明日は臘梅探し
1月の季語例を眺めてみると、「臘梅」という季語のあることに気づく。
この頃、車中でラジオをぼんやり聴いていると、時折だが、「臘梅」など、春の到来を感じさせる花の話題が流れてくるようになった気がするし、今日は「臘梅(ろうばい)」をテーマに選ぶ。
臘梅…。今、寒さの真っ只中。そうなったらあとは遅かれ早かれの春の訪れを待つしかないのだが、まあ、期待半分もあっての話題なのかもしれない。
それにしても、「臘梅」というのは奇妙な名前である。花の名前に「臘」が冠せられるとは。この「臘」とは何なのだろう。
→ Charlie K. さんの手になるリベルダージ新年会(G.R.E.S. LIBERDADE "FELIZ ANO NOVO 2006" )一場面!
(例によって本文と画像とは関係ありません。一連の新年会の画像を観て頂いているものです。)
「YS2001のホームページ」の「季語(ろ) 臘梅(ろうばい)」によると、「花が蝋細工に似て、梅と同じ頃に咲くことから名の付いた中国原産の落葉潅木) [冬-植物] 別名⇒蝋梅(ろうばい)、唐梅(からうめ)」とある。
臘梅の「臘」は「蝋細工」の「蝋」だというのだ。
「わたしの俳句歳時記」の「わたしの俳句歳時記<今週の季語・一句抄> 一月の季語 鈴木五鈴」という頁を覗くと、「臘梅は江戸時代の初めに渡来したとされる」と記されたあと、「枯れ一色となった庭に咲く香り高い花はそれだけでも珍重に値するが、臘細工のような黄色い半透明の花が葉に先んじて枝々に咲き盛るのである」とある。
ここには、「臘梅を透けし日射しの行方なし 後藤比奈夫」という句が載っていた。いかにも臘細工のような花だからこその観察であり句なのだと感じさせてくれる句である。
「冬に咲く花木ロウバイ(臘梅・蝋梅) 佐久市立図書館元館長 依田 豊」を覗くと、「臘梅・蝋梅」の画像を見ることが出来る。
同時に、「「臘梅・蝋梅」の由来」という項目があって、「『信州の花と実』(山崎林治)による」として、「「臘」は、年の暮れ。旧暦12月の異名「臘月」、つまり新暦1~2月に咲く花の意味です。 「蝋」は、文字通り花びらの光沢が、「蝋細工」のような梅の意味です。」と書いてある。
どうも、この「臘梅・蝋梅」、名前が災い(幸い?)してか、どこまでも「蝋細工」という形容というか修飾というか表現が付きまとうようである。
このサイトには、「臘梅に雀の来啼く日和かな 内藤鳴雪」や「臘梅や枝のまばらなる時雨ぞら 芥川竜之介」などの句が掲げられている。
「秋桜歳時記」の「秋桜歳時記・季語・冬 臘梅(ろうばい)【唐梅】」には、「臘梅の匂ふ襖を開けて入る 本多勝彦」「臘梅の蕾の数が花の数 倉田紘文」などが載せられている。
「閑話抄」にはしばしばお世話になっている。その「歳時記」の中の、「<臘梅(ろうばい)>」という頁がやはりエッセイとしての歳時記として傑出している。遺漏なき記述、だけど簡潔で分かりやすい。
(だったら、最初からこのサイトを教えろよ、という叱責の声が聞こえてきそう。小生は、ネット検索しながら淡々と書いているのだ、というのは言い訳にはならないか…。)
「細く乾いた枝に油紙で作ったような薄い 花弁だけがぽちぽちとついているだけなんです。普通の梅の円い柔らかな花弁と 違って先の尖ったぱりぱりした花弁は、植物らしい瑞々しさがまるで感じられませんでした。これが葉のひとつでもついていればまた違った印象があるので しょうがそれもなく、人工的な匂いさえするような花でした」と、「蝋細工のような…」といった紋切り型の表現は採らない。自らの観察眼が生きていると感じさせる。
さて、この頁にもあるが、「臘梅がその存在を誇るのは、並ぶものないようなその香りです。梅の芳香とも趣が違う、甘く強い香りですが、決して下卑た甘みではありません。その香りが届けられて初めて、花開いたことに気付かされます」というのである。
上掲の「臘梅の匂ふ襖を開けて入る」も、まさにその辺りを詠んでいるのだろう。
その直下の短いが味わい深い記述はリンク先へ飛んでいって読んでもらうとして、【臘梅という名】という項目がまた面白い。
通説を示した後、「12月の異称に臘月というものがあります。これは古代中国で臘祭という 狩猟祭が行われる月であったことからきた名称(または日。臘日は大晦日の意) だといわれています。臘月または臘日は猟が変化したものです。その臘月に咲く花 だから臘梅だという説もあ」るとしている。
そして、「歳時記などでは普通「臘」の方を使用していますから、臘月説の方が有力なのでしょうか」とも。
どうやら、「臘梅」の「臘」がやはりミソのようである。また、「臘月または臘日は猟が変化したものです」という更なる探索をせよと迫るような謎めいた記述も見出される。
上で示した引用にあるように、臘月は12月の異称だというが、その臘月に咲く花だから臘梅と呼称されるようになったというのは、筋が通っているようでもあり、今ひとつ隔靴掻痒の感が残るようでもある。
やはり、この花の外見である蝋細工のような感じ、「油紙で作ったような薄い 花弁」の風が「臘梅」という名称の定着を違和感なくさせてきたのかもしれない。
小生はネット検索して知ったのだが、臘梅というと秩父郡長瀞町にある宝登山なのだとか。ネット検索でも上位に浮上している:
「宝登山ロウバイ園」
「大阪府立食とみどりの総合技術センター 企画部 みどり支援課」の「ロウバイ(臘梅)」という頁も「中国は江西省周辺の産。日本博物史では江戸時代初期に渡来したとされているが、その頃にはかなり広い範囲で栽培されており、もっと古い時代に渡ってきたのではないかともいわれている」などなど、なかなか参考になった。
「臘梅や雪うち透かす枝のたけ 龍之介」「臘梅や薄雪庭を刷きのこす 秋桜子」といった句も載せてある。
「熊本大学薬学部」の「熊本大学薬学部-今月の薬用植物 2002年2月」は、さすがに薬学部らしく薬草の観点から蝋梅(臘梅)について説明してくれている。
明日は都内を車で流しつつ、臘梅探しと洒落ようか。
それともまだ早い?
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