紫陽花のこと…七変化
紫陽花については、この季語随筆でも、「シーパラダイスで紫陽花」(May 29, 2005)や「季語随筆拾遺…紫陽花と雛罌粟」(2005.05.30)などで多少のことは書いている。
なのに、ここに蛇足となりかねない文章を書くのは、何も、空梅雨(ヒデリ梅雨)が、地域によっては降り過ぎるほどの雨に困惑し、東京についてはシトシト降る雨で紫陽花がその色彩を潤いのあるものにしている…から、というわけではない。
実は、あるいは人によっては常識なのかもしれないが、小生にとっては初耳の紫陽花についての知識を昨日、ラジオで聞きかじったので、ちょっとメモしておきたくなったからである。
といっても、「紫陽花」の別称として「七変化」という名称がある、それは雨の降り方などによって花の色合いが微妙に変化するからだ(あるいは、本当は「七変化」と言う場合は、違う花の別称なのだけれど、という留保のコメントも付せられていた)、云々という話が耳に残ったあとは、頭に全く続く話が残らなくなってしまった。
仕事中(運転中)ということもあり、「紫陽花 七変化」を頭の中に繰り返させているのに懸命だったりしたからである。
早速(といっても、今頃になってなのだが)、「七変化 紫陽花」をキーワードにネット検索。筆頭近くに、「特集~アジサイ~」と題されたサイトが登場した。
紫陽花が多くの花のように、同じ根元からの茎に付く花でありながら、微妙に色合いの違う花々を咲かせることは、いくら迂闊で観察眼の鈍い小生でも、気づかないわけではない。
しかし、だからといって、それを七変化と呼ぶのは、ちょっと大袈裟なのではないか…、七変化と呼称するなら、もっと大胆な変化、色彩の鮮やかな多彩さを示さないと、誇大広告的になるのではないか…、というのが、この聞きかじりの知識を得ての感想だった。
まあ、水墨画などのように、墨一色、単色の世界であっても、描く技術と工夫によって、観る者に空の青から草の緑、土の色、霧の漂う感じ、水面の波紋、鳥の体の小さいながらにふっくりした息衝き、森や林に生きる様々な動物たちの生態、そういったものがまさにそこにあるものとして描かれていると思わせてくれる…、ちょうどそのように、紫陽花の小さな花びらたちも、土壌や天候などに微妙にかつ敏感に影響を受けて、その淡い紫を変幻してやまない、そういったパステル調だったり、牧歌的だったり、墨絵的だったりする、そんな微妙な変化を感じ取っていれば、それでいいのかもしれない…。
さて、上掲のサイトに戻る。冒頭に、「梅雨から夏にかけて咲くアジサイは、七変化と言われるように咲いているうちにだんだん色が変化していきます。そのためか花言葉は「移り気」です」とある。
なるほど、或る日あるところで眺めた紫陽花の花々の色合いだけではなく、日々の変化、季節の変化にともなる変幻をも前提にしての七変化なのだと分かる。
決して、「青、白、ピンク、紫、赤に緑」といった紫陽花の色合いの多彩さだけを念頭に置いての七変化ではないのだ。
ついでながら、紫陽花の花言葉には、「移り気」のほかに「貴方は冷たい人」もあるとか。どうも、小生は紫陽花には似合わない花言葉のような気がする。移ろう心ではあっても、移り気とは違うような…。
さて、七変化と書けば紫陽花だと知っていることを前提に、直接、紫陽花という花の名称を使わず、「七変化」だけを使って句をひねることもあるらしい。紫陽花の色の微妙な多彩さと花言葉などを織り込んで句を解釈しないと、頓珍漢な理解に止まってしまうかもしれない。
この辺り、俳句に携わるのも、なかなかに厄介である。
句の実例はネットで見つかるが、たとえば、「志乃美の 紫陽花の句」など参照。
あるいは、「Welcome to Adobe GoLive 6 紫陽花や白よりいでし浅みどり 渡辺水巴」の鑑賞文が参考になる。
ネット検索を重ねていたら、紫陽花には七変化以外にも呼称があると分かった。
「奈良のはなだより 紫陽花」によると、「花色がさまざまに変化するので「七変化」とも、四片の小さな花が毬状に咲くことから「手毬花」とも言われます」とか。
ちょっとショックだったのは、このサイトによると、「花言葉は、「移り気、あなたは美しいが冷淡だ」」だということ。
なんだか、つれない人のことを想わせるようで、心に突き刺さる。
調べてみたら、紫陽花には更に別称がある。「七変化」、「手毬花」のほかに、「額の花」という呼び名もあるという(「山頭火つれづれ 紫陽花もをはりの色の曇つてゐる」より)。
このサイトには、「紫陽花や藪を小庭の別座敷 芭蕉」や「紫陽花やはなだにかはるきのふけふ 子規」のほかに、気になる句が載っている:
ひとつとせふるさといくつてまりばな くにを
「くにを」って誰? 「四方館」って何?
またまた疑問が湧いたところで、今日はお終い。夜勤明けにも関わらず、サンバパレード見物に行って来たので小生、かなり寝不足気味。
一休みして、また、ネットに復帰じゃ。
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コメント
やいっちさん
紫陽花って本当に色が変りますね。
以前に聞いた話ですが、燃やした灰を土に蒔くと花びらの色が青くなるとか?赤くなるとか?との事です。それにしても、我が家の庭の紫陽花は悲しいかなこの数年は花を咲かせません。(- -;)いつか又、咲いてくれる事を毎年待っていたら大きくなりすぎて、場所を変えようと思っても出来ないくらい根が広がってしまいました。よその紫陽花を見ては楽しんだり、羨んだりしています。(^ ^ゞ
パステル調、牧歌的、墨絵的、、、なるほどな~と感動しました。
投稿: さくらえび | 2005/07/04 00:24
さくらえびさん、いつも他人様の丹精篭めて育てた花を楽しませてもらうばかりの小生、庭やベランダで苦労して育てている方には申し訳ないばかり。何にしろ、手塩にかけて育てるって大変。
それにしても、表紙の花の名前、気になります。あれは、クイズじゃないですよね。
投稿: やいっち | 2005/07/04 09:38
T.B、畏れ入ります。
「くにを」はどうやら佐藤くにをさんという、現代に生きる俳人のようです。
私も詳しくは存じ上げません。
紫陽花関連の句をネットで探していたら出くわしたというのが真相です。
四方館とはなんぞや、とのお尋ねに関しては、よろしければ、URLをお訪ね下さい。
投稿: alpha_net | 2005/07/04 09:54
私「クイズ」をなぞなぞなどの「クイズ」かと思いました。「何という花でしょうか?」ってね。
(^ 0^ )
早速クイズを検索しました。一件のみ実が載っていました。そう言えば花の後の実があの様な、そうでない様な、、、。
花が終ってから実をつける頃、もう一度確かめてみますね。有難うございました。
投稿: さくらえび | 2005/07/04 17:48
alpha_netさん、いきなりのTB、失礼しました。いろいろ参考になりました。ありがとうございました。
「くにを」さん情報、ありがとう。不思議な句調ですね。
「四方館」の活動や趣旨、簡単には触れられないので、リンク先を皆さんに覗いてもらえたらと思ってます:
http://homepage2.nifty.com/shihohkan/
リンク、ありがとうございます。恐縮です。
投稿: やいっち | 2005/07/04 20:10
さくらえび さん、ちょっと紛らわしかったかな。
早く、名前が分かるといいですね。
投稿: やいっち | 2005/07/04 20:14