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2005/10/09

秋の雨…涙雨

 今日も東京は雨である。やや小降りになってきたが、まだシトシト降っているような。それとも、小糠雨と表すべき、微細な雨の粒が空中に漂っていて傘を差しても意味をなさないような雨になりかかっている、ような。
 雨についてはどれほど書き綴ってきたか知れない。それを秋の雨に限定しても、相当な分量になってしまう。
 季語随筆の場を得てからだけでも、昨年の秋に、「秋湿り(あきじめり)」という表題で書いている。そこでは、「雨冷え」をはじめ、「秋霖(しゅうりん)、秋微雨(あきこさめ)、秋さづい(あきさづい)、秋時雨(あきしぐれ)、秋驟雨(あきしゅうう)」といった秋の雨に関連した言葉(季語)を紹介している。
 ついでながら、「秋さづい」だけ、平仮名表記だったことに今、気が付いた。が、どうやら、「秋さづい」の「さづい」には漢字表記がないようだ(誰か知っている人がいたら、教えて欲しい)。
 さらに、「秋黴雨(あきついり)」といった言葉もあるようだ。
秋霖(しゅうりん)」も昨年、焦点を合わせて多少のことを書いている。これには、「「秋霖」追記と冬の雷のこと」という後追いの記事も書いている。
 どうやら、「夏から秋の変わり目の長雨を表現する言葉」としては、「秋霖(しゅうりん)」が最適のようである。

 さて、では、「秋の雨(あきのあめ)」というのは、どういう意味合いを持つのか。調べてみると、「小雨の日が続く秋季の雨の総称」であり、「別名⇒秋雨(あきさめ)、秋小雨(あきこさめ)、秋霖(しゅうりん)、秋黴雨・秋黴入(あきついり:秋にじどじとと梅雨のように降る雨)」ということのようだ(「YS2001のホームページ」より)。
 秋10月頃の季語であることは言うまでもない。
秋桜歳時記・季語・秋」を覗くと、「一人居の時の長さや秋の雨     鈴木 正子」「やまもゝは暗し秋雨なほ暗し    篠崎 杏二」などの句が載っている。
「秋の雨しずかに午前終わりけり   草城」という句は、どこにということなく、あちこちのサイトに掲げられている…と思ったら、同じ文章が違う(かのような)ネット検索の結果として登場しているだけのことだった。

 草城とは、以前にも簡単に名前だけ紹介したことがあるが、日野草城のことである。
 彼に付いては早晩、もう少し向き合うときが来る予感がある。今は、彼の句が幾つか載っているサイトを示すだけに留めておく。
秋雨や夜釣りの海に浮子灯り    金月銀星」なる句は、やや情景説明調だけど、光景が髣髴と浮かんでくるようで、敢えて転記しておく。
今頃の雨 秋の雨 レインコート 製造・販売 キンカメ 雨具 雨衣 雨合羽 レインウェア」なるサイトを覗く。
 順序が逆になったが、このサイトを最初に示しておけばよかったかも。秋の雨に関連する言葉を分かりやすく、見やすく説明してくれている。

 これも紹介したことがあると思うが、 「秋から冬にかけて断続的に降る驟雨」の意の「秋の村雨(あきのむらさめ) 」や、 「新潟県佐渡地方のことば」だという「秋の長雨。長雨が通草の実を腐らせてしまう事から言われる」といった意味合いだという「通草腐らし(あけびくさらし) 」なる言葉は情感があり、地方色というか風土感が漂ってくるようで興味深い。
 けれど、季語無の「涙雨(なみだあめ)」は、「涙ほどの少量降る雨。深い悲しみの涙が降るように感じられる雨。後者に「梅若の雨」「曽我の雨」等がある。葬式の時に降る雨を言う事もある」ということで、なんとなく今日の小生の気分を的確すぎるほどに表現しているようで、本日の季語随筆の表題を「涙雨(なみだあめ)」にすればよかったかな、などと思ったりした。
 ま、この言葉は年中、いつでも使えるので、というか使うような状況に見舞われるわけで、使おうという意識がなくとも、折々浮かび上がってくる言葉ではある。

「虹」というと、すぐに思い浮かぶ季節は何時だろう。秋や冬と答える人は少ないのでは。やはり、夏のイメージが濃厚である。
 俳句には直接の関係はないが、「虹の歌」という頁が「秋の雨 季語」という検索語での検索結果として浮上してきたので、そんなサイトがあることだけ、今はメモしておく。
「「虹」が夏の季語として定着するに至る素地は、この時期に形成されたと見做していいのではないかと思われるのです」という主旨の一文なので、機会を設けて採り上げて見たい。
 ここでは、「秋の雨のひとむらわたる夕暮の雲間にたゆる虹のかけ橋(伏見院)」なる歌があることだけ、銘記しておく。
 
 小生には、ちょうど昨年の今頃ひねった、「秋の雨ながめせしつつ小町待つ」や「うそ寒し帰宅の部屋に浮かぶ影」などの句があることも銘記する…のは不明極まりないか。

「秋の雨」という季語は言葉として、あまりに間口が広すぎるような気がする。だから、句をひねるといっても、なかなか焦点が合わせづらいのかもしれない。手のひらには一杯の果実が載っているし、何でもできそうでいて、ある興趣を捉えたと感じ、いざ、句を捻ろうと手をギュッと握ると、手の指の透き間からあまりに多くのものが洩れ零れていく。
 難しい季語となると制約や描ける情景は限られてくるが、その分、もともと手のひらに載っているものは僅かなので、握っても、とりあえずは何かしら握られている。
 さて、そうはいっても、せっかくの(?)秋の雨がシトシトと降ってくれている。二週間の仕事の疲れも昨日からの寝たきりの(但し、例によってロッキングチェアでの)生活で、少しは抜けてくれたような気がするし、気合をちょっと入れて、雅句駄句をひねってみよう!


秋の雨止むこと知らぬ涙かも
街灯の尾の長引ける秋の雨
草木の息吹き返す秋の雨
木の根の苔の芽にも秋の雨
道ばたの吸殻さえも雨に濡れ
水飛沫舞い上がっての秋の雨
何もかも眠りにつくよな秋の雨

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コメント

やいっちさん

ただ一句

秋の雨涙拭わずただ濡れし

失礼しました。

投稿: さくらえび | 2005/10/09 20:55

さくらえびさん、こんにちは。

> 秋の雨涙拭わずただ濡れし    (さ)

   拭わずも溢れるがごと秋の雨   (や)

投稿: やいっち | 2005/10/09 23:02

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