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2005/04/10

黄砂…地球環境の主役?!

 黄砂というと、野暮でミーハーな小生は、工藤静香が歌ってヒットさせた「黄砂に抱かれて」を思い出すくらいだが(ちなみに、中島みゆきには「黄砂に吹かれて」という曲があるとか。小生は聞いたことがあるのかどうか…)、富山で生まれ育った小生、それと気付かずに、黄砂の洗礼を受けていたのかもしれない。
[(筆者注:)工藤静香の曲名で、小生の勘違いがあります。コメントを参照してください。]
 そもそも春先になると、雪解けとなり、春の嵐が吹き荒れると、何しろ当時は道路も砂利道が多かったわけで、学校の校庭の土、田圃や畑の土埃が舞っているのだくらいしか、認識がなかったと思う。
 晩生(おくて)の小生が「黄砂」なる概念をぼんやりとでも捉えるようになったのは、二十歳以降のことだったような。
「黄砂」は俳句では春の季語扱い。黄砂は、たとえば南島だと、「大陸から麦の黒錆病菌が飛んで来るので、農家では、黄砂を忌み嫌ったという」が、逆に言うと、それだけ栄養素が豊富だということだろう。
 珊瑚礁の島がいつの間にか緑豊かな南国の楽園に生まれ変わるのも、島によっては黄砂が長年のうちに堆積し、その栄養タップリの土壌があって初めて、花粉が飛来し土着するし、他の微生物たちも集まり、やがて鬱蒼たる森と化するのだとか。

 さて、以下は、例によって、書評風エッセイというか野暮な内容になるので、あしからず。

 過日、ハナ・ホームズ著『小さな塵の大きな不思議』(岩坂泰信監修、梶山あゆみ訳、紀伊国屋書店)を読了した。
 本書に啓発され、既に若干のことは書いたが、得られた知見は多く、できれば特に関心を引いた箇所だけでも引用しておきたいが、それでもことによると本書の大部分を転記するはめになりそうなので、断念。
 ただ、そうした知識もさることながら、まだ、肝心な点に触れていないので、本書を図書館に返却する前に、要諦と思われる部分だけ、簡単に記しておきたい。
 その前に、小生には初耳のターム(専門用語)をメモしておきたい。
 それは、「パーソナル・クラウド」という概念である。「家の中で、塵がとくに濃くたちこめている場所」というのは、実は人間なのである。花粉症騒ぎもまだ終息には至っていないが、家庭(会社や店舗など)に花粉症の原因とされる花粉を持ち込まないため、建物の中に入る前には、着ている物をよく払うべし、とか、靴は日本では玄関で脱ぐからいいようなものだが、それでも、玄関に入る前にドアの外で靴の裏を拭うべしとか、ウール系の生地は花粉を吸い込み溜め込み易いから、なるべく花粉がつきにくい素材(生地)の衣類を選ぶべし、などと言われたりする。
 要は、人(ペットや持物)にこそ、花粉が附着しやすいからだが、同じ事が屋内でも現象しているということだ。
 モノを掴み叩き運び割りくっ付け選び磨き擦り開き…、そのどの動作も埃を巻き上げるか、発生させる。
 ここまではパーソナルというより、家庭内では余儀ない塵、埃ということになる。
 が、問題はこの先にある。
 こうした家庭内での事情には更に個人に結びついた、まさにパーソナルなクラウド(塵や埃、匂いなど)が加算される。つまり、体臭であり、化粧しているならその人の化粧品であり、脱臭剤(あるいは消臭剤)、柑橘系の香り、アロマセラピーの成分などがその人に付き纏う。
 ここにさらに、人の皮膚の欠片が大量に加わる。
「ひとりの人間が吸い込む塵の三分の一は、パーソナル・クラウドの塵」なのだという。「ひとりの成人の体からは、一日におよそ五千万個の皮膚のかけらがはがれると見られている」というのだ。
 ただし、その大部分は、浴室の排水口、シーツの繊維、ソファのクッション、電灯の傘、ヌイグルミのモコモコなどに消えていく。人が一日に吸い込む自分の皮膚のかけらは70万個くらい」と研究者は見積もっている。
 ところが、じつのところ、皮膚のかけらさえもパーソナル・クラウドの一割にすぎず、そのクラウドの主成分は分かっていないのだという。

 さて、「要諦と思われる部分」などと大袈裟な表現をしたが、急いで肝心な点に移る。
 本書の解説は、岩坂泰信氏が担われている。同氏の解説を参照する。黄砂のことは本書でも大きく採り上げられているが、北アメリカやヨーロッパの視点から記述されている気味があるとのことで、解説では氏の補足説明がほどこされているわけである。
「地球環境の分野では、黄砂はいまや世界の注目を集めている」という。
ACE-Asia」の研究(アジア地域でのエアロゾルの化学組成と物理的特性を明らかにするための国際協同研究計画(ACE-Asia: Aerosol Characterization Experiment in Asian Region))で、「地球温暖化を正確に理解する上で、黄砂が果たしている役割を解明する必要が強く認識されるようになった」というのだ。
 ここでは簡単に書いておくが、大気中の炭酸ガス濃度が上昇してきた結果、気温が変化してきたとするなら、コンピュータ・シミュレーションの結果、今頃は現実離れした高温の状態が出現しているはず、となったのである。
 が、実際は、確かに気温の上昇は見られるが、計算され予測された数値とはまるで違う。 
 何故か。どうも、炭酸ガス(二酸化炭素)濃度以外の要因が地球温暖化の傾向を左右しているらしい、それが大気中のエアロゾルにあるらしいと分かってきたという。
 前にも書いたが、「エアロゾルとは- 気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子をエアロゾル(aerosol)といい」、「エアロゾルは,その生成過程の違いから粉じん(dust)とかフューム(fume),ミスト(mist),ばいじん (smokedust) などと呼ばれ,また気象学的には,視程や色の違いなどから,霧(fog),もや(mist),煙霧 (haze),スモッグ(smog)などと呼ばれることもあ」るという(「日本エアロゾル学会」の中の「エアロゾルとは」より)。
 このエアロゾルも未だ、研究がこれからという対象だが、ただ、アジア地域で硫酸塩エアロゾルに加えて「黄砂」が、大変重要な役目を果たしていると予想されるようになったのである。
 この黄砂、「大気中を浮遊するあいだに、太陽放射を散乱したり吸収したりすることで地球の温暖化を加速したり緩和したりする。このことは、程度の差こそあれ、ほかのエアロゾルと本質的には同じである」
 が、「興味深くもあり話をややこしくしているのは、この黄砂粒子が大気汚染物質である硫黄酸化物や窒素酸化物を吸収するらしい」のである。
 黄砂が汚染ガスの何割かを吸収することで、「黄砂の表面ではさまざまな化学反応が生じて、やがて表面は反応生成物によって覆われるに違いない」…よって、「汚れた」黄砂と「汚れていない」黄砂が生まれ、それぞれに太陽放射に対する効果も異なってくる。
 単純に炭酸ガス(二酸化炭素)を減らせば温暖化を防げるというものではないこと、エアロゾルや黄砂がある程度、温暖化の亢進に加速や緩和の働きをしているらしいことがあり、地球温暖化の問題は別の視点から見られ始めているのである。
 さらに、解説に簡単に触れられているが、黄砂など砂塵は温暖化以外にも海の微生物の活動にも大きな影響を与えている話など、興味深かった。黄砂は雪虫の生息にも資しているとか。
 黄砂が地球環境にどのような影響を与える可能性があるかについては、岩坂泰信氏著の『環境学入門 大気環境学』(岩波書店刊)があるとか。
 それにしても、素人ながら驚いたことは、日本など季語に「黄砂」があるほど馴染み深い黄砂なのに、「日本で黄砂を対象とした環境科学分野のプロジェクト研究が本格的に始まったのは2000年以降です」という現実である。
 いずれにしても、黄砂は地球環境問題の主役の一人に踊り出つつあることは間違いないようだ。


[ 黄砂はアルカリ性の粒子なので、近年問題になっている酸性雨を中和する役割を果たしている面もあり、これからますます脚光を浴びそうな研究対象であるようだ。 (05/04/19 付記) ]

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コメント

おっとびっくり。
黄砂ってそう言う役目も果たしていたんですね。
地球が沙漠化した結果飛んでいるものっていうイメージがあったんですけど。

さて、工藤静香さんの歌う『黄砂に吹かれて』は、
中島みゆきさんの曲です。
つまりは、同じ曲ってことですね。
でも、工藤さんの歌うそれと、本家本元の歌う歌は
別物なんじゃないかと思うくらい、印象が違います。
好みなので、どちらがいいかは、それぞれでしょうが、
私は、断然中島みゆきさんの歌う『黄砂に吹かれて』のほうが、
好きです。はい。

投稿: Amice | 2005/04/10 16:41

Amice さん、ご指摘、ありがとう!
小生、勘違いしているんですね。工藤静香が歌ってヒットさせた曲は「黄砂に吹かれて」で、中島みゆき&後藤次利の曲。
小生、勝手に「黄砂に抱かれて」って覚えていた。で、ネットで検索したら、ちゃんとこの曲名で出てくる…。これがネット検索の怖いところだ。間違った言葉や名前でも情報が出てくるんだから。
改めて調べてみて、工藤静香の曲で、『黄砂に吹かれて』もいいけど、『MUGO・ん…色っぽい』とか、それから『抱いてくれたらいいのに』が好きだったことを思い出した。
しかも、彼女もおニャン子クラブ出身だったんだね。おニャン子クラブが全盛の頃、会社の倉庫で有線放送では、よく懸かっていたっけ。国生さゆり/城之内早苗/渡辺美奈代/生稲晃子/新田恵利…。プロデュースした秋元って天才だね。この間、結婚した城之内早苗の歌は大好きだ。

投稿: 弥一 | 2005/04/10 19:39

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