蚊取線香…灰は切れる
今日、表題に選んだ「蚊取線香」は、多くの日本人にはあまりに馴染み深い風物。夏が近付けば、当たり前の風物詩として身近にある。
無論、夏6月の季語。
とはいえ、最近の蚊取線香は、すっかり様変わりして、電子蚊取、電気蚊取、蚊取マットなどが登場しているようである。
小生は、しかし、断固、渦巻き型の従来通りの蚊取線香がいい。あの形に慣れすぎてしまったのかもしれない。
蚊取線香の歴史その他については、やはり、「金鳥の夏 日本の夏」の、金鳥さんに…じゃなくって、「KINCHO大日本除虫菊株式会社 ホームページ」に伺うのが宜しいだろう。特に、「KINCHO 工場見学 工場長に聞く かんたんなお話コース(お子さまむけ)」が小生には、分かりやすいし、興味深い。以下に示される質問項目で、大概の疑問は尽きるのではなかろうか:
●「かとりせんこう」はいつからできたのですか?
●なぜ、「金鳥の渦巻」は左巻なのでしょうか?
●「かとりせんこう」のけむりには、害はないのですか?
●なぜ「うずまきがた」をしているのでしょうか?
●なぜ「かとりせんこう」で「か」が死ぬのでしょうか?
●「かとりせんこう」は何からできているのでしょうか?
なぜ「みどり色」をしているのでしょうか?
中でも、「「金鳥の渦巻」は左巻なのでしょうか?」ってのは、小生、疑問さえ浮かばなかった。
それと、「なぜ「うずまきがた」をしているのでしょうか?」なんてのも、すぐに答えの文章を読んでしまったので、疑問も浮かばなければ、答えも当然至極で、小生は予め分かっていたかのようだが、さて、本当に分かっていたかどうか、はなはだ疑問。
「うずまきがた」なのは、「「ぼう」のかとりせんこうでは、1本で40分間くらいしかもたず、長い時間使うことができませんでした」という事情からも、コンパクトな空間にたくさんの(長い)線香を収めることができるからだから、理解できるとして、「「ぼう」のかとりせんこうでは」「ききめも弱く」という点が理解できない。
「ぼう」の形にすると、ただの線香になり、成分も違えば効目もなくなる…。
余談だが、小生自身は、貧困に喘ぐようになってからは、せっかくの渦巻き型蚊取り線香ではあるが、数センチずつ千切って使っている。つまり、ほぼ棒状の(蚊取り)線香の形で使っているわけだ。
当然ながら、煙が出ている時間は短いが、まあ、寝入るまでの時間、蚊に悩まされなければいいわけだし、既に燃え尽きてしまっている夜中に蚊の襲来に困ることもめったにないので、棒状(しかも数センチ)で十分、用が足りているのである。
次の、「なぜ「かとりせんこう」で「か」が死ぬのでしょうか?」って、そのために蚊取り線香があるんじゃない! って、言いかねない。やはり、小生、科学者にはまるで向いていない。
「なぜ「みどり色」をしているのでしょうか?」なんて疑問も、湧いてこない。「せんりょう(染料)を使って、みどり色にしています」というから、意図的に緑色にしているのだ。
その理由は、どうぞ、紹介した頁を覗いてみてくださいな。
疑問といえば、虫(蚊)さんが、何故、未だに蚊取り線香(除虫菊を燃やした煙)に弱いのかということ。蚊さん、学習効果って言葉を知らないのか。小生のように、勉強について怠慢なのか。そろそろ蚊取り線香に撃退されない蚊の登場があってしかるべきなのではないか。この点は小生の年来の疑問ではある。
この煙、殺虫効果について、程ほどだからいいのかな、なんて思ったり。つまり、徹底して殺し尽くすようだと、耐性を獲得するが、麻薬のように吸引したくなる欲望に駆られてしまうようで、虫さんにとっても、実は悩ましい存在なのかもしれない。
今日では、(日本では)除虫菊はほとんど生産されていないという。「家庭用殺虫剤のほとんどが合成ピレスロイドが使用されている」というのは、初耳だった。
ああ、真実を知りたくなかった。今の今まで除虫菊が原料だとばかり思っていたのに、密かに女中(使用禁止となっている?)のお菊さんが手で捏ねて丹精篭めて作っているものと思っていたのに、夢は潰えてしまった。
その他、「蚊取線香は、どうして遅く(ゆっくり)燃えるのか?」とか、「なぜ、蚊取線香の灰が切れてしまうのか?」というのは、小生の盲点を突くような疑問で、例えば後者の「なぜ、蚊取線香の灰が切れてしまうのか?」ってのは、確かに蚊取線香の灰は渦巻き型につながってはいないことに、今にして気づいた次第だった。
「蚊取線香灰の渦巻き残しけり 千枝」という句がネット検索していた見つかったが、大凡において灰は渦巻き型だが、つながってはいない、途切れ途切れの灰が渦巻状になっているということなのだろう。
なるほど、そこにも理由があったのだ。
誰か、敢えて、途切れ目のない渦巻状の灰を遺す様、トライしてみないか?!
蚊取線香には、「遣火 蚊火 蚊火の宿 蚊取線香 蚊遣豚」という一連の類義語があり、「蚊を防ぐため松や杉の葉などを焚いた」という。「蚊遣(かやり)」というと、蚊を防ぐために焚いた松や杉の葉、ヨモギの葉を指すのだろうか。ん? 除虫菊ってなかったっけ。
「「むかしの道具」展へようこそ」というサイトの「77 かやりぶた・かとりせんこう【蚊遣豚・蚊取線香】」という頁を覗くと、懐かしい蚊遣豚の勇姿を拝める。
どうして蚊取り線香に豚さんなのか、発想の貧弱な小生には理解しがたいが、とにかくユーモラスではある。
やはり、いつの世にか、誰かが発想(発明?)したのだろう。
蚊取線香は、駄洒落でスマップの誰かに宛がわれたりするが、分かり安すぎるので、ボツ。
蚊取線香から線香花火に話を持っていきたかったが、ちょっと無理を感じたので、また、ホトボリが覚めたらトライする。
ネット検索していたら、蚊取線香ではないが、「蚊」の句でいいのがあった。「蚊の声は打も消さぬよ雨の音」(太祇句の作)。
あるいは、同じく太祇句の作の「あまた蚊の血にふくれ居る座禅哉」は、いい句というより、生々しすぎる。
「孑孑やてる日に乾く根なし水」なども、評釈を読んで改めて鑑賞すると、実感が湧く。「孑孑」は、「ぼうふら」で、蚊の幼虫のこと。
小生、季語随筆の「冬の蝶」の項で、「冬の蚊」を扱っている(ことにネット検索して気づいた)。その際、以下のような駄句をひねっている:
冬の蚊に風情覚える寝床かな
哀れなる思いはすれど線香焚く
これからいよいよ蚊の活躍時となる。未だ、今年は蚊取線香を買っていない。探せば一昨年だったかの分が残っているかもしれないが、見つかるかどうか。見つかる前に蚊が現れないことを祈るばかりである。
蚊におびえ眠れぬ夜を長くする
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コメント
蚊取り線香の季節なんですね。
私は蚊取り線香の匂いが大好きで
蚊がいなくなった晩秋あたりまで焚いています^^;
最近はコイル状になったお香も出てきて
蚊取り線香を使わない冬や春先はもっぱらこちらの方を焚いています。
そう言えば蚊やりとも呼ばれていませんでしたっけ?
投稿: マコロン | 2005/06/16 13:39
マコロンさん、コメント、ありがとう。
そう、小生もベッドの脇には年中、蚊取線香を置きっ放し。蚊に怯える性分なもので。
「蚊さんが夜なべをして一晩中刺してた」…っていう歌を歌うくらい?!
文中にもありますが、蚊取線香と「蚊遣り」との異同、小生、よく分からないのです。
投稿: 弥一 | 2005/06/16 16:32
やいっちさん、こちらでは久しぶりです。
蚊取り線香は5月頃から腰にぶら下げて庭に出ています。まだ1個だけぶら下げています。蚊が多くなると3個ぶら下げたりします。なぜって?私はどうやら蚊に刺され易い体質みたい。あの煙って人間が吸っても良くない気がするけど止められないのです。トホホ(^ ^;)
投稿: さくらえび | 2005/06/17 01:17
そうですね。蚊取線香は草むしりには必需品。あるとないとでは大違い。知り合いなどは、二つか三つの蚊取線香を草むしりする周辺に置くのだとか。
小生が紹介したメーカーさんのサイトでは、煙を吸っても大丈夫と、安全を謳っています。虫には毒性があるけど、温血動物は酵素の働きで薬剤を分解し放出してしまうのだとか(「なぜ蚊取線香で蚊が死ぬのでしょうか?」の項を参照)。
まあ、これまで何十年、夏場は吸ってきたので、大丈夫なのかなと思うしかないようです。
ね、金の鳥さん!
投稿: 弥一 | 2005/06/17 01:41
>文中にもありますが、蚊取線香と「蚊遣り」との異同・・・
失礼しました~!
読んでいるのに、頭の中には『蚊取線香』しかなかったわ。
これだからそそっかしいって言われるのよね・・・
投稿: マコロン | 2005/06/18 00:12
マコロンさん、小生の文章、長いことで有名(?)。だから、何処に何が書いてあるか自分でも分からなくなることがしばしばなのです。
ただ一つ、今回、この記事を書いて、蚊取線香の原料が、既に天然の除虫菊ではなく、合成ピレスロイドが使われているという現実に、何故ともなくガッカリしてしまった。別に合成だからどうということもないはずなのだろうけど、さ。
投稿: 弥一 | 2005/06/18 08:49