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2005/05/19

熊谷草(くまがいそう)…熊がいそう

 ホームページの掲示板で「くまがいそう」のことを誰かが話題にしていた(11309)。恥ずかしいかな、小生、「くまがいそう」と聞いても、何一つピンと来るものがない。まして、花の姿形などはトンと浮かんではこない。
 名前からしたら、熊谷(くまがや)などを連想するが、根拠など、あるはずもない。
 せっかく、「くまがいそう」が話題になったのだから、まあ、興味本位ではあるけれど、ちょっと調べ見ることにした。
みともり 花のホームページ」の中の「くまがいそう Cypripedium japonicum」なる頁を覗かせてもらう。「熊谷草」と表記し、「多年草 【らん科あつもりそう属】 分布 沖縄を除く全国」とある。
「4~5月に咲く日本の蘭の代表」以下、説明が続く。花も流麗な雰囲気が漂うが、やや控えめな感じがあって、いかにも野に咲けば似合いそうな花だ。
 けれど、それ以上にこの花は、葉っぱに特長がある。画像を見てもらえたら、一目瞭然なのだが、自らの美しさを決して誇示しない可憐な花をいとおしむかのように、大きく開いた葉っぱが花を包み込んでいるように見える。
 ふと、こんな光景、何処かで見たことがある…と思ったら、そうだ、つい最近、あるブログサイトで「エリザベスカラー」のことが話題になっていたけど、まさしく、エリザベスカラーに守られた傷つきやすい花(顔)といった風情ではないか。

 尤も、上掲の頁には、「花は樹下にエリマキトカゲが多数並んでいるようで楽しい」とあったりして、言われてみると、成る程と思う。人によって感じ方はそれぞれである。というか、こちらのほうが確かに楽しい。
 花の名は、「名前は源氏の侍の熊谷直実が背負っていた母衣(ほろ)にちなむ」として、「熊谷(くまがい)」という名の由来が書いてある。つまり、「熊谷とは源氏の荒武者名から(くまがいなおざね)=(熊谷直実は源氏の武将で一ノ谷の戦いで武勲を立てたが、平敦盛を切った為哀れを感じて出家し草庵を結んだ。)」というのである。
 この熊谷直実なる人物は、『平家物語』を読んだり、ドラマ化されたそれを見た人には馴染みの人かもしれない。
 小生は、仕事柄、関東周辺の地図を眺めることが多い。熊谷なる地名を見たとき、いつか、埼玉県の熊谷市までのお客さんを乗せたいないと思いつつ、はて、熊谷という地名の由来は…もしかして、と調べて、埼玉の熊谷は、まさしく勇将であり悲劇の闘将だった熊谷直実に由来するのだと、何年か前に確認した…けれど、いまだに熊谷近辺へのお客さんには恵まれていない。

「万葉の想い(万葉集を中心としたサイトです)」なるサイトの「熊谷草(くまがいそう)」というを覗いてみる。
 ここには、「母衣(ほろ)」のことが説明されている。「袋状の唇弁を、源平一ノ谷の戦いで平敦盛(たいらのあつもり)を討った熊谷次郎直実(くまがいじろうなおざね)の背負っていた、母衣(ほろ)に見立てたものといわれています。母衣(ほろ)とは、鎧(よろい)の背に負って矢を防ぐために兜(かぶと)の上から馬の頭部にかけてかぶるようにした袋状の布のことだそうです」という。
高岡市立博物館」の「学芸ノート【第4回】 母衣(ほろ)武者行列」が「母衣(ほろ)」についても述べられている。「「母衣(ほろ)」とは竹籠などでふくらませた布のことで、騎馬武者が背負い、後方からの矢よけなどにした指物(さしもの)の一種です。戦国時代、母衣を着用して大将に近侍し、伝令などに戦場を駆け巡った“母衣(掛)武者”は、軍団のエリート集団でした」という。
 特に前段の。「母衣(ほろ)」とは竹籠などでふくらませた布のことで、騎馬武者が背負い、後方からの矢よけなどにした指物(さしもの)の一種」が眼目なのだろう。「竹籠などでふくらませた布」でないと、矢避けにはなりえないのだ。
「高岡市立博物館」…高岡つながりということで(高岡は加賀前田家の領だった)、早くも懐かしくなった「利家とまつ」に登場してもらおう。「ドラマ工房 利家とまつ」を覗いてみると、「信長軍団の中での出世レース」を演じていた「(前田)利家と(佐々)成政は母衣(ほろ)衆に属していた」とある。
「母衣衆とは、背中に母衣をつけた主君直属の使番たちである。主な任務は、伝令や敵方への使者、偵察や戦功の監察などであり、武功・器量ともに優れたものが選抜されたエリートたちであった。母衣は、保侶・保羅・幌とも書く。元来、具足の肩に母衣を結びつけ、騎馬で走り風により膨らませていたが、常に壮観に膨らんだ状態にするために、母衣籠(かご)や母衣串(ぐし)が使用され、具足の背の受筒(うけづつ)に挿入して指物(さしもの)のようにした」という。
 ということで、「熊谷草(くまがいそう)」の別名は、「ホロカケソウ(母衣掛け草)」というわけである。他に、「布袋草 ほろかけぐさ」とも

「母衣は、保侶・保羅・幌とも書く」という…。ここから「幌馬車」に話を展開したいという欲求もあるが、収拾がつかなくなりそうなので、自制。
 まあ、小学校の卒業間際頃だったか(不確か)「ジェイミーの冒険旅行」という「1850年のアメリカを舞台に、幌馬車隊で大陸を横断する少年の物語」に血湧き肉踊った少年時代も小生にはあったという他愛もない話だし(「H・G・ウェルズ著『モロー博士の島』」参照)、先に進もう(といっても、どっちが先か後ろか分からないが)。
 
「熊谷草 (くまがいそう)は低山帯の竹林などに生え、アツモリソウと同じく自生地の開発と乱獲により絶滅寸前であると環境庁の植物版レッドリストで絶滅危惧」が懸念されているという。
 そんな中、手塩にかけて育てている方がいるわけである。

 この頁の中で、「小さい袋のように丸まっている格好が平家物語に登場する武将・熊谷直実が背負っていた母衣(ほうい)に似ていたのが、この名の由来といわれています」とあるが、「母衣(ほうい)」と読むのか。「ほろ」ではないのか、読み方の真偽が懸念される。
 念のため、「大辞林 国語辞典 - infoseek マルチ辞書」で「母衣」を引くと、「ほろ」とあるが、時代によって地域によって読み方が違う場合もありえるので、多勢に無勢、大勢順応の小生、ここでは「ほろ」に軍配を上げておくが、情勢が変わったら、そちらにほろっと転ぶつもりである。
 ところで、上掲の辞典には「鎧(よろい)の背につける幅広の布。流れ矢を防ぎ、また、旗指物の一種としても用いられた。平安時代には単に背に垂らし、時に下端を腰に結んだが、のちには竹籠(たけかご)を入れた袋状のものとなった」とある。
 平安時代は「鎧(よろい)の背につける幅広の布」だったのが、「のちには竹籠(たけかご)を入れた袋状のものとなった」という。では、平家物語に描かれている時代の「母衣」は、幅広の布だったのか、それとも竹篭を入れた袋状のものだったのか…。分からない。

春の季語(動・植物編-種類順)」によると、「熊谷草(くまがいそう)」は、春の季語例のようである。

 最後に、思いっきりの余談になるが、「くまがいそう」と、耳で聴くと、知る人はともかく、小生など、戸惑ってしまい(最初に「くまがい」から「熊谷」を連想したってのは、見栄ではなく、ホントだけど)、ん? 「熊が居そう?」
などと聞き違えてしまうかもしれない。
 と思ったら、先人はいるもので、そんな言葉遊びのサイト(というより頁)もあったりする。
 鳥の名前では、小生、既にそれなりに遊んだことがあることを、この際、こっそり、ここに付記しておく(鳥を愛される良い子の皆さんは覗きにいかないように!)→「酔 漢 賦(鳥名篇)

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コメント

弥一さん とても面白いですね
酔漢賦 早速飛んでみましたよ(^.^) 

くまがいそう むかーし山里暮らしの幼い頃、祖父にこの花が咲いていると聞いたことがありました。
見に行った記憶がないところを見ると、聞いただけなのだと思います
祖父は、学校の先生をしていたせいか、自分の持ち山を(と、言っても狭いものですが)見回って珍しい花や気に入ったものを書き留めたりしていました。

エリザベスカラー、ワンちゃんにつけているんですね。
傷の保護などしているのかしら?

クイーンエリザベスの肖像画にこのカラーを付けた絵がありますが、あのカラーをあんなふうにするには、糊もたくさん要ったでしょうね。
あごを硬い糊付けの布で痛めたりしなかったのでしょうか。

貴族は体面の為に、色々不自由を忍んだんだ
なと思いました。

ほろのお話もこうしてうかがうと、戦場を駆け回る武将が自分をアピールするためだけではなかったのだと解りました。
何でもちゃんと理由があるんですね。

いつも、突拍子もない話をしてすみません。

投稿: 蓮華草 | 2005/05/19 22:57

蓮華草さん、またまたコメント、ありがとう。
恥ずかしいかな、本文にもあるように、小生、「熊谷草」のことは初耳。多分、実物を見たことがない(かどうかさえ、断言する自信がない)。

>エリザベスカラー、ワンちゃんにつけているんですね。傷の保護などしているのかしら?

多分、そうだと思う。ファッションとは思えないし。エリザベスカラーをつけたペットを初めて見たのはワンちゃんだった。驚いたものだった。あとで調べてみて、理由が分かって納得はしたけれど。

ほろのこと…武将は一見すると華やかだけど、それぞれの武具には意味があるのですね。でも、ファッション性も考えていたと思う。なんといっても、敵味方を問わずアピールする必要があったろうし。


投稿: 弥一 | 2005/05/20 02:31

弥一さん 初トラックバックさせていただきました 私の駄文で申し訳ありません
不都合あれば削除してください

投稿: オリオリ | 2005/05/20 21:15

ぷぷぷ。「熊がいそう」やはり出ましたか~(^.^)
一日分の文章を拝見するだけで沢山の話題が出てきて、楽しませて頂いてますが、最終的に↑のコメントってぇのもナンですが。。(^^ゞ

投稿: ちゃり | 2005/05/20 23:47

オリオリさん、TB、ありがとう。
エリザベスカラーなんて名前も、オリオリさんのルルちゃんの病気の話の中で知ったのです。というか、その記憶があったので、この名称を連想したのですね。
「私はカエルをピョンとおきたいなぁとおもった」ってのは、秀逸です。
ルルちゃんの記事にTBさせてもらいますね。


投稿: 弥一 | 2005/05/21 18:32

ちゃりさん、そう、出ました! ↓
「ぷぷぷ。「熊がいそう」やはり出ましたか~(^.^)」

余談だけど、今日の「季語随筆日記拾遺…タクシー篇」には、鉄線の話題を少々。

ホント、あちこちの聞きかじり、読みかじりなのです。
つまみ食いは美味しいし楽しい!

投稿: 弥一 | 2005/05/21 18:38

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