酔芙蓉…一夜の夢
昨日、書いた「田舎で読んだ本」(August 18, 2005)で、高橋治著の『風の盆恋歌』(新潮社刊。新潮文庫)を採り上げた。
その際、この小説や歌の中で「酔芙蓉」が重要な役回りを果たしていると書いている。
せっかくなので、昨日は調べきれなかった「酔芙蓉」のことを若干でも、探っておきたい。
「季節の花 300」というサイトを参照させていただく。
まずは、「酔芙蓉」の様子を画像で見てみたい。
「芙蓉 (ふよう)」によると、「開花時期は、8/1頃~10/5頃」であり、「朝のうちは白く、夕方になるにつれてだんだん赤くなるという珍しい花。 ”酔っぱらった”と見なした。ピンクの芙蓉を夕方に見ただけだと、ふつうの芙蓉と見分けがつかないけれど、朝、白かった花が夕方ピンクになってればこの「酔芙蓉」かもしれませんね」という。
「「昔から美しい人のたとえに用いられている花で、 美しくしとやかな顔立ちのことを「芙蓉の顔」という」…、だとしたら、そのように言われてみたい女性も多いのではなかろうか。
「枯れ芙蓉」があって、「枯れたあとの姿も印象的」だとのこと。画像を見ることができるが、普通なら萎れ枯れた花に名前など付さないわけで、敢えてそうするほどに印象的なのは確か。
このサイトには、以下の句や歌が紹介されている:
反橋(そりばし)の小さく見ゆる芙蓉かな 夏目漱石
草とって芙蓉明らかになりにけり 河東碧梧桐
白き芙蓉 あかき芙蓉とかさなりて のゆく空に 秋の雨ふる 与謝野鉄幹
花の画像というと、しばしばお世話になっている、「植物園へようこそ!」 で「スイフヨウ(酔芙蓉)」を観させてもらうのもいい。
幸い、ここでは、小説「風の盆恋歌」の舞台・八尾に多少は近い「富山県中央植物園」にて撮った酔芙蓉の画像を観ることもできる。
「椎茸産直のグルメマッシュ おいしい生椎茸の世界が広がる」なるサイトでは、「家の庭で咲く酔芙蓉の開花から、落下迄を追ってみました」という画像集を観ることが出来る。
と思ったら、「風の盆(越中八尾)・写真」にて、「昨夏、越中八尾町で、手に入れた「酔芙蓉」が、一年後の今年、我が家で育ち、見事に、花が咲きました。」ということで、早朝、午後、夕方と、シラフからほろ酔い、最後はすっかり酔った風情の酔芙蓉の様子を見ることができた。
句については、上掲の他、ネットで探すと、久保田万太郎の句、「夢に見し人のおとろへ芙蓉咲く」が見つかった。
ネット検索していたら、興味深い記述のあるサイトに出逢った。
「61才田舎の爺」がそのサイトで、「沖縄の「酔芙蓉」は沖縄の季語で10月の句に詠みます。沖縄呼び「フユー」母種の芙蓉は同じですが・・・花が 咲き始めは白色昼は薄桃色 夕方から夜にかけて紅色南十字星をみている間にしぼみます。」とある。
本土では、「酔芙蓉」は秋の季語であり、「枯れ芙蓉」は冬の季語。ほかに、「芙蓉の実」という冬の季語もある。
ネット検索していたら、本来なら、「田舎で読んだ本」(August 18, 2005)の中で、高橋治著の『風の盆恋歌』(新潮社刊。新潮文庫)に関連して紹介すべきだったサイトを見つけてしまった。
「回想の山旅 山さんの HOMEPEGE」というサイト(但し、「平成17年8月末をもって」移転されるとか。)の中の、「富山県見聞録-八尾風の盆」という頁である。
この頁は、「「富山県の、轢死・風土に触れあえた喜びと、仲間と過ごした日々を、感謝しつつ、ここに記す」が趣旨の「富山県見聞録」なる項目の中の一頁のようだ。
ここには小説「風の盆恋歌」の冒頭や「おわら節」、坂の町「八尾」の紹介、さらには石川さゆりが歌ってヒットした曲「風の盆恋歌」の歌詞などが紹介されている。「富山」を紹介してきた小生にとっても勉強になった。
先に、女性を評する「芙蓉の顔」という言葉を紹介したが、ちょっと関連しそうな頁を見つけた。
「楊貴妃に 似てると いわれても~ 酔芙蓉」という頁で、「たった ひとつのつぼみ」が、次第に育ち、「つやっぽう」なり、「ほんのり 酔いましてん~」となったかと思うと、「ゆうぐれに なりました 酔いもだいぶ まわりましたえ」となって、終いには、「つぎの朝 飛び石の 上に しずかに」という一連の画像が載っていて、画像と付せられているコメントとのコラボがちょいと楽しい。
このサイトの最後には、「花のいろ/\ 木芙蓉」という幸田露伴の短文が載っている。露伴は、「秋の花にて菊を除きては美しさこれに及ぶべきもの無し」と断じているが、小生は彼ほどに花を知り尽くしているわけではないので、ただただ謹聴するだけである。
露伴というと、小生、過日より読み始めている、坪内 祐三著の『七人の旋毛曲がり』(マガジンハウス刊)のことに言及したくなる。本の題名を漏らさず書くと、「慶応三年生れ七人の旋毛曲り 漱石・外骨・熊楠・子規・紅葉・緑雨とその時代」という本。
「週間ブックレビュー 2002年01月05日の放送内容」の中の、本書の項によると、「文芸・学問の分野で日本を代表し、それ以上に後世まで伝説となる「強烈な個性」で知られた、「7人の侍」。彼らが「実は全くの同い年であった」という意外な事実から、同時代を駆け抜けた彼らの青春時代、時に重なり、時にすれ違う「奇縁」を紡ぎ出し、明治の文芸思想の変遷と、そこに絡み合う若者たちの息吹を伝える、ユニークな評伝。」となる。
露伴の子孫には、本書を書評する人である青木奈緒 (作家) を初め、幸田文や青木玉、何人かの高名な人が居る。
小生自身は、露伴というと、『五重塔』を読んだことがあるかどうかという程度。どこか、謹厳実直というイメージ(先入観)があって、とっつきにくいからかもしれない。その露伴が木芙蓉という花について、かのように断言するとは、美意識からなのか、故事の床しい内容のせいなのか、それとも何かしらの思い入れがあってのことなのか。
エピソード一杯で読んでいて楽しい『七人の旋毛曲がり』については、後日、紹介することがあるかもしれない。
酔芙蓉酔いに任せる婀娜な花
酔芙蓉しなだれかかる宵の道
酔芙蓉しなやかなれどしたたかに
酔芙蓉夜の宴を匂わせて
酔芙蓉滴る露も床しかり
酔芙蓉艶なる姿見惚れるも一夜限りの夢と果てなん
酔芙蓉枯れても炭になれもせず
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コメント
おもしろいですね。
美人のよっぱらい?「酔芙蓉」
ご紹介のHPの 京都らしくはんなりした
セリフつきの 画像、実際色が変わっていく様が 見られてとても ステキでした。
硬そうなつぼみ 枯れたときの姿と
柔らかで優雅な 咲いてるときの花の感じの
ギャップも 面白いですね
投稿: なずな | 2005/08/21 07:23
なずなさん、コメント、ありがとう。
「楊貴妃に 似てると いわれても~ 酔芙蓉」という頁、気に入ってもらえて嬉しい。
酔芙蓉…、情感を漂わす、醸し出す花ですね。
大和君、夏ばてなのかな。でも、毛皮を纏っているんだから、夏は動かないのが賢明。
かの白猫殿も、痩せちゃって。白い毛も少なめだし短め。これも知恵なのでしょう。
ムスメ(大)さんに大和君、デレデレ。男(オス)の本能じゃないでしょうか。
投稿: やいっち | 2005/08/21 12:05