二つのおめでとう! 朝青龍とハヤブサと
一つは大相撲にて、横綱朝青龍(25=高砂部屋)が大相撲九州場所千秋楽(福岡市博多区の福岡国際センター)も勝利で飾り、史上初の7連覇と年間6場所完全制覇を達成したこと(通算15回目の優勝)。
日本人力士には頑張ってもらいたいけれど、今の朝青龍を脅かす可能性がある力士というと、関脇琴欧州くらいのものか(大関決定間近?)。
朝青龍は強すぎて一匹狼のような存在で、この場所でも日本の観客は相手力士や、特に琴欧州らを声援する人が多い。彼の孤独感とか、プレッシャーも相当なものだったろう。
← 蓮華草さんに戴いた画像。「京都は美山町の北村 茅葺の村落」で、「2年ほど前から沢山の人がくるようになったとか…」。合掌村のようになるのだろうか。よほど、しっかり保存し維持する覚悟がないと大変だろうな…。画像、拡大したほうがいいかも。目を瞠る光景だ!
けれど、そんな重圧を跳ね返すのが朝青龍の凄さだ。千秋楽の勝利直後の涙は、しかし、若干、日本の相撲ファンやマスコミも少しは感激したようで、記録もさることながら、ちょっと感情移入して報道していた。
小生は、熱心な相撲ファンではない。応援する関取が出たら関心を持つというレベル。小生が好きになった力士というと、かの北の湖以来なのだ。彼も強すぎて、あるいはライバル不在気味で孤高をひしひしと感じさせた。
強いのは本人の頑張りであって、且つ、立ち向かう力士らの努力不足のはずなのに、勝ちすぎるとちょっと敬遠気味になってしまう。
今、NHKの大河ドラマで義経をやっているようだけど、それにちなんで判官贔屓という言葉を使ってみると、小生は判官贔屓のところがあって、そうした孤高を保つ存在が好きなのだ。長嶋茂雄選手より王貞治ってことだ。
ん? 判官贔屓って、「〔源義経が兄頼朝に滅ぼされたのに人々が同情したことから〕弱者や薄幸の者に同情し味方すること。また、その気持ち。はんがんびいき」(by goo 辞書)という意味なんだから、強い朝青龍や北の湖を好きだという際に使うのは変?
まあ、ここでは単に強い弱いだけじゃなく、世間的な同情・共感・応援を得られる度合いも加味していると理解願いたい。
相撲好きな日本人ファンは、日本人力士に頑張ってもらいたいこともあるのだろう、どうしても朝青龍に対しては冷淡とまでは言わないが、やや敵役的存在と看做してしまう傾向がある(少なくとも小生は、そんな現実があると思っている)。
そうした世論・風潮こそが朝青龍の敵なのだとしたら、その敵はあまりに巨大なのだ。掴みどころもないし。
仮に、かのハンサムで力士としてはスマートな琴欧州が、今は朝青龍に対するチャレンジャー的存在として持て囃されているけれど、彼が朝青龍を圧倒する存在としてトップに立ち、且つ日本人力士が依然として勝ち目がないままだったとしたら、今度は琴欧州がそんな憂き目を見るに違いない。
男泣きした朝青龍。涙を隠さなかった朝青龍。そんな彼に、やっとそれまではやや朝青龍に冷淡だったファンも幾分は感情移入をしてくる気味が生じるかもしれない。
泣いた彼に共感は小生だってする。でも、泣いて欲しくなかったというのも正直な気持ちとしてある。泣くなら土俵を降りて支度部屋で誰にも見られないところで泣いて欲しい。土俵上では、あるいはマスコミの目の届くところでは、あくまで憎たらしいほどに強い存在で、生意気で、勝っても、勝ち続けても当たり前なんだという平然たる顔を見せ続けて欲しかったと思うのだ。
その意味で、今度は年間を通して全勝することを目指す、なんて昨日の言動は、男泣きした朝青龍にせっかく感情移入しかけた日本人ファンを再び引かせるような性質のものだった。
小生としては、彼にドンドン、そんな憎たらしい言動をしてもらって、そうして孤高を保ちつつ、彼にしか成しえない前人未到の偉業を達成してもらいたいのである。
憎まれ嫌われろ。ああ、奴はこんなにも辛い修行や孤独に耐え続けたんだという感動は現役を引退してから、じっくり回顧の中で味わうことができたならと思うのだ。
二つ目のおめでとうは、「はやぶさ」が「イトカワ」への2回目の着陸の成功とサンプル採取にも成功したと見られること。
「「はやぶさ」とはJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙科学研究本部が打ち上げた小惑星探査衛星「Muses-C」の愛称」。
つまり、探査機のこと。ただし、この探査機から探査ロボット「ミネルバ」がイトカワ表面に投下されるわけで、探査機が直接、小惑星に着陸するわけではない。
「はやぶさ」という鳥の名前が採用されたのは、探査ロボット「ミネルバ」がイトカワ表面に投下されタッチダウン(着陸と試料採取)が行われる。
ちょうどその光景が、隼(はやぶさ)が上空から餌を探し、発見すると空の高みから一気に地上の目標をめがけ舞い降り、餌を鋭い鉤爪で掴むと再び上空へ舞い上がっていくさまを連想させるからだとか。
「イトカワ」は「はやぶさ」が着陸などに成功した小惑星の名前。「イトカワはジャガイモのような形で長さ約5百メートル。日本のロケット開発の父として知られる故・糸川英夫(いとかわ・ひでお)博士にちなんで名付けられた」もの。
太陽系は太陽を中心に惑星や小惑星など相次いで作られていった。である以上、構成する成分は幾分は違っても、たとえば月や地球の成分を調べれば、太陽系形成当時の物質構成などが分かるはず…なのだが、実際には隕石が衝突したり火山・風化などがあって、様相を変えてしまっている。
その点、「小惑星は太陽系形成当時の姿をとどめているとされ、得られた試料の分析で、惑星誕生の手掛かりが得られると期待されている」わけである。
「糸川博士によって作られた日本最初のロケットであるペンシル・ロケットの発射試験が行われたのが1955年のこと」なので、「それからちょうど50年後の2005年に、M-Vロケットによって打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」が、小惑星イトカワに到着」したのは、時期から言っても、これまでの日本の宇宙研究界にとっても、日本の天文ファンにとっても意義深いことだ。
「旧宇宙科学研究所(現宇宙航空研究開発機構)が03年5月にM5ロケットで打ち上げた小惑星探査機。地球と火星の周辺を楕円(だえん)軌道で回る小惑星イトカワの表面から岩石などを採取し持ち帰る計画。昨年5月に地球の重力を利用して加速、軌道の変更に成功、今夏にもイトカワに到着、2年後に帰還の予定。電気で推進するイオンエンジンを使う」といった話を昨夜、車中、ラジオで聞いたのだった。使ったイオンエンジンは50リットルとか。飛行距離は10億キロ。燃費換算はリッター当たり二千万キロと、苦笑しつつ話されていた。
燃費が優れているのは、省エネ技術にこだわる日本ならではのものなのだとか。
そのほか、詳細は、「はやぶさ関連記事:宇宙ニュース(2005年)」を見て欲しい。
上で、「はやぶさ」が「イトカワ」への2回目の着陸の成功とサンプル採取にも成功したと見られること」といった微妙な表現を選んでいることに気づかれた方もいるかもしれない。
「26日午前7時すぎ、第2回タッチダウン(着陸と試料採取)が行われました。はやぶさは所定のプログラム通り動作し、上昇に転じた探査機の姿勢も安定していました。サンプラーホーンが変形を検知した時間は午前7時7分。その後、着地成功とサンプル採取に必要なすべての指令の実施が確認できました」ということで、確認できたのは、あくまで「着地成功とサンプル採取に必要なすべての指令の実施が確認」されたからなのである。
現物が本当に採取されているかどうかは、探査機が地球に帰還しないと分からないはずだが、そこは組み込まれたソフトの情報から採取されたのは間違いないと判断されているらしい。
ま、また二年ほどの困難な帰還の飛行を待つしかない。
尚、「「星の王子さま」への旅 -小惑星が教えてくれること-」という「はやぶさ」や小惑星「イトカワ」の軌道計算などにも関わってきた、天体軌道計算の世界的な第一人者である、宇宙科学研究本部の吉川真助教授(宇宙情報・エネルギー工学研究系)のエッセイをネットで読むことが出来る。
「星の王子さまがなぜ小惑星から来たことになっているのか、以前から不思議でした。小惑星なんて、宇宙の中ではめだたないちっぽけな存在なのですから。どうして、サン=テグジュペリは、星の王子さまの故郷として、小惑星を選んだのでしょうか? 」といった疑問をもたれる方も、そうでない方も、一つの読み物として楽しめるかも。
といっても、「小惑星と人類の関わりには、大きく3つの側面があります。まずは、太陽系の起源を探る惑星科学の鍵としての側面、そして地球に衝突して大災害をもたらす究極の脅威としての側面、さらに未来に人類が宇宙で暮らすようになったときに利用する資源としての側面です。小惑星は、宇宙の中ではちっぽけな存在ですが、人類にとってはいろいろな意味で重要なまさに「山椒は小粒でもピリリと辛い」天体なのです」ということで、中身の濃いエッセイなのである。
「6,500万年前に、恐竜を含めて多くの生物種の絶滅が起こりました(図6)。地質年代が、大きくは中生代から新生代に、細かく言えば白亜紀から第三紀に移り変わったわけです。それまで栄えていた大型の生物である恐竜が姿を消して、主役がほ乳類とな」った、その原因として「小惑星のような小天体の衝突が絶滅の引きがねになったという説」が有力である。
ひところ話題になった、「1994年には、シューメイカー・レビー第9彗星が木星に衝突するという出来事」でも、「それぞれの彗星核の大きさは5km程度と推定されていますが、木星表面には地球の大きさにも匹敵するほどの巨大な衝突跡を残した」というから、この程度の大きさの小惑星であっても、地球にとってはダンプカーに蚊がぶつかった程度の衝撃だが、地球の表面の環境上に住む人類などの生物には死活問題であることは、言うまでもない。
「星の王子さま」の訳文は、内藤濯氏のものだというのは、最近、いろんな方による訳が出ている中にあって、初めて読んだのが内藤濯氏訳によるものだった小生には泣かせる。
読み物と言えば、「「はやぶさ」のいちばん長い日」(2005年11月27日 JAXA宇宙科学研究本部 対外協力室長 的川 泰宣)もなかなかのもの。
関係者ならではの手に汗握る緊迫した空気と成功した喜びが小生にも伝わってくる。
この文中、「88万人のターゲットマーカーを着地」という言葉が出てくる。
本来の「「はやぶさ」ミッション」以外にも大きな役目があったのだ。それは、「88万人の署名入りターゲットマーカ」を小惑星「イトカワ」の地表に下ろすこと。
その様子は、「 「はやぶさ」88万人の「星の王子さま」たちへ」で知ることが出来る。
日本人では、漫画家の松本零士さん、プロ野球界の長嶋茂雄さん、星野仙一さん、衣笠祥雄さん……。
外国の人では、ポール・ニューマン(俳優)、アン・ドルーヤン(作家・プロデューサー、カール・セーガン夫人) 、スティーヴン・スピルバーグ(映画監督) 、アーサー・C・クラーク(SF作家)……。
こういった方々の登録がなされている。いつの日か、小惑星「イトカワ」の地表に立つことがあったなら、2001年宇宙の旅で謎のプレートに遭遇したように、あるいは星の王子様のドラマのような感動を覚えるのだろう。
詳細は、「ふたたび88万人の方々へ」を覗いてみて欲しい。小生も、ちょっとは遊び心があれば、それこそ宇宙のタイムカプセルとでも称すべきこの営みに参加したものを、ちょっと残念である。
最後になるが、「隼」は冬11月の季語である。
「隼」は、「鷹(たか)」の仲間。「羽が強く爪鋭く飛ぶことが早く、諸鳥を捕へて食ふ。鷹狩等に使はれる」とか。
これら梟(フクロウ)、場合によってはカラスも含まれる猛禽類が冬の季語とされるのはなぜか。
「猛禽類について」という頁を覗く(ただし、カナダはバンクーバーの情報のようだが)。
「冬は気温が低く、北国では小型の動物、たとえば野ネズミやリス、モグラ達は穴居生活をしたり冬眠するために捕食しにくくなり、多くは北極圏や雪の深い土地から、狩をしやすい南に下って来ます。その時期が渡り鳥の季節にあたり、多くの渡り鳥は長距離を飛んで疲れており、注意も散漫になるために捕食鳥にとっては比較的容易に狩が出来る季節でもあるわけ」だとか。
この猛禽類で、「代表的な鳥は何と言ってもPeregrine Falcon(ハヤブサ)ですが、鳥の中で一番高速で飛び、瞬間時速は300キロに及ぶと推定されています」という。
さて、宇宙航空関係の方は、「隼」が冬11月の季語である…、そこまで読んで今頃の時期の成功を計算し狙ったのだろうか。
だとしたら、芭蕉さんも真っ青の風流人の集まりだ!
ん? びく! 「ハヤブサ」は冬11月の季語だから、季語随筆日記の記事に入れてもいいけど、じゃ、朝青龍はどうなのさ! なんて声が聞こえてきそう。
そこはそれ、たとえば、「龍の玉」という冬の季語があるということで、朝青龍の「龍」が入っていることだし、寛恕願いたい。
「龍の玉」とは、変な意味ではなく、「龍の髭というユリ科の植物が冬に結ぶ美しい瑠璃色の実」のこと。
久しぶりに、「ikkubak 日刊:この一句 バックナンバー 2004年11月25日」(坪内稔典)を覗かせてもらった。
今日はこれまで!
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コメント
こんばんは 兎の蓮華草です♪ワハハ
朝青龍、強いですねぇ。以前彼の相撲を観ていて、勝ったときに右手で拳を作って、ずぅーッと客席に向かってまわしたのです、どうだ!!と言うように。
そのときの顔があまりにも喜びに満ちた顔で可愛いなあなんて思いました。
座布団が飛んでいましたけど・・・
有名になると色々言われますが、そうなると、かえって頑張れと思います。相撲ファンではないけれど、一人で横綱を張る彼にエールを送りたくなります。
私も判官贔屓かな?
投稿: 蓮華草 | 2005/11/30 23:28
兎の蓮華草さん、こんにちは!
イメージが固まっちゃいそう!
朝青龍、一昔前の日本にはよく見かけた、やんちゃ坊主、キカン坊って感じがありますね。
千代大海、雅山などは、そんな雰囲気があったのに、壁にぶつかって久しい。寂しいね。
朝青龍、日本では敵役になり、日本人力士が今のところライバルになりそうもないので、琴欧州が正義の味方(?)という役回りになりつつある(そうだ、琴欧州、大関昇進決定、おめでとう!)。
小生、琴欧州も好きだけど、へそ曲がりなので朝青龍を応援する。
蓮華草さん、一緒に応援しましょうね。
投稿: やいっち | 2005/12/01 08:35