長嶋茂雄さんのこと
脳梗塞で倒れた長嶋茂雄氏が、つい先日(7月3日、東京ドームで開催された巨人対広島戦の観戦をおこなった。その報道振りは、なんだか天覧試合であるかのよう。
その巨人戦視聴率は13・5%だったとのこと。
さて、その視聴率について、「余は如何にして道楽達人になりしか たいしたことなかったやん、長嶋の視聴率効果。で、長嶋の魅力を、メディアはちゃんと伝承してきたのか?」によると、二つの全く異なる評価がされていたとか。
一つは、「共同通信」で、「巨人戦視聴率13・5% 長嶋人気を裏付け」という見出しに示されるタイプ。
リンク先の記事に見られるように、「前週日曜日の6月26日に放送された阪神-巨人戦は8・0%(関東地区)だった。長嶋氏の人気をあらためて印象づけた。今季、巨人戦の視聴率は低迷を続け、6月の平均視聴率(同)は10・1%にとどまっていた」というもの。
今一つは、「毎日新聞」で、「<長嶋茂雄さん>東京ドームでの”復帰”視聴率13.5%」という見出し。内容は、「リハビリ中の長嶋茂雄さんが東京ドームに姿を見せた3日の日本テレビ「巨人×広島戦」の平均視聴率は、13.5%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)だった。巨人戦の今季最高(5月6日)17.3%には届かず、「長嶋効果」は見られなかった」というもの。
長嶋さんの人気は凄い。「長嶋茂雄はなぜ「長島茂雄」なのか」なるサイトを覗いてみるまでもない。
小生にしても、長嶋茂雄さんファンの一人ではある。現役時代の勇姿も見ている。王貞治さんほどではないが。小生の(日本の)プロ野球は、王貞治選手の引退で関心が半分以下(遥かに低く)になってしまった。
でも、長嶋さんが好きである。それだけに、特に読売系列のテレビで長嶋さんの話題を見るのは、うんざりだった。あれでは玩具だ。コバカにしている。華があると持ち上げておいて、散々、道化師扱いしている。見ていると、涙が出そうになってしまう。
もっと、人の尊厳や尊敬の念というものが大切なのではないのか。そんな憤懣の念が昂じてしまうので、見るのは耐えがたくなるのである。
それにしても、思うのは、あまりにプロ野球界は長嶋さん人気に乗りかかりすぎではないかということ。
そして思うのは、長嶋さんをあのような痛々しい姿にさせたのは誰なのかということ。元気な姿を見せてくれたとはいえ、観客やマスコミの面前に姿を出す(敢えて、晒すとは書かないけれど)に際しては、まずは、最初に非公式に且つ内密に観戦を行って様子を見、その上で大丈夫となったらああした注目を浴びるような観戦の場(公式の場)に姿を現してもらうべきなのではなかったか。
まあ、あの<元気>な姿を見て感動した、元気や勇気を貰ったという方も多いだろう。でも、何より大事なのは本人の容態のはずなのである。
思えば、昨年のアテネ五輪に監督としていくべきところ、直前(2004年3月5日)になって脳梗塞で倒れられてしまった。普通なら、そういう状態なら五輪の監督は安静を保つためにも降りていただき、中畑氏に監督になってもらうべきはずのところだ(脳梗塞となった直接の「原因は、サウナが大好きで長時間水も飲まずに入っていたことなどによる水分不足だったのではないかと言われている」ようだが、日頃の激務と緊張が脳梗塞を引き起こす素地として大きかったのではなかろうか)。
それでこそ、中畑氏も采配を振るう余地が大きくなっただろう。監督がいるといないとではまるで違うのではないのか。
野球が浪花節で勝てるほど甘い競技だと思っているのか。国内だけでのイベントなら、それでも多少は通用するかもしれないが、国際的な舞台での激烈な戦いの場に甘ったるい情実を持ち込もうとする旧弊な神経。そのことの自覚ができない感覚のズレ。
なのに、長嶋さん人気ということか、それとも温情なのか、あるいは、名誉監督という名義を与える浪花節で話題を喚起したかったのか、いずれにしろ、ベッドにいる安静にしているべきはずの人を、心穏やかにはさせなかったのだった。
そもそも、読売巨人軍の長期低落傾向は、久しい。あの手この手で盛上げようとしている。で、何をやってもダメなので、やっぱり長嶋さん人気にあやかるしか打つ手がない、ということなのか。
敢えて書いておくけれど、長嶋さんを脳梗塞で倒れるような状況に追いやったのは、一体、誰なのだろう。プロ野球界の無策ではないのか。読売グループの知恵のなさではないのか。長嶋さんを客寄せパンダにし、テレビで長嶋さんのエピソードを面白おかしく語ったり放映したりして、長嶋さんの努力や栄光や実績や人間のすべてをボロボロになるまで、搾り取ってきたマスコミの責任なのではないのか。
しかも、それでもあきたらず、アテネ五輪の名誉監督に就任させ、今度は、プロ野球、特に読売巨人軍のテレビなどの視聴率の体たらくが嘆かれる中、長嶋さんをフラッシュやテレビカメラの洪水の中に晒して、話題作りに利用してしまう。
長嶋さんは、あるいは本人の希望や意志もあって、自ら志願してああした場に登場したのかもしれないが、周囲は断固、制止するなり、徐々に慣らしていった上で、数千万人という大衆・視聴者・マスコミの面前に立ってもらうべきだったのではないかと思う。
あの場に立てるまでに快復するには、想像を絶するリハビリの日々があったに違いない。なのに、さらにまた、長嶋さんを酷使している。プロ野球人気(巨人軍人気)の挽回に利用しようとしている。骨の随まで長嶋さんの人気の甘みを吸い取ろうとしている(そのように、小生には見えてしまう)。
プロ野球のほうは、セ・パ交流戦がそれなりに盛り上がってはいた。しかし、それも、選手会側の経営者側から見たら<造反>に依る結果なのである。経営者側の努力でもなければ、まして読売巨人軍の経営者の知恵でもない。
殊更に長嶋さん人気にあやかろうと思っても、時代は変わってしまったのだ(「長嶋茂雄はなぜ「長島茂雄」なのか」の中にあるように、「明るく天真爛漫な性格。とにかく”華”があった」こと、あるいは「チャンスに強かった」こと、それ以上に、「選手時代が日本の高度成長期とちょうど一致していた」という要因が大きいのではないか)。
長嶋さんの現役時代の活躍を知る人の数は、減っているのだ。若い人にプロ野球をアピールするには、巨人軍(この「軍」というチーム名の胡散臭いこと)の今が大事なのではないか。現役時代を知らない人をあの人は凄いなどと言って引っ張り出しても、白けるだけなのではないか。
小生にプロ野球を盛上げる知恵などない。2012年のオリンピックでは野球とソフトボールは競技種目から外されてしまった。となると、地道に世界に野球を広げる努力がいる。
が、仮にサッカー人気にあやかるなら、まず、ドーム球場など廃止すべきだ。ドーム内での人工芝上での試合は、コンピューターゲームを連想させる。生身の体での試合、汗や土や埃が感じられないのである。
サッカーが人工芝での試合が難しいように、野球も人工芝やドーム球場などでの試合を止めた方がいいと思う。雨が降ったら野球は中止でいいではないか。それが<自然>というものではないか。土の、芝の上での野球をアピールすることで、野球が貧しい国でも可能になるのだ。昔、野球は、草野球という形で誰もが親しんでいた。時代は変わったし、空き地も原っぱもなくなった。が、それは日本のことであって、世界には空き地が一杯ある。木の棒と軟球の一個もあれば、ミット代わりの手袋でもあれば、草野球はできる。草野球であっても、野球する醍醐味や素朴な楽しさは存分に味わえる。
あとは、試合時間を長くても二時間に抑えるべきだ。大リーグの野球の人気の一因に密度の濃い試合内容があるのではなかろうか。
プロスポーツは多様化している。サッカー、プロレス、バスケット、テニス、ゴルフなどなど。テレビの視聴者も多様化している。みんなでテレビをという時代でもない。7時にテレビで野球が始まっても、9時には予定通り(放映のみならず)試合を終えるようにすべきなのである。
あとは、小さな声で叫んでおくが、プロ野球界の経営者(特にWT球団会長)の退陣が何よりも肝心なことだ。もう、時代は変わっている。若い人にもアピールできる経営者がいないはずはないだろうし。
それにしても、再度、繰り返すけれど、誰が長嶋さんをあのような姿にしたのか。確かに元気な姿を見せてくれたけれど、健康チェックだって普通の人よりはされているはずなのに、無理に無理を重ねさせたのは、今も重ねさせようとしているのは、一体、誰なのだろう。
もう、ゆっくり休んでもらってもいいじゃないか。十分、働いてきてくれたのじゃないか。長嶋さんと共に、古い経営者陣も引退し、ゆっくり静養してもらいたいのである。
今日は季語随筆から思いっきり遠ざかってしまったけれど、腹に据えかねるものがあったので、つい失言を。
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コメント
やいっちさん
長嶋さんの事熱く語られていますね。有名人て辛いですね。自分の体で有りながら、自分の体では無い。お気の毒です。
私も「雑感あれこれ」で長嶋さんの事を書こうとしていた所です。母も長嶋さんも不整脈によって、血液に出来た血栓が脳に飛んで脳梗塞になったもので、他人事ではないのです。
先日「宿六」の事について説明をして頂き有難うございました。勉強になりました。
うちの宿六さんの場合は、亭主を親しみ、又卑しめていう語、、、そのまんまです。(^ 0^ )
投稿: さくらえび | 2005/07/15 12:00
さくらえびさん、こんにちは。
長嶋さんが人のいいのを読売グループが寄って集って。ご本人も責任感が強いし、使命感を持っているような。
大切なのは未来に向けて知恵を絞ること。過去の成功体験や栄光に縋るばかりの今の経営陣には無理なのでしょうね。
投稿: やいっち | 2005/07/16 07:43