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2005/07/23

黒百合…悲劇の花

 さていつものように画面に向かい、今日は何を綴るかと考え出す。何も書く材料もなしに空白の画面に向かうというのは、楽しいような、プレッシャーでもあるような。
 でも、プレッシャーがプレジャーなのである。
 例によって【7月の季題(季語)一例】を眺めた。すると、今日は真っ先に冒頭近くにある百合に目が行った。
 脳裏では、勝手に、百合…黒百合…佐々成政と越中人たる小生ならではの連想が働いている。
 そう、富山県人ならば、百合というと、黒百合を思い浮かべる(人が多いのではなかろうか。今時の人は分からないが)。

 本題に入る前に、「百合」について少々。
 夏の季語である「百合」には仲間がたくさん、あるようで、季語として使われる言葉に限っておいても、「山百合」「姫百合」「鬼百合」「白百合」「鹿子百合」「車百合」「早百合」「黒百合」「鉄砲百合」「百合の花」と並ぶ(←「北信州の道草図鑑」より)。
 「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」 なんて言うけれど、そのように評される女性ってどんな人なのだろう。花のように、すぐに萎れてしまう人ってことなのだろうか。

雑学花言葉」の「雑学花言葉「く」で黒百合の花言葉を見てみると、「恋、呪い」だとか。
 説明には、「花の姿と暗紫の花色から黒百合と呼ばれるが、百合ではなくバイモ属。悪臭があるそう。 ミヤマクロユリの母種とされている」とある。
 下記するが、黒百合と越中との結びつき(因縁というべきか)は浅からぬものがあるのに、何故か、黒百合は石川県の県花。どうやら、「白山に多く群生」するからのようである。

 早速、「黒百合 佐々成政」でネット検索。
 筆頭に、「てのりカード-十年一覺-黒百合 - TenoriWiki」なるサイトが登場(URL表示は難しい)。
 どうやら、泉 鏡花の小説「黒百合」を話題の俎上に載せているサイトのようである。

「最近(4月14日)に公開された、鏡花の「黒百合」の舞台は、越中富山市内と立山山麓。佐々成政は、冬のザラ峠*1を越え徳川家康に援軍を乞いに行った事で有名な戦国武将。早百合は、その遠征中に密通の疑いをかけられ「もし、立山に黒百合の花が咲いたら、佐々家は滅亡するであろう」との予言を残し、無念のうちに死んでいった。言葉通り、後に成政は、豊臣秀吉により肥後一国を与えられたが、国人の反乱に会い、その責任で切腹させられた。その時、立山には黒百合が咲いていたと言う。そんなバックグラウンドで、黒百合の花は、否が応でもそのミステリアスな雰囲気を醸(かも)し出す」とある。

 この「佐々成政とクロユリ伝説」については、リンク先などに詳しい。
 この伝説の中では佐々成政は「早百合を枝に懸けて惨殺した」りとか(早百合の黒髪を引っ張り、神通川の川沿いまで走り出て、髪を逆手に取り宙に引き上げ、斬殺)、北政所を迎えるに黒百合という有り触れた花を「珍花」としたなどと、かなり悪人ないしは無神経・無教養・無慈悲な人物として描かれている。
 が、典拠は『絵本太閤記』だったりするので、やはり敗者は歴史においては悪人に描かれるの伝で、佐々成政とはライバルだった前田利家とは比較にならない扱いをされてくる結果となったのだろう。
 信長の忠臣だった佐々成政は信長の死後もの信長への忠節の心を忘れなかった。その意味で戦国の世にあって不器用な面もあったのかもしれない。「天正十年(1582)の本能寺の変後、成政にとって苦渋の日々が続くことになります。羽柴秀吉(のちの豊臣秀吉)と対立することになったからです。」秀吉(太閤)側から悪く描かれるのは当然だったわけである。

 とにかく、佐々成政という人物については逸話が多く、「佐々成政資料館」を覗くと、「佐々成政に関する逸話」として、以下が列挙されている:

 早百合伝説
 埋蔵金伝説
 一夜泊稲荷神社伝説
 織田信長に諫言
 成政と学問
 黒百合伝説

 越中人ならずとも小説やドラマの主人公に仕立て上げたくなる人物だったと思っていいようである。このうち、「黒百合伝説」の項を読むと、淀君だけではなく、寧々や花を生けた千利休の娘・綾なども絡んで、話の奥行きは闇が濃く深と感じさせられる。

 冒頭で示したサイト(てのりカード)には、「「黒百合は恋の花、愛する人に捧げれば、二人はいつかは結ばれる」という「君の名は」で使われた「黒百合の花」は、アイヌの伝説に拠る。」という一文がある。
 この伝説は印象的だったりして、「黒百合の歌」(作詞:菊田一夫、作曲:古関裕而、歌:織井茂子)でも歌詞の中に伝説が織り込まれている。
クロユリ」なるサイトを覗くと、「黒百合は 恋の花/愛する人に 捧げれば/二人はいつかは 結びつく」とか、「黒百合は 魔物だよ/花の香りが 沁み付いて/結んだ二人は 離れない」、「黒百合は 毒の花/アイヌの神の タブーだよ/やがてはあたしも 死ぬんだよ」といった歌詞を知ることができる。
 同じサイト(てのりカード)に「土地の口碑(こうひ)、伝うる処に因れば、総曲輪のかの榎(えのき)は、稗史(はいし)が語る、佐々成政(さっさなりまさ)がその愛妾(あいしょう)、早百合を枝に懸けて惨殺した、三百年の老樹(おいき)の由」という一文が泉 鏡花の小説「黒百合」から引かれている。
「総曲輪」という言葉(地名)を読める人は、間違いなく富山県人(か、富山に居住したことのある人)だろうと思われる。
 読み方を知りたい方は→「富山市中心商店街[まちぶら]」参照
 総曲輪通りと「中央通り」は富山市の中心街であり繁華街であり続けた(のだけれど、最近は…)。

 黒百合伝説は悲劇の伝説…。小生思うに、黒百合というけれど、実際は、せいぜい暗紫色で、決して黒くはない。なのに、「黒」百合と称してしまったことから悲劇が生まれてしまったのではなかろうか。「紫百合」とでも表記して、読みも「しゆり」などに変えたら、呪いに満ちた話ではなく、花の姿らしい艶麗な話も生まれたのではなかったろうか。
 その代わり、泉 鏡花の小説「黒百合」は生まれなかったかも…。これは残念ということになる。困った。
 それにしても、黒百合なる言葉の織り込まれた句がネットではあまり見つからない。あまり馴染みではないから仕方がないのか。富山県人にとっては(石川県の人にとっても?)残念だ。

 黒百合の思いに揺れる孤影かも


[本稿には、情けないことに「黒百合」の画像がない。「黒百合:カイエ」へどうぞ! (08/05/13追記)]

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コメント

こんばんは
黒百合繋がりで、TBさせていただきますので、
よろしくお願いいたします。
黒百合が花を咲かせたので、うれしくて記事にしましたが、
もし、書く前に、こちらの記事を拝見していたら、
もっと充実した内容になっていただろうと思いました。

投稿: lapis | 2008/05/13 01:36

lapisさん
旧稿へのコメント、ありがとう!
3年前の記事なんてこんなことがないと読み返すこともないし、嬉しいものです。

いつもながら文章の内容もさることながら、素晴らしい画像と相俟って読みやすく、比べられると参っちゃいます。

小生が言及するだけで通り過ぎてしまった泉 鏡花の小説「黒百合」のこともきちんと扱っておられますね。

共々に読んでもらえたら一層、嬉しいのだけど。

ああ、黒百合の花の画像が欲しい!

投稿: やいっち | 2008/05/13 09:38

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