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2005/06/17

バチスカーフ

 過日、ラジオを車中で聴いていたら(番組名は忘れた)、バチスカーフという懐かしい名前が。
Captain Fleet の ホームページ」の「深海潜水艇」なる頁を覗くと、その冒頭に、バチスカーフの項が見つかる。生憎、画像は載っていない。
 フランスの「深海潜水艇で」、「有名なオーギュスト・ピカール博士が開発し」たもの。「バチスカーフ以前は、深海調査には潜水球が用いられました。潜水球は水圧に耐えるために球形をした中空の乗物です。これを母船(水上船)からワイヤーでつるして深海調査をしました」なんて話をラジオでは最初にしていたような。
 さらに、ラジオでも、「しかしこれでは母船が揺れるとワイヤーを伝わって潜水球も揺れてしまいます。当然のことですがワイヤーの長さより深く潜ることもできません。推進装置を持っていないので自力で移動することができません。そこでピカール博士は潜水球に代わる潜水艇「バチスカーフ」を考案し」たという話が続いていた。
 ガソリンを燃料としていたが、ガソリンは単に燃料の役目に止まらず、比重が水より低いことから浮力を得る目的もあったとか。

アサヒ写真ブック85 バチスカーフ」があって、バチスカーフの勇姿を見ることができる。このサイトによると、「「バチ」は「深い」、「スカーフ」は「舟」という意味のギリシャ語」だとか。
 決して、バッチイ、スカーフではないのだ。

 ラジオからの話は仕事中ということもあり、聞きかじりなのだが、1958年の6月14日(20日だったかもしれない。忘れた)に、「バチスカーフ「FNRS III号」による日仏共同日本海調査(宮城県女川沖)で水深3,100mに潜航」したと言っていたようだ(その日にちなんで、ラジオで話題になっていたものと思う)。
海人のビューポート(覗き窓)」という「日本発の海底居住実験である「シートピア計画」の支援ダイバーであり、バブルリングの発明者であり、海岸漂着物研究家であり、JAMSTEC広報課の名物トトロおじさんである山田海人さんのページ」の中の、「潜水船開発の変遷」なる頁が興味深い。
 変遷の歴史の冒頭には、やはりギリシャのアリストテレスが登場する。文献が残っている強みなのだろう。小生の憶測だが、きっとその以前にも誰かしらが何かの機構で深海か湖底かの潜水に挑戦しているに違いないと思うのだが。

 アレキサンダー大王が、レバノンのチレ(Tyre)包囲中に潜航していたというのも、冒険心溢れる大王に相応しいエピソードに思えたりする。

「潜水船開発の変遷」の表を眺めているだけで、夢想の念が際限なく広がっていく。個人的には、1953年の「「くろしお」に搭乗した北大の鈴木昇氏によって水中の懸濁物が「マリンスノー」と命名される」という項が面白かった。マリンスノーという名前が日本人によるのも、初耳だし、なんとなく嬉しかったりするのだが、同時に、(科学者として、エッセイストとして)我が敬愛する中谷宇吉郎博士の名前に意外なところで出会って、一層、嬉しい。「井上教授の恩師中谷宇吉郎博士は世界に先駆けて「雪氷学」を確立し、潜水探測機後援会会長として運用を支え、マリンスノーの名称を世に広めた」というのだ。
 マリンスノー…、それは、「肉眼で観察できる大きさの海中懸濁物」のことで、「炭素の貯蔵庫」だという。中谷宇吉郎博士は、陸の上のスノーだけじゃなく、海の中のスノーにも貢献していたのだ。
 ちなみにこのサイトで、「マリンスターという言葉」を知った。「これは海中の発光物体のことで、海洋研究開発機構のしんかい2000運航チームのメンバーが命名しました。マリンスターは発光生物や懸濁物に付着した発光バクテリアであると考えられてい」るという。
 海の中には何が潜んでいるか、計り知れないのだ。

 潜水調査船によって広がった海の可能性は絶大なものがある。「熱水噴出現象発見」(1986)とか(熱水というとき、100℃に止まらない。時に300℃以上だったりする)、「石油分解細菌を発見」(1992)、「船内に残されていたサンドイッチから深海では腐敗が進まないことが判明。深海微生物学の誕生に繋がる」(1969)などなど。
Extremobiospheres Research Center」で「石油分解細菌」などの画像を見ることができる。「駿河湾深度1,945mの海底泥から分離された石油を分解する微生物です。近い将来、海洋流出油の処理に大いに役立つと考えられています」ということで、一頃、話題になったものだった。
熱水噴出孔生物群集」で、
「小笠原諸島海域の海形海山水深450mにある熱水噴出孔生物群集。熱水の湧き出し点にユノハナガニが密集する」といった画像や、「鹿児島湾の湾奥でみられる「たぎり」。桜島の火山活動の影響と考えられている」という画像を見ることができる。

 さらには、「極限環境微生物」など、生命の誕生にも関係する興味深い生き物が海の底(中)に生きている。
 小生も、「デヴィッド・W・ウォルフ著『地中生命の驚異』(長野敬+赤松眞紀訳、青土社刊)についての書評エッセイの中で、極限環境生物
などにも触れている。

 小生、何が怖いって、飛行機も怖いが、潜水艦が怖い。昔は泳げないから海が怖いのかと思っていたが、既に泳げるようになっているので、どうやら海の中、海の底というのが、端的に怖いようである。飛行機だと事故を起こしたら一瞬にして一貫の終わりだが、潜水艦だと、ジワリジワリと真綿で締め付けられるような恐怖感を覚えてしまう。経験がないのだが、つい、そんな想像をしてしまうのだ。
 映画は映画館ではめったに観ない小生だが(すぐ寝てしまうので)、映画『眼下の敵』は、珍しく映画館で(も、テレビでも)観た。ロバート・ミッチャムや小生の好きな俳優のクルト・ユルゲンスが出演しているから、ということもあった。女優さんが出演していないにも関わらず、飽きさせることなく最後までしっかり見させる骨太な映画だった。敵も味方も共に人間ドラマを演じていることをひしひしと感じさせる映画でもあった。
 ストーリーに直接は関係ないが、敵船の機雷攻撃などから逃れるため、潜水艦が深く潜行する。時には限界ギリギリ以上に。潜水艦のボルトなどが水圧に負けて外れ、弾丸のように飛ぶシーンなど、胸が締め付けられるようでもあった。
 潜水艦ものというと、『Uボート』も外せない。
 戦争の悲惨さが描ききれていないのではという憾みも感じたりするが、戦争が悲惨ばかりではなく、闘いの合間に観た海の穏やかさ、空の青、雲の眩しいほどの白き輝きなどに見惚れる瞬間だってあったりするのだと思う。そうした凪と嵐とも含めて戦争なのだろう。
 
 SF小説では、あのアシモフの「ウォータークラップ」の中にバチスカーフが登場するらしいが、小生、未読である。
成恵の世界」という丸川トモヒロ原作のアニメ(?ラジオドラマ?)の中にバチスカーフという登場人物があるらしいのだが、これも未読なので詳細は分からない。
 多くのSFファンが読んだだろう有名な潜水船もの小説というと、やはり、ジュール・ヴェルヌの『海底2万マイル』(角川文庫)だろう。潜水船の名は、ノーチラス号。
ノーチラス号とネモ船長」という頁が面白い。「ジュール・ヴェルヌ(ジュール・ベルヌ)作の「海底二万里」に登場する<ノーチラス号>(ノーティラス、Nautilus, オウム貝の意味)とネモ船長の話題を扱うページ」だという。
「科学技術面では潜水船ノーチラス、大気圧潜水服が登場。なんと海洋温度差発電への言及もある(角川文庫版:p.125)」とか、「海洋科学面でも多くの記述がある。海洋生物(P.111)、海洋微生物(p.193)、地質時代(p.143)、海洋の熱塩循環(p.192)、海洋大気相互作用(p.576)にまで及ぶ。特に膨大な種類の海洋生物の記述には圧倒される。これが1872年の「チャレンジャー号」による歴史的航海の前に書かれたとは、驚くほかない」というから、今、改めて読み直してみたいものである。
 1869の原作ということを考えると、ジュール・ヴェルヌは、つくづく凄い作家だと感じさせる。

 さすがに潜水艦や潜水船に絡む句は見つけられなかった。代わりに、「空風に角張りて干す潜水着   平野あや子」が、海の中を潜る楽しみと緊張から開放された寛ぎが感じられて楽しい句だと思った(「俳句のNPO」の中の「デイリー句会月間賞」なる頁にて発見)。

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コメント

潜水艦 この名前で思いつくのは、やっぱり
ノーチラス号です。
海底二万マイルの物語は小学生の頃に買ってもらい、夢中で読みました。
不思議な不思議な海底の様子、海といえば山育ちの私は、夏休みに連れて行ってもらう海水浴の海しか知りませんから、ノーチラス号に乗って、海中を旅したいなあと思いました

水族館に行くと、分厚いガラスに顔をくっつけて、二万マイルの雰囲気だけでも味わおうとしたものです。
ヴェルヌはこの話を、想像だけで書いたのでしょうか?
作家とはすごいものですね。

3年ほど前にNHKで青い海の秘密?題名は忘れましたが七日間ほどの連続で海の物語というか記録映像の番組をやっていました。
大海原の真ん中はなーんにも無くて、旅をする魚の群れがたまに通るだけ、砂漠のようでした。
深海には見たこともない世界が広がって、怖いけれど魅惑に満ちていました。
海底は真っ暗で、何があるか、音も無く光も無い世界ですが、もしも、もしも、海底の旅に誘われたら、行きたいなあ!!

投稿: 蓮華草 | 2005/06/18 19:58

蓮華草さん、こんにちは。
この話題にコメントは期待できないかなと思っていただけに、コメントを寄せてくれて、嬉しいです。
海底二万マイルの物語は小生もワクワクして読んだ記憶があります。元来が推理小説よりSF小説が好みだから、SF的な小説(漫画も含めて)を近所の貸し本屋さんで借りて読み漁っていたような。
「年ほど前にNHKで青い海の秘密?」って、「プラネット・イン・ブルー 青い海の惑星・もう一つの宇宙」(: http://www.pc-success.co.jp/dir/catalog/S0401/S0401399w90kAr.html
)かな。
海の映画というと、「グラン・ブルー」とか「ディープブルー」とか名作(?)があるみたい。どれも観てない。
深海の散歩。魅力一杯。怖いような、観たいような。運命を共に出来る人が居たら、一緒に行ってみたいですね。

投稿: 弥一 | 2005/06/19 04:02

お早うございます
名前が中々思い出せなくて・・・
「ディープ・ブルー」に似ているのですが、
「海・青き大自然」でした

たしかBBCともう一つの会社との共同制作ではなかったかと

http://www.bbcjapan.co.jp/02_video/david_umi_sizen.html

もう2年か3年前ですので・・・
命の海からはじまって、海底や、南極など、
7箇所ぐらいの場所を回るのでした。

深海魚は忍者みたいですし、子鯨を連れて、はるか南極を目指す母と子が、シャチに襲われ、とうとう子鯨は、死んでしまいます。

疲れて泳げない子鯨に、息継ぎをさせるため、必死に自分の背中で子鯨を押し上げる、母鯨の姿には、感動しました。

シャチも必死、鯨も必死、でも、生きていく為の戦いがあり、犠牲になるものはいます。

母鯨は、しばらくその場に留まっていましたが
たった、1頭で、ついに南極を目指し泳ぎ去っていきました。
カメラがパーッと、ひいて、大海原を、南を目指し泳ぐ、母鯨の姿をとらえていました。
すごく印象に残った場面です。

投稿: 蓮華草 | 2005/06/19 07:37

蓮華草さん、こんにちは。
NHKは、こういったいい作品を見せてくれますね。
とはいっても、小生、テレビはない。あるのは、十年程前に仕事の為に購入したカーナビのモニターだけ(実用に耐えないので自宅でテレビを見ている)。
アンテナの調子が悪く、特にNHKは、画面が常に嵐の状態。大雨が降っています。なので、ほとんど音声情報を得ているだけ。素敵な画像の作品も楽しめない。
ま、強がりを言えば、画像が楽しめない分、想像力を膨らませる訓練になっている、というか。
いつか、素敵な作品を見てみたいものです。

投稿: 弥一 | 2005/06/19 10:16

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