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2005/04/01

万愚節(ばんぐせつ)

「万愚節」とは、つまりは、「四月馬鹿」であり、いまや「エイプリル・フール」という言い方のほうが一般的のようである。謹厳実直をもってなる小生には縁の薄い行事であり季語の一つである。
 今日、4月1日からは、個人情報保護法案が施行されるし、銀行でのペイオフも関係者も昨年から慌しく動いていたようだし、高速道路での二輪車(オートバイやスクーター)の二人乗りが原則解禁となるし、新潟県の山古志村が新潟市と市町村合併ということで合併となるが、我が富山市も大きくなる。その一方、山古志村(の名)が消えるように大沢野町・大山町・八尾町・婦中町・山田村・細入村などの名称が消えてしまう。
 なんだかウソのような、ウソであって欲しいような、けれどホントの話だ。
 目出度いのか、不幸なのか、よく分からない話でもある。

「万愚節」は外来語の感が強い。英語からの訳なのだろうか。が、「万愚節」を英訳すると、「All Fools Day」となる。
 一方、「四月馬鹿」を英訳すると、「April Fool」となる。決して、「エイプリル・フール」だからって、四月の雨というわけじゃない。
 一体、「エイプリル・フール」は、何処の国の風習が導入されたのだろうか。
 あるサイトを覗いたら、もとはフランスだともいうが、本当だろうか。また、『日本国語大辞典』には、昭和三十一年の『母郷行』という句集からとして中村草田男の「銅像の片手の巻物万愚節」という句が載っていたというのだが、信じていいのだろうか。
 どうも、テーマが「エイプリル・フール」だけに、何を読んでも眉唾モノに思えてならない。これでは、真剣に書いている方も辛いだろうが、読むほうも疑心暗鬼なのだから、どっちもどっちなのである。
 というのも、「「銅像の片手の…」の句をネット検索しても、上掲のサイトしかヒットしないのだ。ということは、このサイトだけの情報なのか、それとも全くのデッチアゲなのか、判断が付けかねるわけである。

 権威のありそうな「日本インターネット エイプリル・フール協会(JIAFA)|ホームページ」を覗いてみる。が、メニューを見ているだけで眩暈してしまったので、さっさと画面を切り替える。
 さらに権威のありそうな(小生は権威と金力に弱い)「Stanford Japan Center-Research」の「Column 万愚節」を覗いてみる。書き手の今川拓郎
氏は、「スタンフォード日本センターフェロー 総務省情報通信政策局総合政策課 課長補佐」という肩書である。小生はこの肩書に目が眩む。
 冒頭に、「何を隠そう、私は四月馬鹿だ。4月1日の夜10時生まれ。あと2時間遅かったら、学年が一つ下だった。そう、新しい学年は何故か4月2日生まれから始まる」とある。生まれた月日など、、何も隠す必要も憚る必要も、ない。
 そうだった、「新しい学年は何故か4月2日生まれから始まる」というのは、4月1日に限ってよく出る話題の一つである。
 何故に、「新しい学年は何故か4月2日生まれから始まる」のかは、続いて、「年齢計算ニ関スル法律(明治35年法律第50号)」の規定により算定した「満年齢」との絡みで説明されている。
 小生自身、「数え年」と「満年齢」の周辺に潜む問題を「早生まれ」という現実と絡めて採り上げたことがあった。ここには結構、厄介な問題もあったりするので、「早生まれの意味、生きることのなつかしさ」という拙稿を覗いていただけると、ありがたい。
「万愚節」の頁の末尾には、「俳句の世界では4月1日は「万愚節」。興趣に富んだ季語である。もともとは西洋のAll Fool's Dayの訳語で、11月1日のAll Saint's Day(万聖節)に対比しての称という。聖人の日があるなら、愚人の日もという訳だ。「人に騙される愚を戒める日」という解釈もあるが、「軽いウソをついて他人を騙してもよい日」と解釈した方が楽しい」などと書かれてある。
 あれれ、これでは、「April Fool」という言葉が出てこない。もしかしたら、「April Fool」があるってこと自体が「April Fool」なのか。
 我が探究は続く。
「万愚節」というと、丸山一夫句集『万愚節』なるものがあるというが、小生は読み応えがあったのだが、その真偽の程は、関心のある方が自ら確かめてみるのが良かろう。
 そもそも、本来の「万愚節」とは、「"逆さまの世界"。道化師が偉い席に座って、"無礼講の王"と呼ばれる。給仕たちは、色々な仕事を逆さまにする。一番どうでもいいテーブルから給仕し、主賓席を最後にまわしたり、人に背を向けてお礼したり・・・。人々は鏡文字で字を書いたり、空中から炎をつかみとったり、犬に歌わせたりと、本来の秩序からひっくり返ったようなことをしたらしいよ」というが、これも、小生、実際にそうした光景を実見したわけではないので、さも、見てきたような振りを装うだけにして、先に進む。
 ただ、先といっても、どっちが先なのか分からない。もしかしたら後戻りしているやもしれない。でも、そんな細かなことに拘っていたら、季語随筆などやっていられるはずもない。

「万愚節」という言葉の織り込まれた句を探していたら、「人間に尾の残りたる万愚節」(角川春樹)の載っている同じ頁に、「時雨てよ足元が歪むほどに」(夏目雅子)が。
 そうだった。かの憧れの夏目雅子さんは、句を吟じる方だった。「恋猫やなよやかに泣く間夫の宿」や「結婚は夢の続きやひな祭り」、死の40日前の作品に「間断の音なき空に星花火」などがあるという。
 夏目雅子さんの人間的な魅力に迫る一冊ということで、『優日雅 (ゆうにちが)~夏目雅子ふたたび』(森英介 /小達スエ著、実業之日本社刊)なる本があるらしい。
 この本には、夏目さんが残した全34句が載っているとか。
 句に関連するということで、その第3章、第4章、第6章の目次だけを示しておく:

第3章 【雅子と俳句】 ・・・意外と知られていない、雅子の趣味。山頭火に傾倒し、自由奔放な句を詠んだ・・・   証言者 浅井慎平氏、藤田弓子氏
第4章 【雅子と海堂(雅子の俳号)】 ・・・句から詠める 女優、気品、清潔感・・・証言者 矢吹申彦氏、福永法弘氏、高橋治、金子兜太
第6章 【元夫・伊集院 静の影響】 ・・・俳句を詠む時の感性 女優ではなく、女性としてのたしなみは彼から・・・・

「黛まどか「17文字の詩」2002年4月の句」にも、「万愚節」という言葉の織り込まれた句が見つかった。「また同じタイプに夢中万愚節」だって。彼女のような素敵な人に惚れられる男って、どんな奴なんだろう。嫉妬、シット!

 ネット検索していると、八木健の編集した面白俳句選集『万愚節』(本阿弥書店)なる本もあるらしいと発見。
水曜通信 ケイタイに出会いのメール四月馬鹿」を覗くと、「4月1日はエイプリル・フール・ディといって、相手をだましたり、驚かしても良いとされる風習。欧州起源の風習で、日本には大正年間に伝わった」といった説明と同時に、「万愚節」絡みの句が幾つか載っている。
「ケイタイに出会いのメール四月馬鹿」は今の風俗のようだし、「万愚節恋うちあけしあはれさよ」は、確かに切ないね。

俳句教室 春の季語」の「季語 ≪エイプリルフール≫」の項には、網羅的に書いてあり、助かった。
「エイプリルフールは、もと春分の祭の最終日のことで、1596年にフランスのカルル九世が暦を新しくした際に、それまでの暦を重んじる人が、この新年はなかったことにする、ということから始まったとも言われ、イギリスの、コングリーヴの、「年老いた独り者」という脚本に書かれたことから広まったと言われているそうです」とか、「インドの仏教徒たちが年に一度、一週間の座禅をし、悟りを開いても、終えたあとの、四月一日になれば、頭がボーっとして、もとの木阿弥になっていることから、それを揶揄する行事が、ヨーロッパに伝わった、という説もあるそうです」とも。
 さらには、「中国では、衆愚節、万愚節、といい、日本では、江戸時代、不義理の日、と読んでいたそうです」ともある。
 最後に、「因みに、日本語でエイプリルフール、と言っているのは、英語ではApril Fools' Dayのこと」というのは、紹介済みだとして、「April foolは今日、嘘に引っかかった人のことです」というのは、なるほど! である。

 まあ、いずれにしても、ウソをつけるのは人間だけのようだから、ウソをつくというのも、ある意味、人間の証明の営為なのかもしれない、などと、自らのウソ癖を正当化するのも、開き直るのも困る。
 えっ、サルや犬や猫だって、失敗やドジはするって? 失敗やドジの類いは、人間はもっとやっている。その点ではサルも犬も猫もキツネさんだって、人間には敵いっこない。それでも、所詮は、ドジなどについては人間と動物たちとは、スケールや頻繁さの度合いの違いということになりえるかもしれない。
 が、犬も猫もウソは吐けない。もし、私はウソを吐きません、なんて言う人がいたら、その人は一番の大嘘つきということになる。
 ウソを言わないためにはどうしたらいいか。本当のことを言えばいい…のだが、それがうまくいかない。となると、沈黙は金ということになり、世の中、静かになっていいが、寂しくもある。
 嘘吐きは泥棒の始まりというのは、まことしやかだが、嘘吐きは人間の証しというのは、悲しい現実である。が、愛情のあるウソであってほしいとは思う。けれど、ひたすら保身のためのウソもあったりする。ウソのためのウソもあるようだし。そのうち、自分でも何がウソか真実かが見えなくなる。
 嘘のない世の中であってほしい…。けれど、嘘のない社会が実現した暁には、この世は消滅しているのかもしれない。少なくとも人間という種族の社会は。

 ……なんて、偉そうなことは、エブリデー・フールの小生が言うようなことじゃないね。

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コメント

うふふ。人生は、茶目っ気もなくっちゃ面白くありません♪
英国風のブラック・ジョークはあまり好きではありませんが、
ほっと笑える冗談は好きです。
ってか、サプライズ!が好きなのかな。
偶然知った誕生日にいきなりカード贈ってみたりとかね。

もう、おばちゃんと呼ばれる年齢になってさえ、
いたずら好きの困った私です。σ(^^;)

投稿: Amice | 2005/04/01 17:39

早いものでもう4月。
エイプリルフールの話を聞くと春だなぁ~って感じます。
嘘をついても良い日、というより
せめてみんなで大笑いでもしましょうよ!
そんな意味合いもあるのでしょうか?
ささやかな冗談で笑い合える、そんな風景が最近少なくなったなぁ~

投稿: マコロン | 2005/04/01 18:11

Amice さん、こんちは。
小生、この日記の冒頭に書いたように謹厳実直な堅物。なので、あそこで読んだことは、びっーーーーくりしました。ホント、罪な方です。ホント、楽しい方ですね。
後に引き摺らない言葉や悪戯の遣り取りを楽しめるのは、人間の一番の楽しみ事なのかもしれないですね。
自分にはそのセンスがないだけに、Amice さんのような方が畏敬の念で見ちゃいます。

投稿: 弥一 | 2005/04/02 12:52

マコロンさん、こんにちは。
時代が経つにつれ、せちがらい世相に。競争に自己責任に目先の実績に。日本の子供も競争社会で偏差値や内申書に雁字搦め。日本の子供は世界の中でも一番、国を愛する気持ちも、宿題以外の自主的な勉強をする意欲も、日本や自分の将来への情熱や期待も、友が困った時に助ける気持ちも、あるいは友達に自分の窮状を訴える気持ちも、何もかもが低かった(薄かった)とか。
みんな、孤立している。家族や友人も含め、表面上は和気藹々としているけれど、それは便宜上のものでしかなく、逆に神経を摩り減らして、孤独を深めていく一方のようです。
教育は大切ですが、一番、大切なのは日々を心底から友や家族らと楽しむこと、楽しめることだと教えて欲しい。読書にしても音楽にしても会話にしても、豊かな時の過ごし方の一つとして楽しんでもらいたい。

投稿: 弥一 | 2005/04/02 13:00

コメント&トラックバックいただいたので、やって
まいりました。
まさか、川柳を扱うブログで「無精庵」が有るとは
少々驚きです。本当に奇遇ですね!
私のブログは、まだ試験的なブログで手探り中です
し、こちらほどの文書の情報量はありませんが、同
じ言葉をブログ名に冠するのも何かの縁。以後お見
知りおきを!

投稿: 殿下信平(HN) | 2005/04/02 19:43

 殿下信平さん、来訪、ありがとう!
「無精で気まぐれな、グータラおやじが、川柳で日常を綴ってみたり、朗読のまねごとしてみたり、作詞・作曲もかじってみたり。。。今のところのテーマは”混沌!!” 」
 テーマと姿勢(?)が共感持てます。
 小生も仕事がオフの日は、ひたすらグータラしています。でも、朗読の真似も、作詞・作曲などをトライしているのですから、小生が安易に共感するなんて言っちゃいけないのかな。
 知り合えたことを奇縁として、これから交流を楽しめたらいいですね。こちらこそ、宜しく!

投稿: 弥一 | 2005/04/02 20:29

「エイプリルフール」で、何かコメントを、と思ったのですが、「早生まれの意味」を読んできました。

幼児も3歳くらいまでは、目覚しい成長がありますね。それも 実は個人差があるんだけど、育児書に振り回されると、そこで親はまた 悩んだりあせったりする。
それから後は 少しずつ脳や運動機能の発達は緩やかになるし、「個性」とか「遺伝」とか「環境の違い」とか色々なもので差が出て当然なんですよね。

他の子と比べて色々心配したり、あせる自分に「早生まれだから・・」と言い聞かせてるお母さんの気持ち、解ります。
自分の子が見劣りする、と思っての「言い訳」ということじゃなく・・ね。(*^。^*)

投稿: nazuna | 2005/04/04 11:58

お久しぶりです。
TBありがとうございました。
万愚節っていうんですねー。知りませんでした。
「逆さまの世界」っていうのもすごいですね。もしエイプリルフールが、「なんでも逆さまのことを言わなくちゃいけない」っていう日として普及してたら、世の中かなり混乱しますよねー。ちょっとした会話でも訳が分からなくなりそう。でもウソをつくよりそのほうが面白そうかも(笑)

投稿: ミメイ | 2005/04/04 15:27

nazuna さん、目聡い。「早生まれの意味」に足を運んでくれて、嬉しい。
満年齢と数え年には、なかなかの意味がある。
それはともかく、「早生まれ」という表現に親としての言い知れぬ思いがあるんですね。ガキの頃には到底、分からなかったけど。nazunaさんは、親になられて日々、実感されている。小生には、きっと、本当のところは分からないのかもしれない…。

投稿: 弥一 | 2005/04/04 19:53

ミメイさん、来訪、ありがとう!
小生は、在宅の日は、日に二度はこっそりお邪魔してます。欠かさず読ませてもらってます。遊び心、たっぷりですし。
「逆さまの世界」をエンジョイできるような心のゆとりが社会にあったら、全く違う世界であったでしょうね。思うに、「逆さまの世界」パーティなどを何処かの会場を借り切ってやってみるとか、あるいは芸能人のゲームとしてやってもらうとかしたら、面白そう!

投稿: 弥一 | 2005/04/04 19:56

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隣町へ向かうワイン畑の小川の畔の草叢に、と言えばエープリール・フ−ルとなる。{/kuma_wel/} ベーア・ラウフ(ベアー・ガーリック)が市場に出ている。春... [続きを読む]

受信: 2005/04/03 21:27

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