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2005/09/21

嶋岡 晨著『現代詩の魅力』抜粋(1)

 「詩人の数々…峠三吉や森鴎外」の中で参照させてもらった嶋岡 晨著『日本文学の百年 現代詩の魅力』(東京新聞出版局)を読みつづけている。
 嬉しいことに大概は断片の形だが、詩人の紹介のみならず、多くの詩が引用されていること。
 ここでは、主に自分自身の覚書の意味も篭めて、幾つか、転記させてもらう。
 あるいはネット検索すれば、詩の全容や、詩人についての詳細を知るサイトにめぐり合えるかと思われるが、とりあえず、名前と上掲書に引用されている詩(の断片)をメモしておいて、追々、ネットで、あるいは本(雑誌、冊子)などで詳細を見ていきたい。
 とりあえず、詩の全文が読めるサイトがあれば、リンクさせておいた。先々のサイトには感謝のみである。先人の有難味をつくづくと感じるのもネット検索の醍醐味だ。
 表記は原則、上掲書に依るが、あくまでできる限り、である。例えば、のっけの島崎藤村「小諸なる古城のほとり」中、「緑なすはこべは萌えず」というくだりがあるが、本書では「はこべ」は漢字表記されているが、ネットでは違う漢字表記しか見つからなかった。
 また、ルビは()内に示すしかない!

 冒頭には、森鴎外ほか訳「ミニヨンの歌」だが、これは既に転記している。

 島崎藤村「小諸なる古城のほとり(千曲川旅情の歌 一)

雲白く遊子(ゆうし)悲しむ
緑なすはこべは萌えず
若草も籍(し)くによしなし
しろがねの衾(ふすま)の岡辺(おかべ)
日に溶けて淡雪流る


 与謝野晶子「君死にたまふことなかれ

ああおとうとよ、君を泣く、
君死にたまふことなかれ、
末に生まれし君なれば   
親のなさけはまさりしも、
親は刃(やいば)をにぎらせて  
人を殺せとをしへしや、
人を殺して死ねよとて  
二十四までを そだてしや。


 薄田泣菫「ああ大和にしあらましかば

ああ、大和(やまと)にしあらましかば、
いま神無月(かみなづき)、
うは葉散り透く神無備(かみなび)の森の小路を、
あかつき露(づゆ)に髪ぬれて往きこそかよへ、
斑鳩(いかるが)へ。


 蒲原有明「茉莉花

咽(むせ)び嘆かふわが胸の曇り物憂き
紗(しゃ)の帳(とばり)しなめきかかげ、かがやかに
或日は映る君が面、媚の野にさく
阿芙蓉の萎え嬌(なま)めけるその匂ひ。

魂(たま)をも蕩(た)らす私語(さゝめき)に誘はれつつも、
われはまた君を擁(いだ)きて泣くなめり、
極秘の愁(うれひ)、夢のわな、――君が腕(かひな)に、
痛ましきわがただむきはとらはれぬ。


 北原白秋「接吻

臭(にほひ)のふかき女きて
身体(からだ)も熱(あつ)くすりよりぬ。
そのときそばの車百合(くるまゆり)
赤く逆上(のぼ)せて、きらきらと
蜻蛉(とんぼ)動かず風吹かず。
後退(あとし)ざりつつ恐るれば
汗ばみし手はまた強く
つと抱きあげて接吻(くちづ)けぬ。
くるしさ、つらさ、なつかしさ、
草は萎(しを)れて、きりぎりす
暑き夕日にはねかへる。


 三木露風「去りゆく五月の詩

あゝいま、園のうち
「追憶(おもひで)」は頭(かうべ)を垂れ、
かくてまたひそやかに涙すれども
かの「時」こそは
哀しきにほひのあとを過ぎて
甘きこゝろをゆすりゆすり
はやもわが楽しき住家(すみか)の
屋(おく)を出でゆく。


 川路柳虹「塵溜」既出

 石川啄木「事ありげな春の夕暮

遠い国には戦があり……
海には難破船の上の酒宴(さかもり)……
質屋の店には蒼ざめた女が立ち、
燈光(あかり)にそむいてはなをかむ。
其処(そこ)を出て来れば、路次(ろじ)の口に
情夫(まぶ)の背を打つ背低い女――
うす暗がりに財布を出す。

(自注:これは石川啄木の「食(くら)ふべき詩」なのだろうか。実を言うと、啄木のこの詩(の引用)を見て、転記を思い立った…とも言えそうな。)


 高村光太郎

牛はのろのろと歩く
牛は野でも山でも道でも川でも
自分の行きたいところへは 
まっすぐに行く
牛はただでは飛ばない、ただでは躍らない 
がちり、がちりと
牛は砂を掘り土を掘り石をはねとばし 
やっぱり牛はのろのろと歩く
牛は急ぐことをしない 
牛は力いっぱい地面を頼って行く 
自分を載せてゐる自然の力を信じきって行く 
ひと足、ひと足、牛は自分の力を味わって行く

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