« トンボにあくがれて | トップページ | 野分…野分立つ »

2005/09/03

葉月…長月

【9月の季題(季語)一例】を眺めると、その季語例のトップに「九月」が現れる。これはともかくとして、次は、「葉月」である。
 いくら教養も何もない小生でも、「葉月」とは8月、9月なら「長月」という理解くらいはある。
 が、ここは陰暦と陽暦に関わることであり、「葉月(はづき)」は、「陰暦の8月で、陽暦では9月上旬から10月上旬」なのである。
 ということは、長月というと陰暦の9月であり、陽暦では10月上旬から11月上旬ということになる。
 尚、「葉月」については、「別名⇒月見月(つきみづき:中秋の名月の月見をする月)、萩月(はぎづき)」なのだとか(「YS2001のホームページ」の「」の頁より)。

 よって今は現代においては9月上旬なので葉月ということになるが、ついでなので今では新暦の9月を指すこともあることだし、長月のことに触れておきたい。
「9月 - Wikipedia」によると、「日本では、旧暦9月を長月(ながづき)と呼び、現在では新暦9月の別名としても用いる。長月の由来は、「夜長月(よながつき)」の略であるとする説が最も有力である。他に、「稲刈月(いねかりづき)」が「ねかづき」となり「ながつき」となったという説、「稲熟月(いねあがりづき)」が略されたものという説がある。また、「寝覚月(ねざめつき)」の別名もある」とか。

 このように長月には由来について諸説あるわけである。定説がないようなので、せっかくだから小生流に長月の語源を妄想的に想像してみたりする。
 例えば、「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」という有名な和歌がある。百人一首にも採られている小野小町の作だ(「百人一首 小野小町」参照)。
 この語釈には、「◇ながめ じっと物思いに耽る。「長雨」と掛詞になる」とある。
「秋の長雨」というと、秋の季語なのだが、秋ともなると、秋の夜長であり長雨であり、日脚が延びてくる。よって、小生などは、夜長を、長雨を、日脚の長さを眺める月ということで、長め(眺め)月が転訛して長月になったのではないかと推測するわけである(言うまでもなく、根拠はない)。
「9月 - Wikipedia」には、「英語での月名、Septemberは、「7番目の月」の意味」など、興味深い記述が続くが今回は深入りしない。

 さらに、「長月(ながつき) - 語源由来辞典」によると、「「稲刈月(いなかりづき)」に関連し、「稲を刈り収める時期のため、長月の「長」は稲が毎年実ることを祝う意味からといった説」が示されている。
 興味深いのは、「「名残月(なこりのつき)」が転じたとする説などがある」という点。小生は、「眺め」に拘ってしまったが、「名残」の月の転訛であってもいいわけだ。

 では、「葉月」の語源はどうだろう。
葉月(はづき) - 語源由来辞典」を参照させてもらう。
「葉月の語源は、新暦では九月上旬から十月上旬の秋にあたるため、葉の落ちる月「葉落ち月」が転じて「葉月」になったとする説。稲の穂が張る月「穂張り月」「張り月」から、「葉月」になったとする説。北方から初めて雁が来る月なので、「初来月(はつきつき)」「初月」から「葉月」になったとする説などがある」と記されているが、やはり、「正確な語源は未詳」なのだとか。
角屋悦堂ホーム」の「伝統・習慣」の中の、「八月/葉月について 旧暦八月の異称」なる項を読むと、上掲の諸説のほかに、「(4)「南風月」(はえつき)の転化。南方より吹く颶風(ぐふう)の多い月の謂い(「日本書紀」)」が示されていた(「はえづき」と読ませるサイトも多い)。
 この「南風月」説に敢えて肩入れすると、台風の古い呼称に「南風(はえ)」があるというのは、ちょっとした根拠にはなるかもしれない。ハイヤ節のハイヤも「南風(はえ)」から来ているわけである。「主に西日本でいう」とか。
 つい、連想してしまう、「マグロはえなわ漁」という時の「はえ」とは違うようだ。表記も、マグロ延縄(はえなわ)漁のようだし。

 この(「伝統・習慣」)サイトでは、諸説の典拠が、それぞれ「葉落ち月」=「和訓」「奥義抄」、)「穂癸月」(ほはりづき)「穂張り月=「語意考」「東灘」、「初来月」=「類聚名物考」などと明示されていて、さらに深く追求したい方には親切だ。
 小生などは、語呂からして、8月が転訛して葉月になったと主張したいところだが、やはり少々無理があるようだ。でも、「葉の落ちる月「葉落ち月」が転じて「葉月」になったとする説」だって、時期的に「九月上旬から十月上旬の秋」であるとしたら、植物の種類如何だとしても、落葉の印象は薄いはずだ。

 ネット検索しても、「葉月」の織り込まれた句はあまり見つからない。「姉だけに通じる言葉葉月の夜   池田優」(「ikkubak」より)などは、秘密めいて気を惹く。坪内稔典氏の評釈を読んでも、依然、神秘的なままだ。
 どうやら「葉月」を季語にしての句作に挑まれる方は少ないようだ。「葉月」なる言葉は俳句には鬼門なのか。


 葉月なる言の葉聞いて句も尽きぬ
 葉月とは8月だけど9月なの
 月影に木の葉さやかな葉月かも
 月影に木の葉浮かべて帆掛け舟
 秋めいて夜空眺めりゃハッ月だ

|

« トンボにあくがれて | トップページ | 野分…野分立つ »

季語随筆」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 葉月…長月:

« トンボにあくがれて | トップページ | 野分…野分立つ »