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2005/11/09

渋柿と甘柿と

 11月も9日となり、既に季語の上では冬11月の季語を扱うべきはずである。
 が、今日は「柿」を採り上げる。これは、「吊るし柿」と共に、秋10月の季語である。今度、今度と思っているうちに気が付いたら11月となってしまっていた。
 あまりにいつも「柿」のことが頭にあったものだから、もう、既に扱ってしまっているような錯覚めいたものがあったりした。
 ところで柿というと、「柿日和」という季語もある。「歳時記」には載っていないようだが、「新歳時記」には載っているとか。
 実は、この季語随筆でもまさに「柿日和」という題名(テーマ)で採り上げている。

 その際には、「アンパンを抱へ坂道柿日和     岡本洋子」なる句を「ikkubak  2003年11月14日」より引きつつも、季語らしいが一体、いつの季語なのか分からないとして、そのまま探究することもフォローすることもなく、放置してしまっていた。

ikkubak  2003年11月14日」の同じ頁には、他に、「柿日和浄明寺さまてくてくと    松本たかし」なる句も掲げられ、「柿日和は、熟れた柿に日のあるおだやかな日和だ」と説明が付されている。
 どうやら、「柿日和」は「小春日和」に類する言葉のようだ(ちなみに沖縄では「小夏日和」と称するらしい)。

 「柿」について雑学的なことは、俳句に手を染め始める以前、エッセイで採り上げたことがあるので、ここでは改めて屋上屋を架す必要もないだろう:
秋の日と柿の木と(付:余談)

 ここに改めて「柿」を採り上げるのは、季語としての「柿」を扱ったことがないからだけではない。
 実は7日、車中でラジオを聞いていたら、「柿」の話題が流れてきた。その中で、「柿」はポルトガルから入ってきたのであり、名前の「カキ」も、ポルトガル語に由来する、という話があった。
 しかし、4年前に書いたエッセイ「秋の日と柿の木と(付:余談)」で、小生は以下のように書いている:

……渋柿であるが、それこそ古代より日本にはあったという。正倉院の文書にも柿が書き記してあるという。手元の広辞苑の説明だと、「東アジア温帯固有の果樹で、長江流域に野生、日本に輸入されて古くから栽培」とある。柿としかないが、恐らくは渋柿だったのだろう。

 あれ、話が食い違うではないか! 一方は柿は「古代より日本にはあったという」し、一方は柿の名前である「カキ」がポルトガル語であり、戦国末期にポルトガルから伝来したものだというのだ。

 気になって仕方がない。で、今、早速ネット検索してみると、次のサイトが浮上してきた:
日本語源のポルトガル語一覧
 その中に、「caqui」という項目があり、読みは「カキ」、語源は「柿」、意味は「柿/柿の木」とある。

 なーんだ、小生の聞き間違いで、ポルトガルから日本に伝わったのではなく、日本からポルトガルへ伝わり、ポルトガルでは日本語の言葉がそのままに語源となっているという話なのだった。
 ああ、確かめておいてよかった。小生のことだ、何かの話の折に、「あのさ、知ってる? 柿ってさ、ポルトガルから伝来したんだぜ。「カキ」って言葉もポルトガル語由来なんだ。」なんて、知ったかぶりで喋りそう。
 小生などは、頭の中で、ふと、「カーキ色」なる言葉が浮かんできていた。もしや、この「カーキ色」という言葉は、「カキ」から由来しているんじゃないか。柿が朱色に染まる前の、地味な、いかにも未熟な果実という風情を漂わせている色合いが、「カーキ色」と呼ばれることに繋がったのではないか、などと、これまた根も葉もない空想的な言葉遊びに耽ってしまう。

 余談だが、小生には、「柿 の 花」という掌編があって、この中でも、「柿」と「カーキ色」の絡みが話題に上っている。
 ちなみに、「柿の花」は、夏6月の季語のようである。
 では、小生の昔、大好きだったお菓子の名前でもある「柿の種」はというと、季語には見当たらないようだ。

 次は「干し柿」のことをあれこれ見ておきたいが、既に本稿は長くなりすぎている。
 なので、若干、甘柿と干し柿の区別などについてだけ。
 甘柿から干し柿を作ることがあるか。これは愚問に近いらしい。甘柿なら、そのまま食べられるので、何も好き好んで手間暇掛けて干し柿に仕立てる必要などない。
 だから、干し柿は渋柿から作る。
 ただ、干し柿を作るというのは、冬用の保存食(子供らにはお八つ!)の意味合いがあり、古来より、何も渋柿から干し柿を作ると決まっていたわけではないようだ。
 というより、「柿には大きく分けて渋柿と甘柿があり、現在、甘柿としておなじみの富有柿が栽培されるようになったのは江戸時代以降で、柿の歴史から言うと比較的新しいということになります」ということのようだ。
 いずれにしても干し柿は、昔は、貴重な甘味のあるお菓子だったに違いない。小生のガキの頃も、甘柿は好物で晩冬となると炬燵に入りながら、齧ったものだった。
 が、不思議なのは、「関東では甘柿であっても、他の地方で栽培すると渋が抜けきらず、渋柿となるものもあります」という点(「農産物の上手な利用法(干し柿・材料)」より)。謎だ。
 甘柿か渋柿かは、含まれるタンニンの如何に依り、タンニンが「可溶性」だと渋柿となる。「干し柿の場合は干すことによって可溶性のタンニンが不溶性に変化するので、渋みを感じることなく柿の甘みを味わうことができるわけです」とのこと。
 では、木に成っている柿を見ただけで甘柿か渋柿かを区別できるか。ガキの頃の記憶だと、小生に見る目がなかっただけなのかもしれないが、区別はできなかったように覚えているのだが、どうだろう。

 7日、JR東京駅での架線事故で山手線や京浜東北線などが数時間に渡って全面的にストップしたというニュースの合間に、日本各地に季節外れの黄砂が舞ったというニュースがラジオから流れてきた(車中なので、テレビでも黄砂のニュースが報道されたのかどうか、分からない)。
 実は今日は、黄砂の話題も採り上げたかったが、もう、疲れた。後日を期そう。
 まあ、「黄砂…地球環境の主役?!」の中で大凡のことは書いているし。
 ただ、なぜ、季節外れの今、黄砂が舞ったのかは、知りたかった。

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コメント

こんばんはー。
「柿」って結構ムツカシイ果物ですよねー!
子供に食べさしてもあまりイイ顔しないし…。
けど僕は「干し柿」大好きです。
ちなみに渋柿ってのは食べたことないです〜。
一度くらい食べてみて
目と口をマンガみたいに「バッテン」に
してみたいやらしてみたくないやら(笑)。

投稿: にわけん | 2005/11/10 04:52

にわけんさん、コメント、ありがとう。
柿は舌の奢っている今時の子供には人気はないでしょうね。甘柿というけれど、品のいい甘さ。昔はガキも食べていたけど、今は大人の健康食品ですね。

甘柿や干し柿は人間も好物だけど、カラスも狙っている。未熟な柿や渋柿はカラスも食べないみたい。なぜか柿が甘いかどうか分かっているようだ。
それほどに渋柿は渋い。小生もガキの頃、渋柿を齧ったことがあったけど、口中の渋みを取るのが大変でした。
何事も体験というけれど、しないほうがいい体験もあるかもね。

余談だけど、峯陽さんが作った「渋柿とカラス」という歌があるそうです。3歳児くらいの子供に人気だとか。どんな歌だろう。


投稿: やいっち | 2005/11/10 08:08

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