語を選んでみた。
しばしばお世話になっている、「YS2001のホームページ」の「季語(ふ)」を覗くと、「冬の草(ふゆのくさ) ⇒ 冬草(ふゆくさ)へ」となっている。
見ると、「冬草(ふゆくさ:冬でも青々としている草) [冬-植物] 別名⇒冬の草(ふゆのくさ)、冬植物(ふゆしょくぶつ)、冬青草(ふゆあおくさ) 関連⇒枯草(かれくさ)、枯野(かれの)」と説明されている。
→ 30日、温和な昼下がり。とある公園にて。冬枯れの桜。まだ葉っぱが落ちきれずに…。
なるほど、冬の寒さにあってただ耐えているだけじゃなく、「冬でも青々としている草」なのである。縮こまっているんじゃないってことだ。冬にあっても草らしい清冽な青さを保っているのでないと、季語としての「冬の草」は句に織り込めないわけだ。
「冬青草(ふゆあおくさ)」といった別名があるのも、むべなるかな、である。
関連する季語として「枯草(かれくさ)、枯野(かれの)」が上で挙げられているが、「冬の草枯る(名草枯る」も関連してそう。
← よく見ると、蕾だろうか、芽吹き始めている。
ただ、「俳句練習帳 【俳句と季語の仏訳練習】」なる頁を覗いたら、「2003/11/20 ③【冬草】」の項に、「冬草(ふゆぐさ)枯れたもの、枯れかかっているもの、青々としているものなど冬の草を総称する。」と説明されている。
となると、また頭が混乱してくる。
その項には、「呟いて生きるとは何 冬青草 楠本 憲吉」といった句が掲げられている。
この句だと、青々とした草というより、枯れかかっている、だけどそれでも傍目には仄かにであっても、命が息衝いている意味合いが感じられる。
一方、ネット(宮原昭夫公式サイト)では、「冬の草剣のごとく光ふり」という句が見つかった。脇には白秋と名前が付されているが、北原白秋かと思ったら別人で、白舟のようだ。
この句の場合、草が青々と空に向かって屹立しているのだろう。
「よっちのホームページ」の「三省堂 「新歳時記」 虚子編から季語の資料として引用しています。」なる頁、その「1月 冬の草(ふゆのくさ)」という項を参照する。
そこには、「元来冬草といへば枯れ果てた草、枯れ残つた草、冬尚生育しつゝある草の総称であるべきだが、冬青々としてゐるといふ感じが極めて強い。又さう解すべきであらう。冬草。」と記されている。
なるほど、小生が「冬の草」で勝手に思い入れしたように、元来は、「冬草といへば枯れ果てた草、枯れ残つた草、冬尚生育しつゝある草の総称であるべきだ」ったのだろうが、俳句の世界では、短歌などでは相手にもされないような世界に目配りするし、しかも、そんな路傍の小さな世界にも豊穣なる命の芽吹く世界を見出し感じ俳句という純粋結晶のような、いわば物質的恍惚たる世界に定着させようとする。
その意味で、いつしか「冬青々としてゐるといふ感じが極めて強い」そんな冬の草のイメージも句に織り込まれるのも、小生なりに理解できるような気がする。
ちょっと僭越? 生意気?
→ Charlie K. さんの手になるリベルダージ新年会(G.R.E.S. LIBERDADE "FELIZ ANO NOVO 2006" )の一場面!(例によって本文と画像とは関係ありません。一連の新年会の画像を観て頂いているものです。)
このサイトには以下の句が掲げられている:
冬艸やはしごかけ置岡の家 乙二
冬草の踏まれながらに青きかな 俳小星
花つけて冬の垣根の小草かな 杉花
鎌倉や冬草青く松緑 虚子
さて、最後になるが、冬の草の画像を見てみたい。
ネット検索してみたら、素敵なサイトが見つかった。「俳句のある風景:冬景色」である。
ここには、「冬の草」を織り込んだ「木洩日のうすうすとして冬の草」という句などと共に、「後1月ほどで立春を迎えるとはいっても、まだまだ辺りは冬景色の様子が濃かった。」ということで(「 2006年01月10日」の記事)、いかにも今の時期を感じさせる画像が載せられている。
冬草の青味眩しき帰り道
冬草やここを先途と首伸ばす
踏まれても反り返るのか冬の草
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コメント
この度は「俳句のある風景」にお訪ねいただきありがとうございました。
幼い内容なので恥ずかしいです。
これからも時々遊びに来てくださいね。
投稿: 吾亦紅 | 2006/01/31 15:21
吾亦紅さん、こんにちは。
TBだけして失礼しました。この記事を書くためネット検索していて貴サイトを見つけたのです。
俳句に素敵な画像。多くのコメントが寄せられていて、人気のあるブログなのですね。
お互い刺激し合えていければと思います。
投稿: やいっち | 2006/01/31 19:39