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2005/06/24

茅花流し…茅花の語源は

 気になるので、在宅の時は日に二度三度と覗くサイトがある。そんなあるサイト(夢音の木α)で、表題の「茅花流し」という言葉を知った。小生には全くの初耳の言葉。
 例によって勝手ながら転記させてもらうと、「春先に出る褐色の花穂(かすい)をツバナといって、なめると甘い味がします。江戸時代には、チガヤの花穂を、おやつとして売り歩いたそうです! 茅花が咲くころの、湿気を含んだ南風を「茅花流し」と言うそうです。季節・体感・響き・風景をふくんだ、とても感性豊かな言葉ですね。。。4文字しか無いのに。。。」とある。
 何事も長話にしてしまう小生のこと、こんな簡潔にはとても話を収められない。
 ネットなどで調べられる限りのことを書き連ねてみようと、上掲のサイトの文や素敵な画像を眺めている間に、思い立っていた。

 いつもこれまた勝手にお世話になっている、「俳句歳時記」の中の、「夏の季語(自然編-50音順)」によると、「茅花流し (つばなながし)」は、「湿気の多い雨混じりの南風が吹く」とある。
 別の「俳句歳時記」の中の、「季語集・夏」では、「初夏、茅花のわたのほぐれる頃に吹く南風で雨を伴うものをいう」と説明されている。

 どちらも、雨混じりか雨を伴う南風ということになっているが、「おしゃれ手紙 - 木漏れ日、白いハ・・・」の「雨の名前:茅花流し(つばなながし)」によると、「「茅花(つばな)」とは、チガヤのこと。稲科の多年草」とした上で、「茅花の穂がほぐれるころ吹く南風のことだが、それにともなって降る雨のこともいう。 「雨の名前」高橋順子」と説明されている。
 本来は「茅花の穂がほぐれるころ吹く南風のことだが」、「それにともなって降る雨のこともいう」らしいのである。
 ちなみに、高橋 順子著『雨の名前』(佐藤 秀明写真、小学館2001/05刊)は、以前も参照させてもらったことがあるが、「「雨の名前」422語、「雨の写真」148点、「雨の詩とエッセー」35篇。雨の日を3倍に楽しむ本。辞典+歳時記+エッセー+写真集のアンサンブル」で、雨の名前というと、この本が登場する。
 こういう本が座右にあれば、エッセイのタネに事欠くことはないし、一読しておけば、雨もまた楽しいのかも。

 さて、チガヤ(茅)の姿は、如何に。「茅花流し」に画像が載っている。
 あるいは、「melma!blog [優嵐歳時記]」の「【皐月】」には、チガヤの画像が紹介されてあった。
 小生のような観察眼の乏しい人間には、あれ、季節外れのススキ? と思ってしまいそうな姿だ。

 不思議なことに(不思議と思うほうが変なのかもしれないが)、「茅花流し」は初夏の季語のようだが、「茅花」は、季語扱いとなっていないらしいこと。
 尤も、丹波新聞社【tanba.jp】の「6月5日 つんばら」という項を覗くと、茅花 (つばな) のことを丹波地方では、「つんばら」と呼ぶなどと書いてあって、その末尾に、「俳句では、 茅花は春の季語」とある。
 手元に資料がなくて、確認できないのがもどかしい。

スズメ♂のnamida&ゴマメのhagishiri」の中の、「古典と植物(9)ツバナ」を覗かせてもらう。「右の写真は、花が終わって白い綿毛が伸びているところです。秋のススキとはまた違った、かわいらしい風情です」といった画像があって、可憐である。
 また、『万葉集』に詠まれているという「茅(ちがや)」絡みの歌が紹介されている。
 ここでは、「たのしい万葉集」の中の、「万葉集 茅萱(ちがや)を詠んだ歌」を参照させてもらう:

0333: 浅茅原つばらつばらにもの思へば古りにし里し思ほゆるかも

1449: 茅花抜く浅茅が原のつほすみれ今盛りなり我が恋ふらくは

1460: 戯奴がため我が手もすまに春の野に抜ける茅花ぞ食して肥えませ

1462: 我が君に戯奴は恋ふらし賜りたる茅花を食めどいや痩せに痩す

「浅茅原つばらつばらにもの思へば古りにし里し思ほゆるかも」などは、小生も好きな歌なのだが、「浅茅(原)」が、「茅萱(ちがや)」だとは理解していなかった。というより、その前に、どんな植物なのかを調べてみたことがなかったような。
 ただ、勝手に何か「オレは河原の枯れススキ♪」のような寂しげな、雑草に近い植物なのだろうとはイメージしていたが。
 念のために断っておくと、「浅茅が原」(や、白茅 浅茅、茅萱など)は、秋の季語のようである。

 さて、冒頭に示した気になる一文、「春先に出る褐色の花穂(かすい)をツバナといって、なめると甘い味がします。江戸時代には、チガヤの花穂を、おやつとして売り歩いたそうです」である。
イー薬草・ドット・コム」の中の、「チガヤ」が詳しい。薬効・用い方やその他あれこれ、書いてあるが、個人的には、「チガヤの名前の由来は、和名のチガヤのチは千(1,000)の意味で、多数をあらわしています。
チガヤが、群生することからチガヤが名付けられたということです」という語源の話が興味深かった。

 最後に、「野の花散歩」なるサイトの「チガヤ」という頁を覗く。
 ここでは、『万葉集』のほか、清少納言も枕草子の中で「茅花」に言及していることが分かるが(『枕草子』の「六四 草は」の項)、さらにいろいろと教えてくれる。
 「若い花芽と花穂は強い止血作用を示し、鼻血、喀血の止血剤となった」など、薬効作用も相当なものだが、茅(かや)という名称から想像されるように、「葉は屋根の茅葺(かやぶき)の材料となり、穂は火打石で火を起こす際の火付け材となった」という。外見は地味なのに、なかなか驚くべきほどに多彩な用途を持つ植物なのである。
 このサイトには、チガヤの名の由来について、上掲の説のほかに、「赤い花穂から血茅(チガヤ)になったとする説、葉が紅葉するので血茅(チガヤ)になったとする説等いろいろ」あると教えてくれる。
 小生などは、画像を見てもらえれば、一目瞭然なのだが、白っぽい穂に赤い点々が印象的だったりすることからも、少々、血生臭いとは思うが、白装束に血飛沫、それとも、もっと凄まじくは、白刃に血糊という連想などが名称の背景にあるものと、勝手に脳裏に刻み込まれてしまっている。

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コメント

食べた 食べた 茅花
子供の頃、春先に、ツンツン伸びたこの若い芽を取って、おやつ代わりに。。。

ツンバナと、言っていました。
黒ツンバナも、あるのです。これは穂が黒く
まあ言うと蒲の穂みたいで、この食べ方は楊枝を加えるように、口に横一文字にくわえて、すっと引くのです。
口髭みたいに黒くなります。

忍者遊びの時は、この黒ツンバナで顔にお化粧?をして、遊びました。
白より黒のほうが、味は、濃厚です。

ツバナ、キラキラひかる春の日ざしを思い出すのです。泣きたくなるほど懐かしい!!あの頃!!。

投稿: 蓮華草 | 2005/06/27 00:44

蓮華草さん、コメント、ありがとう。
丹波地方では、「つんばら」と呼ぶらしいし(昔のことか)、蓮華草さんのところでは、「ツンバナ」と呼んでいたんですね。

> ツバナ、キラキラひかる春の日ざしを思い出すのです。泣きたくなるほど懐かしい!!あの頃!!
 
 小生には馴染みのない植物だったので、ただの好奇心で調べてみたのですが、なるほど、そんな思い出を掻き立てる植物でもあったのですね。
 小生は、違う意味で感動しました。

投稿: やいっち | 2005/06/27 02:13

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