釣りしのぶ
今日の表題を何にするかで、随分と迷った。6月の季語例を眺めていて、夏の蝶にするか、夏草がいいんじゃないか、・ゲジゲジ・や油虫は嫌だ、蝿だって大嫌い、蟻を考えない訳じゃないが、気が進まない、蛆はウジウジしていてやっぱり没。翡翠は、どうか。カワセミ。風情があるし、話題に採り上げている人も多そう。でも、検索の網に引っ掛かる情報が多すぎる気がして、またの機会に譲る。
蛇、蝮、百足虫などが季語ってのが理解できない。世の中には、これらが好きな方もいるのだろうか。風情を覚える人がいるってことなのか。
そのうちに、我が部屋のベランダに向かう窓には網戸があることに思いが至った。そうだ、網戸にしよう。網戸だけでは心許ないから、蚊帳(かや)と組み合わせたら、鬱陶しい暑さに参っている中、風通しも良くなるし…とネット検索をしていたら、ふと、風鈴もいいなと風鈴をネット検索、すると、これは6月ではなく7月の扱い。でも、風鈴を調べていて、偶然、嬉しいことに今日の表題に選んだ「釣りしのぶ」という言葉に行き当たった。
どうやら、「釣りしのぶ」の下に、場合によっては風鈴をぶら下げることもあるという。「吊りしのぶ」と表記する場合もあるようだ。
一体、「釣りしのぶ」って、何。世間知らず、常識知らずの小生、もしかしたら世の中の大方の人が知っていることやもしれない、この言葉(事物)は、当たり前に目にする光景だよ、そんなの知らないの、と笑われるかもしれない。
ま、いい。半ば、笑われるために季語随筆を書いているようなものだ。前日の「鏡と皮膚…思弁」が、やや観念論っぽくなったので、今日は、少しは風情のありそうな事物を選ぶことにする。季語には当たらないようだけど。
「釣りしのぶ:深野晃正」なるサイトを覗かせてもらう。
ああ、この頁を覗けば、もう、何も付け足すことはない。どうぞ、覗いてみてください、で終わりだ。楽で助かる…って、そういう問題じゃないね。
知っている方には釈迦に鉄砲のような…じゃない、説法のようなものだが、「つりしのぶは、このしのぶと山苔・竹などを用いて、井桁やいかだ、灯篭などの風流な形に仕立てた観葉植物」だという。
その前に、「しのぶ」とは、「学名:D.mariesiimooreシノブ(ダバリア,マリエイシモーリー)と呼ばれる「しのぶ」は、木漏れ日が当たり、湿り気のある樹上や古木・岩肌などに着生している植物で、日本各地に分布してい」るという。
この頁には店のご主人へのインタビューが載っていて、その冒頭に、もっと簡明な説明が示されている。つまり、「つりしのぶとは、竹などの芯材に山苔を巻きつけ、しのぶ草を束ねて形を作ったもので、夏の暑さをねぎらうために家の軒先に吊るして楽しむもの」と教えてくれている。
驚いたのは、「現在では、この仕事をしているのは都内で一軒になりました」という話。こういう職人気質の方がいなくなると、簡易な作りの物が売り出されるようになるのだろう。
ネットで調べたら、「江戸東京博物館 ミュージアムショップ 名店めぐり」の中にも、「江戸川区の深野晃正さんの仕事場「江戸川萬園(よろずえん)」(同区松島1-32-11)」が紹介されていた。
さらには、「江戸川区 街の話題 「釣りしのぶ」出荷最盛期!!」なる頁の中でも、美女が釣りしのぶを指し示す画像と共に、江戸川区の『萬園』さんが紹介されている。
他に、「JA東京アグリ」の中でも、『萬園』さんが。
このサイトにも世話の仕方が書いてあるが、他にも、有名な「江戸風鈴・篠原まるよし風鈴」の中の、「釣りしのぶ」という頁にも画像と併せ、説明が施されている。
この江戸風鈴のお店のことは、ちょっと懐かしい。もう、二十年以上も昔、輸出代行の会社に勤めていた頃、このお店など、江戸職人展(正確な名称を忘れた)をデパートのシンガポール店かホンコン店で行うということで、輸出の実務(輸出検査や輸出するための書類作成、商品の検査、数の確認、梱包その他)で大童だったことがあったのである。
その手間のお蔭で、江戸切子(きりこ)や江戸風鈴など、職人の仕事に関心を持つようになったのである。
それはともかく、江戸風鈴の中の、「釣りしのぶ」の形や名称の面白さ。「カスミ (満月と雲)」、「玉」、「屋形船」、「灯籠」、「井桁(イゲタ)」の数々。
中に「釣りしのぶ」の広まった経緯(いきさつ)が説明されている。つまり、「江戸時代、駒込付近に植木職人さんがたくさん住んでいました。その植木職人さん達が旗本や各藩のお屋敷の植木の手入れを任されていた時にお中元として持ち込んだのがきっかけで江戸中に広がりました」という。
江戸の頃は高価で風鈴は下げられていなかったというが、今は珍しくもないのだろう。ちょっと、手作りの作品を観てみよう→「My Mom's Art Museum つりしのぶと風鈴」
ついでなので、来月になったら採り上げるかもしれない「江戸風鈴」の画像で涼しさを先取り。「風鈴の音は住まいの温度を2度か3度さげてくれるようです」というから、クールビズにも叶っている。
小生には、「風鈴を揺らしてみても夏は夏」という迷句があるが、風鈴の風に揺れる様や音色が涼しげなことは、間違いないようである。
釣りしのぶ揺らそうとする風鈴か
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