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2006/01/15

元朝と大和ドジ二題

 新年早々でもないが、小生の浅はかさが如実に出たドジをしてしまった。
 あるサイトで、「元朝や鼠顔出すものの愛」という句を英訳するのに、なかなかこの句の理解が及ばず苦労しているとあった。太祇の句である。
 小生、「元朝」という語がまるでピンと来ないのでネット検索。
 すると、あるサイトで「元朝祭」とか「元朝参り」という言葉を見つけた。
 なので、小生、早とちりして、「元朝」と句にはあるけれど、「元朝祭」か「元朝参り」の意味なのかもしれないとコメントしてしまった。
 が、さきほど、「元朝」で検索してみると、季語が「元朝」の俳句として以下の7件が検索されましたとある。
 その7件とは、「ひたすらに風が吹くなり大旦  中川宋淵」「ぼろ屑のように眠りて大旦  前田吐実男」「元日や暮れてしまひし家の中  池内たけし」「元旦や暗き空より風が吹く  青木月斗」「元旦や暗き空より風が吹く  青木月斗」「旧景が闇を脱ぎゆく大旦  中村草田男」「歳旦や虚構す文字の冴えやすし  松澤昭」である。
 あれ、「元朝」という語が織り込まれていないじゃない?!
 もしかして、「元朝」って「大旦 元旦 歳旦」などと類義語?!

 改めて、いつもお世話になっている、「季題【季語】紹介 【1月の季題(季語)一例】」を覗いてみると、その冒頭、一行目に「元朝」が掲げられてある。
 ああ、一体、小生は何を見てたんだろう。これまで今月に入ってだけでも(昨年だって)幾度、この表を眺めたことか!

 気を取り直して「秋桜歳時記」の中の「秋桜歳時記・季語・新年」を覗いてみると、「元朝(がんちょう)【元旦 歳旦】」として、「元朝の一献阿弥陀如来にも   尼子凡女」「元旦の真たゞ中にわれひとり   川村千英」の二つの句が例示されている。
 この頁には「大旦」が載っていないが、「大旦(おおあした)」と読み、「大旦蛇口ひねれば水溢れ  中林明美」なる句が「日刊:この一句 バックナンバー 2004年1月1日」にて見つかった。
 坪内稔典氏の鑑賞にあるように、「蛇口をひねれば水が溢れることは、とりあえずはとても幸せなこと」であり、また、新年の朝、蛇口をひねると溢れ出た水に、寒い朝かもしれないけれど、命の息吹や鮮烈感が眩しくて、他の多くの句に比して、元旦に相応しい句だと感じ入る、なんて「元朝」を季語と気づかない小生が感想を述べても誰も喜んではくれないだろう。

 ドジというのではないが、これも昨日のことだが、車中でこの辺りに美術館はあるかと訊かれた。走っていたのは、その時は港区の三田である。
 小生、今は控えているけれど、一時期は方々の美術館通いや画廊巡りをしたことがある。
 が、三田(港区)近辺となると、俄かには思い浮かばない。近くでは東京都庭園美術館、青山には根津美術館、目黒まで行けば目黒美術館などと思いつくままに口にしてみたが、思えば港区には美術館って少ない?
 お客さんが口にしたのは、目黒寄生虫館だが、これって美術館じゃないしね。気になるサイトではあるが(目黒区にある美術館などの情報は別の機会に)。
 思えばある年代以上の人には寄生虫は馴染みである。小学校などで検便をやったものだった。最近はピロリ菌が話題になっているけれど。

 さて、では、本当に港区には美術館の類が少ないのか、ネットで調べてみた。すると、「港区の美術館・博物館一覧 eHills Playguide/eHills」なるサイトがあって、あるわあるわである。
 小生自身の勉強のためにメモしておくと:

 アド・ミュージアム東京
 NHK放送博物館
 大倉集古館
 岡本太郎記念館
  菊池寛実記念 智美術館
 サントリー美術館 (2007年開館予定)
 泉屋博古館 分館(せんおくはくこかん ぶんかん)
 東京都庭園美術館
 虎屋文庫
 根津美術館
  畠山記念館
 松岡美術館
  松下電工 汐留ミュージアム
 森美術館

 まずいなー。これでもタクシードライバーなのか?! である。幾つかを除けば、美術館の名も所在も知らないわけじゃないのに、咄嗟に訊かれると、名前が浮かんでこない。
 以前は港区に居住していたし、結構、美術館通いもしたはずなのに、足を運んでいないサイトが多いこと(新しいサイトも増えているけれど)。

 さて、頭の中は、港区にはどんな美術館や博物館があるかなと、お客さんを下ろしてからも気になっていた。
 すると、偶然だろうか、それとも気掛かりだったからこそ、その広告が目に飛び込んできたのか、「大和ミュージアム」のバス広告が。
 都内の都営バスでは今や当たり前の光景になってきた、ラッピングバス広告である。
 当初は、都会の景観を壊すと毀誉褒貶いろいろあったようだが、賛否はともかくすっかり定着してしまっている。
 
 その「大和ミュージアム」という文字を見て、あれ、港区かどうかはともかく都内にこんな美術館(乃至は博物館)が出来たんだ、どんなサイトなんだろうと、車を走らせつつ思い巡らしていたら、どこかの街角で「大和ハウス」の広告を目にした。
 そっか! なーんだ、「大和ハウス」が作った、何か建物の博物館か、あるいは社の所蔵する美術品を展示するサイトなのかと、直感。

 が、その直感は完全に的外れだった。
 調べると「大和ミュージアム」であり、「大和」は「やまと」と読むのだった。
 それにしても、「大和ミュージアム」(呉市海事歴史科学館)は、広島県呉市(宝町)に所在すると言うのに、なぜわざわざ東京でバス広告を打つのか。
 やはり、昨年末から公開になっている映画「男たちの大和/YAMATO」に直接かどうかは別にして無縁ではないのか。映画とタイアップしての広告なのか。
 ちなみに、この映画の「原作は、新田次郎文学賞を受賞した辺見じゅんの「男たちの大和」」である。

 原作者の辺見じゅん氏については、小冊子の「富山県人」を愛読している小生、この映画の原作者だという話題に限らず作家・歌人だということで名前だけはかねてより知ってはいた(但し、全く未読。氏の略歴は以下でも紹介する「私と島根」を参照願いたい)。

 なんたって、数少ない富山県出身の作家(歌人)なのである。
 他には、久世光彦(富山市出身)、木村剛(経済評論家・作家)、直木賞受賞(1951年)の源氏鶏太(富山市出身)、芥川賞受賞(1951年)の堀田善衛(高岡市出身)、同じく芥川賞受賞(1967年) の柏原兵三(入善町出身)などの各氏。
 漫画家には、藤子・F・不二雄(高岡市出身) 、藤子不二雄A(氷見市出身) 、花咲アキラ(射水市-旧新湊市-出身)などなどの各氏。
 俳人に角川源義氏。美術評論家・美術作家の滝口修造氏(富山市出身)などなど。

 ネット検索したら、「私と島根」と題された辺見じゅん氏の短いエッセイが見つかった。
「シベリアの収容所で亡くなった隠岐出身の山本幡男(はたお)」氏のことが紹介されている。
 彼は、「山本さんは、収容所の中で万葉集の会や句会を開き、たくさんの収容された日本人に日本の文化の美しさを訴え続ける。そして遺書の中にも、日本人としてどう生きるかを伝えているのであ」り、なんと、「山本さんの遺書は、同じ収容所の仲間たちが分担し「記憶」という比類ない方法によって昭和32年以降、遺族の元へと次々に届けられた。最後の一人が届けたのは、昭和62年の夏であった」という。

 さて、表題の「元朝」に戻ると、小生は元朝をどのように迎えたかというと、「小生は、何もしない。夜明かしというか年越しも、例によってロッキングチェアーに腰を埋めていて、読書している間に寝入ってしまって、幾度かは夜中や未明に目覚めたが、寝るのが楽しみとばかりに、今日の元旦が休日なのを幸いに、ひたすらのんびりだらりと過ごしてしまった」のだった。
 こんな小生では、今年もドジを重ねるばかりのようだ。

元朝を椅子で迎えて日の目見ず


(以下、追記)
 書き忘れたが、冒頭に示した、「元朝や鼠顔出すものの愛」なる句の意、すっきりしない。いずれにしても、「元朝」は「大旦 元旦 歳旦」の意のほうが合っているよう。
 敢えて以下のように鑑賞してみた:

 元日の朝、わび住まいに嫁が君(ネズミ)が顔を出した。ああ、お前はオレを慰めるために今日という日に顔を出してくれたのか…。思い入れに過ぎないかもしれないけれど、普段は毛嫌いしているネズミも、こうしてみると愛らしいし、鼠が顔出すってのも慈愛あることなのかもしれない。

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