日記拾遺…いちこつ
昨夜、営業中のこと、車中で聴いていたラジオで、小生には初耳の話を聞きかじった。メモするゆとりもない状況だったので、幾つかの言葉を覚えておいて、あとでメモ。
キーワードは、「いちこつ 富山 駅 発車(NHK)]である。最後の(NHK)は、聴いていたラジオ局のこと。
話は、音が話題になっていて、語り手の名前を聞き漏らしたのだが、声の調子や話の内容などからすると、日本音響研究所の鈴木松美(すずき まつみ)氏と思われた。
インタビュアーは分からないが、どうやら番組は、「放送日:2005年6月7日(火)20:00~21:00
番組名:ふれあいラジオパーク(NHKラジオ第一) 内容:音に関する話題でトーク」のようである。
顔の骨格などから声がある程度再現できるとのことで、モナリザやベートーベンの再現された声など聴かせてくれた。
また、聴く方が心地いい声は、<ゆらぎ>のある声で、音響の画像で見た場合、一定の周波数の1/fという波を描く声ということで、その代表的な実例として美空ひばりさんが歌う「川の流れのように」を例にあげていた。
ビブラートのあるくだりということで、きっと、あの「さび」の部分だろうと推測したら、まさにその通りで、「あーあー、川の流れのように」以下の箇所。美空ひばりさんは、その部分をサビということもあろうけれど、意識的にゆっくりゆったり歌っていると小生に聞くたびに感じさせてしまう箇所でもある。
それにしても、美空ひばりさんの歌うスタンダードナンバーは絶品だ。彼女の歌うジャズもノリノリ。凄い!
上掲のサイトの表紙に「日本音響研究所で作成した合成音声の美空ひばりがディジタル出演する「オペレッタ狸御殿」が5月28日より全国松竹・東急系劇場で公開されます」という情報が載っているが、今まさに旬の人ということでNHKラジオでの話となった(のかもしれない←小生の推測)。
この番組(上には「ふれあいラジオパーク」とあるが、他のサイト=NHKだと「ふれあいラジオパーティー」と銘記されている)には、「声の不思議・音の不思議」というテーマで、ゲストに日本音響研究所所長の鈴木松美氏のほかに、ミュージカル女優の新妻聖子さんが呼ばれていた。
聞き手のアナウンサーも語り手も男性なので、女性が加わっているのかどうか分からないが、彼女の歌う声も鈴木氏により分析されていたようで、聴き手を心地良くさせる素質は十分にある、あとは技術を磨けば光る、と鈴木氏が語っていたのは、素直に褒めていたと思っていいのか、それとも勉強が足りないと言っているのか、俄かには判断が付かなかった。
でも、ラジオで聴いたかぎりでは、小生もいい声だと感じた。歌の上手さなどは小生には分からない。
ちなみに、ミュージカル女優の新妻聖子さんと言われても、小生は、ミュージカル女優というと、松たか子さんくらいしか浮かばなくて(失礼、本田美奈子さんとか、榊原郁恵さんなど)、早速、ネットで調べてみた→「情報誌ロゼ(春号) 新妻聖子インタビュー」
どうやら、「二〇〇四年のミュージカルベストテン「女優部門」ベスト20(月刊ミュージカル誌)にランクインを果たした新妻聖子」ということでのインタビューらしいが、人気が急上昇しているのだろう。
このインタビューを読んでも、「女優になったきっかけは=東宝から直接お声が」が、彼女の声にあったと分かる。
彼女の日記が読めるぞ→「★新妻聖子ダイアリー2005★」(「2005年2月6日 sun」の日記に注目。日記を読んでいて気づいた。「ガラスのうさぎ」で売り出してるんだ。ラジオで二三度、聴いたっけ)
あれれ、何の話だったけか。女優となると目の色が変わる。
要するに、日本音響研究所所長の鈴木松美氏の話の中に、「いちこつ」が出てきた。それだけなら、例によって聞き流すに終わるはずだが、「富山」と関連すると聞いて、思わず傍耳を立てたのである。
つまり、富山では(これが富山県なのか富山市なのか、富山のどこかなのか、富山駅なのか聞き漏らしている)、駅での列車の発車の際に「いちこつ」の音が流される、ということで、その音も聴かせてくれたのである。
その前に水琴窟の奏でる音などを癒しの音として聴かせてくれて、その流れで、「いちこつ」の音の話題になったのである。
また、ちょっとだけ余談となるが、この水琴窟現象、結構、身近な場所で出会うことができることに、小生は気づいている。タクシーという仕事柄、トイレなどは公園を見つけて済ます。現金を扱ったりするし、汗もかいたりするので、手や顔を洗えるよう、公園の隅っこなどに蛇口のある公園をできるだけ選ぶようにしている。
で、これはある意味、タイミングの問題でもあるが、雨上がりの時などその洗い場に近付くと、ビョンビョンというような、水琴窟特有の音が聞こえて来るのである。初めて聴いた時は、え? 何の変哲もなさそうな、こんな小さな公園のどこかに水琴窟があるの? それとも何処かの民家の塀の向こう側かな、と耳を澄ませたが、なんのことはない、洗い場から聞こえてくるのだった。
どうやら、洗い場で鉄格子の下の水を溜める空間が、水琴窟の構造に近似していると察せられるのである。
これが、関係当局の意図したものか、偶然、そうなったのかは分からないが。
いずれにしろ、雨上がりに洗い場のある公園へ行く小生の、密かな楽しみの一つなのである。
ここまで前振りをして、ようやく本題に入る。念のため断っておくと、「いちこつ」である。
「大辞林 国語辞典 - infoseek マルチ辞書」には、「日本音楽の音名。十二律の一番目の音。中国十二律の黄鐘(こうしよう)に相当し、音高は洋楽のニ音にほぼ等しい」と説明されている。
「いちこつ」の意味をネットで調べると、いろいろあるようだ。
「生田流お琴教室 お箏の調弦法」がネット検索の筆頭に来る。
「雅楽小事典 い」の中の「壱越(いちこつ)」を見ると、「音の和名。ほぼ洋楽のD音(レの音)。漢名は黄鐘(こうしき)」とある。その下の項には、「壱越調(いちこつちょう)」があり、「調名。上記の壱越の音を基音としたもの」とした上で、さらに説明が加えられている。
信州(北信)の方言で「いちこつ」というと、頑固者(がんこ)を指すらしいが、今の話題とは関係なさそう。
壱越調は、「一越調」とも表記するようだが、「一」は「壱」だから、同じと見なしていいのか、どうか(詳しい異同は分からない)。
壱越調の曲は、「源氏物語」などと関係があるらしいが、小生には手が負えない。
さすがだと思うのは、松岡正剛はちゃんと壱越調などの日本文化を捉えていること→「Seigow 自著本談『遊行の博物学-主と客の構造1』」
「「勤式作法」は勤式、お経の読み方の基本」ということで、浄土真宗本願寺派の読経始めの音階に音階表があり、「壱越(いちこつ)、断金(たんぎん)、平調(ひょうじょう)、勝絶(しょうぜつ)、下無(しもむ)、双調(そうじょう)、鳧鐘(ふしょう)、黄鐘(おうしき)、盤渉(ばんしき)、神仙(しんせん)、上無(かみむ)、という絶対音」(加えて、鸞鏡(らんけい))を掴んでおく必要がある、という話も、まるでチンプンカンプンである。
「富山訪問記 その1 だんじり鳴りもの編」に「いちこつ」の制作風景(といっても、作業開始直後の様子)を写した画像があった。
さて、肝心の「いちこつ」の画像を示したかったが、小生には見つけられなかった。どうやら、富山の駅で列車の発車の際に鳴る音というのは、「金剛鈴」らしき<楽器>(というより密教法具なのか)の奏でる音らしいのだが。さすがに浄土真宗王国の富山らしいエピソードである。
といいつつも、小生は富山の駅には幾度となく降り立ったことがあるが、聴いたことがない(もっと正確には、聞いたことがあったかもしれないが、聞き漏らしている)。
尤も、実際にホームに立った駅の数は知れているから、今もって聴く機会に恵まれないだけなのかもしれない。
誰か、情報をお持ちの方、教えてくれたら幸いである。
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コメント
壱越。元は読経の音なんですね~
お琴を合わせる時、今は調子笛を使いますから、知りませんでした~楽器のようなのが有るのですね。
富山の駅で。。聞いてみたいです(^.^)
投稿: ちゃり | 2005/06/08 22:40
ちゃりさん、こんにちは。
「いちこつ」、ホント、手探りの調査でした。まだ、頭の中が整理できていない。読経はともかく、雅楽などに携わる人には常識なのかな。
でも、肝心の「いちこつ」の画像を見つけ出すことができなかった。
富山でも、一体、何処の駅で聞けるのか分からないままだし。悩ましい!
投稿: 弥一 | 2005/06/09 01:38
そうなんだ・・・
お経にも節回しがあって(これは宗派によって違うのかもしれないけれど)
どの音が基準なのかが解らなかったのですが
Dが基準だったんですね。
それにしても驚くのは、弥一さんが営業中の車の中で聞いた情報をしっかり覚えているということ!
3歩あるいて振り向いたとたんに忘れる私とは大違いだわ。
見習わなくては・・・でもこれは習慣なんでしょうね。素晴らしい!
投稿: マコロン | 2005/06/09 15:13
マコロンさん、こんにちは。
車中で聴いた話は大半、忘れるか、そもそも仕事中なので聴いているわけにいかない。なので、キーワードだけ覚えておきます。
小生の場合、悲惨なのは、こうしてせっせと書いても、その翌日には書いた内容を忘れてしまうこと。
ただ、ある意味、意図的に書いた内容を忘れようともしている。というのは、記憶容量のキャパシティが少ないので、書く当座だけ思い出し、書き終えると忘れ去る。
そうやって頭の中を常に空っぽにする。覚えておくのは書いたという感じと、書いた時の想像力の興奮状態。
困るのは、自分で前に書いたことを忘れて、せっせとネット検索して資料を集めつつ書いていて、ふと、どこかで見たような文章に出会う…あれ、これって我輩の文章じゃん?! となったりすること。度忘れにも程があるってーの。じゃん、じゃん。
投稿: 弥一 | 2005/06/10 12:42