ムスカリの花
あるサイト(「武蔵野だより」を覗いたら、ムスカリの花の画像が。満開だという。
小生は、ムスカリという名の花があることを知ったのは、昨年の今頃だったか。これまたあるサイトでムスカリの話題が出ていたので、へえー、そんな花もあるんだ、ってな具合である。
小生のこと、せっかくだからと、ムスカリの花のことをあれこれ調べ、昨年は年間掌編百篇をノルマとしていたこともあって、早速、「ムスカリの花」なんていう掌編に仕立てたものだ。
勿論、好きな猫を話に絡めて(同じ頁に、「海辺の猫」なんていう掌編も載せてある)。
さて、ムスカリの花は、地域や場所によっても違っているのだろうが、ほぼ今頃が満開の時期のようである。
では、ムスカリの花は四月…少なくとも春の季語なのだろうか。
[断っておくが、掲げた画像は、決してムスカリの花ではありません。今朝、未明に撮った八重桜(?)なのです。]
ネット検索してみたら、「K-SOHYA POEM BLOG」の「2005/03/28のBlog ムスカリの傍に置ける愛の詩集湖より吹ける風はむらさき── ─────木村草弥 [ 17:02 ] [ 季節の一首鑑賞 ] 」をヒットした。
ここには、「ムスカリは小アジアのアルメニア辺りが原産地と言われている。学名のMuscariはギリシア語のmoschos(麝香)に由来するという。強い香りから来ているのだろうか」など、いろいろ書いてあるが、小生の疑問にも答えてくれている。
その前に、ムスカリの花のちょっと変わった形のことを少々。
同上サイト主さんは、自らの歌「ムスカリは紫の彩(いろ)に咲きいでて 小人の国にシャンデリア点(とも)す」をも(第一歌集『茶の四季』(角川書店)から)引き合いに出し、「ムスカリは丁度シャンデリアをひっくり返したような形をしており、私は、それを「小人の国のシャンデリア」と表現してみた」
冒頭のサイトのコメントでは、「ムスカリって、別名“グレープヒアシンス”って言うそうですね。ムスカリの花は、ぶどうの実が逆さまになっているように見えます」などと表現されているのが面白かった。小生は、勝手に「ブドウの房が逆さまに」などと言い換えてみたりして。
と思ったら、「ムスカリの花」という掌編の末尾に参照として示したムスカリの花の画像の説明文の中に既に、「濃い青紫の花がつきます。ブドウの房を逆さにしたようにも」云々と書いてあるのだった。
ムスカリの花は、青紫色あるいは濃青色のものが好まれるようだが、白色のムスカリの花もあるようだ。
白色のムスカリを見ていると、別名をキミカゲソウ(君影草)とも言うスズラン(鈴蘭)が、ふと、思い浮かべてしまったりする。
花の形というのは、実に想像を絶するものがある。好き勝手に花の形を描いてみなさいと言われたとして、どんなに奔放に、想像力の限りを尽くして描いてみても、現実の世界にある数知れない花々の形状の、ほんの一端にも触れ得ないかもしれない。
大急ぎで付言しておくが、鈴蘭は、夏の季語なので、小生の連想にやや無理があることは承知しておくべきかもしれない。
さて、話を戻す。「K-SOHYA POEM BLOG」によると、「ムスカリはカタカナ語であり、季語としての市民権を得て日が浅いので、詠まれている句は多くないので、ここに紹介するのは控える」とある。
ということは、小生が知らないだけで、市民権を得てからは日が浅いとしても、ともかくも「ムスカリ」は季語だということか。
なるほど、四月の季語には、「チューリップ、ヒヤシンス、シクラメン、スイートピー、シネラリヤ、アネモネ、フリージア」などといった、小生でも知っている馴染みのある花々が並んでいる。
その点、ムスカリは、小生が殊更、花に疎いせいもあるのだろうが、やや知名度は低いのか。
ん? でも、シネラリアって何? オイラ、知らねいや。
早速、ネット検索して調べると、「シネラリア(cineraria)と読むのが正しいらしいですが,どうも名前がよくないので,花屋さんではサイネリアといっています」とあり、「和名は,フウキギク(富貴菊),フキザクラ(富貴桜)などともいうようです」とか。画像を見て、ああ、見たことあるある、である。
見たのは、「植物園へようこそ!」の中の、「サイネリア」の項である。
これまた小生が勝手にファンになっている「四季の花 花にまつわる話」を覗かせてもらう。
「2005-03-20 ムスカリ テーマ:3月の花」では、ムスカリについて、いろいろ教えてくれるが、他の花だと俳句の季語では夏だとか春だなどと付記してあるのに、触れられていない。
疑問を抱きつつも、とりあえずは、「仄かなる香りを秘めて結びたる 紫の房鈴なりにして」とか「小さくも香りを秘めてムスカリは 君を誘いし春の鈴の音」といった歌を鑑賞してみようか。
「★俳句レロレロ!俳人 亜々子の俳句ドップリ一日一句生活★」の中の「Lazy Diary 2004年5月」(May 2 , 2004 Sunday)を覗いてみる。
「ムスカリの紫の鈴風揺らす」という句がこの日の日記の冒頭に掲げてある。
「特に何もない、一日。病気の具合は良くない」なんて書いてあるから、この頃は体調が悪かったようだ。今は、どうなのだろう。
御本人の解説が付せられているので、失礼ながら勝手に改行を弄る形で転記させてもらう:
今日の季語はムスカリ。春の句でいいと思う。生け花歴が長いせいか、どこに行っても花に目が行ってしまう。ムスカリは小さな紫の小花が穂状に集まって一つの花となっている、可憐なもの。風がムスカリに吹いているのか、ムスカリが風を起こしているのか。事実自体は当然、前者なんだけど、ムスカリの花の揺れ具合といったら独特でふわり、としながらもフルフルと揺れたりと動きから目が離せなくなってしまう。不思議気分になってしまって作句。
(転記終わり)
「春の句でいいと思う」と、若干のためらいを残しつつも、「今日の季語はムスカリ」ということで作句されている。
「小さな紫の小花が穂状に集まって一つの花となっている」ことをこの方は、「紫の鈴」という表現に集約させている。この点が、この句のポイントなのだろうか。
俳人 亜々子さんのこの句、鈴蘭(君影草)をつい連想してしまった小生は、「紫の鈴」をも、つい、無意識裡に鈴蘭の遠いイメージが反映しているのかな、なんて、余計なことを思ってみたり。小生もしつこいね。鈴蘭は夏の季語だって上でも書いたのに。
ネット検索していたら、「雨の日はムスカリうつる水たまり 舞 十一歳」なんていう句を見つけた。
「子どもの俳句誌・楽しく俳句と遊ぼう 俳句十代」の「2003/5 「俳句鑑賞 ~石ならべ草ならべ~」」の中にあったもの。
評釈には、「「ムスカリ」は、花壇に咲いているのをよく見かけます。青紫色などの花(小筒状花)で、二十センチ位の背丈のかわいらしい花です。雨上がりの水たまりに、ムスカリと太陽がうつっている絵がかいてありました」とあるが、どんな絵だったのか、見てみたかった。
水たまりに映るムスカリ。雨の日とある以上は、まだ、雨が降っているという光景を思い浮かべるべきなのか。とすると、水面のムスカリは波紋に揺れ、あるいはちょっと形を崩したりして、青紫色の花は一層、幻想味と鮮やかさを増して感じられたのかもしれない。
ついでながら、「2003/5 「俳句鑑賞 ~石ならべ草ならべ~」」には、「たんぽぽのふわふわはたんぽぽのおじいちゃんだね 里香 三歳」なんていう句も載っている。凄い!
小生の三歳の頃って、どんなだったろう。いやいや、比べるのはよそう。人は人だ。
ああ、でも、「たんぽぽのふわふわはたんぽぽのおじいちゃんだね」とか「雨の日はムスカリうつる水たまり」などといった句を詠んでしまった今は、我が非才を痛感させられて、憂鬱になってしまった。
この上、俳句はムスカリい、などと書くと、沈鬱そのものだ。
もう、いっそのこと、グレちゃって花の色香に溺れてしまおうか。
ムスカリの花の色香に惑いたし
宵闇はムスカリ出でし襖陰
寄り添わん言い寄ってみてもムスカリか
ムスカリの目に青々と命かも
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コメント
TBありがとうございます。
たくさん転記していただいて恥ずかしいような。
ムスカリ、こちらも満開です・・
洋物っぽいけれど和風の草木とも調和する、
独特な雰囲気が大好きです(^^)。
投稿: aako | 2005/04/15 21:20
aakoさん、来訪、ありがとう。
ムスカリは春の季語になってしまっているのかどうか、なっているとしても日が浅いのか、句作の実例は少ないようです。
勝手ながら、長い引用をさせてもらいました。小生の拙い文章よりも、多くの人の文章での説明を直接、読んでもらうほうがいいと思うので、こんな形を取らせてもらっています。
情報、助かりました。
投稿: 弥一 | 2005/04/15 23:19
私の記事をご紹介くださいまして、有難うございます。ネット上に発表した記事は、あちこちの検索サイトに載るので、間違ったことは書けません。間違いがあればお教えください。
また、ご来訪ください。
では、また。
投稿: sohya | 2005/04/16 07:26
sohya さん、このたびは、いろいろ勉強させていただき、参照させていただきました。
日々、いろんな方にいろんなことを学ばせて戴いてます。
宜しければ、時には覗いてみてくださいね。
投稿: 弥一 | 2005/04/17 16:22