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2005/03/29

春の野…愛・地球博

「春の野」とは、春3月の季語であり、〔春野〕〔春郊〕〔弥生野〕といった関連する語がある。意味合いは、字義から予想される通りのようで、「草萌えの始まった野、野焼きを終えた野、すみれやれんげの咲く野、ひばりの声高く鳴く野、いろんな春の野が想像できます」とあるのも、素直に受け止められる(「季節のことのは・季語」より)。
草萌(くさもえ)」や「青き踏む(踏青)」もニュアンス的に近いようだ。
 ついでながら、「青き踏む(踏青)」の項では触れることができなかったが、「★俳句レロレロ★ AAKO 's lasy days」の中の、「今日の俳句 2005.3.24」によると、「陰暦三月三日に野宴を催し、青々とした草を踏む中国の行事が元なのだけどその日に限らず、春の野を散策することを言う」のだとか。
 この頁では、「難転ずる石有り薩摩の青き踏む」という句が掲げられていて、「難転ずる石」はこれ、という画像も見ることができる。

「春の野に」と来ると、万葉集の中の有名な歌をすぐに思い浮かべられる方もいるだろう。そう、山部赤人の歌である:

 春の野にすみれ摘みにと来し我そ
       野をなつかしみ一夜寝にける   山部赤人 巻八 1424

 小生の語源探索癖で、「スミレの語源は大工道具の墨入れ(墨壺)の形に似ていることに由来するそうだ」などと注釈を加えておくのは、野暮だろうか。
 
 あるいは、「春の野」というと、百人一首にも加えられている光孝天皇の歌を思い起こさずにはいられない方もいるのだろう:

 君がため春の野に出でて若菜摘む
         我が衣手に雪は降りつつ    『古今集』春・21

 前にも紹介したが、「季語の風景|草萌」の写真は、草萌えの光景であり、「春の野 新たな命の営み」の画像でもあったのである。

 いずれにしても、「春の野」を句に織り込むには、こうした伝統を踏まえておくのは当然として、あからさまにではなくとも、どこかしら滲ませるうように句を吟じるほうがいいのだろう。
 こう考えると、なかなかに難儀である。

 さて、小生が「春の野」を表題に選んだのは、春の野の光景も素晴らしかっただろう、愛知県瀬戸市にある「海上の森」(かいしょのもり)で今、まさに、「愛・地球博」が開催されているからである。
 その会場を、どんな気分で散策したらいいのだろう。

「愛・地球博」が3月25日から9月25日までの予定で開催されている。
 それとも「愛知万博」と呼ぶべきなのか。
ホームページを覗くと、「公式入場者数:46,852人(3月29日11:00現在) / 総入場者数254,350人」などと誇らしげに表示されている。この数字、多いのか少ないのか、小生には判断が付かない。聞くところによると、期待していたほどではないという(見込みの半分?!)。が、マスコミなどの報道は、特定の出し物に偏っていて、そういった会場は長い列となり、それほど人気のない会場とのギャップが大きいようだ。
 並ばなくても入れる、且つ、興味深いテーマの会場もあるはずだし、マスコミはそういったパビリオンや会場などを発掘して欲しいと思う。人気に便乗して、決まりきった会場ばかりを宣伝するのじゃ、つまらないではないか。
 いまさら、テレビやラジオなどのマスコミに、「海上の森」(かいしょのもり)の問題を採り上げてもらおうなどという期待もないし、せめて、もっと、複眼的に博覧会のイベントを紹介してもらいたいものだ。

 といいつつ、小生は、当分、博覧会会場へは足を運べそうにないのが残念である。自分なりに紹介しようにも、手も足もでない。
 個人的には、「“5300年前から来た男「アイスマン展」”の開催について 長久手愛知県館「地球タイヘン大講演会」の名脇役アイスマンの全てがわかる!」というテーマが興味深い。
「1991年、アルプスの氷河の中から約5300年前の人間のミイラが発見された。通称「アイスマン」である。アイスマンは5300年の間、氷の中に閉じ込められていたが、近年の地球温暖化により氷河の融解が進み、その姿を現した」という。
 十年ほど前、コンラート・シュピンドラー著の『5000年前の男―解明された凍結ミイラの謎』(畔上 司訳、文春文庫版あり)を読んで、「1991年、オーストリアとイタリアの国境近く、標高3210メートルの地点で、凍結したミイラが完全な形で発見された。紀元前3300年頃の男性で、携帯品や服の断片からも興味深い事実が明らかになっていく。いったい「彼」はどこから来て、何をしようとしていたのか?推理小説を読むような謎解きの面白さが横溢する壮大な古代ドラマ」といった内容にワクワクしたものだった。
 が、「氷の中に閉じ込められていたが、近年の地球温暖化により氷河の融解が進み、その姿を現した」という点が本書の中に書いてあったのかどうか、分からない。
アイスマンの発見の経緯が、地球温暖化に起因していることから、深刻な地球環境問題をテーマとする愛知万博・長久手愛知県館「地球タイヘン大講演会」の演出の中で取り上げられることになっている」と言われると、そうなのか…と、素直な小生は頷くしかない。
 ただ、本物の「アイスマン」は「イタリア・南チロル考古学博物館に保管されている」とのことで、「精巧なレプリカが日本国内では初めて」やってくるわけである。
 リニア(常電導磁気浮上式リニアモーターカー)や、トヨタの人間搭乗型の二足歩行ロボもいいが、「環境トイレ」も使ってみたい。

 さて、過日、ラジオを聞いていたら、涌井 雅之氏がインタビューに答える形で、「愛・地球博」に関連する話をされていた。この名前、どこかで聞いたことがあるな…とネット検索したら、納得。
 関口宏が司会するTBSテレビのサンデーモーニングという日曜日午前の番組にゲストコメンテーターとして江川紹子・田中秀征両氏らと共に出演していたのを何度か、見たことがあったのだ。
 悲しいかな、無知な小生、番組を視聴していても、このおじさん、誰、でも、きっと偉い人なんだろうな、という程度の認識だった。

 実は、この方、「造園家(ランドスケープアーキティクト)/桐蔭横浜大学教授」といった肩書を持っておられ、「1945年東京生れ 造園家として、多摩田園都市、ハウステンボスのランドスケープ計画・デザインに参与する傍ら、国土交通省水源地域対策アドバイザーを10年余勤めるなど、「景観10年、風景百年、風土千年」と唱え、都市と自然の関わりにおけるランドスケープデザイン作品を数多く手がける。日本造園学会賞、国土交通省大臣賞などを受賞」といった経歴や実績を持っておられる方なのである。
 そして、「博覧会では、国際花と緑の博覧会を経験し、「山口 21 世紀未来博」のチーフプロデューサーを努めた。
平成14年2月より、2005年日本国際博覧会ランドスケープコーディネーターとして、主として博覧会会場の跡地利用を踏まえた公園計画の調整を担当」とのこと。
 ちなみに、「愛・地球博」の「各プロデューサー紹介ページ」を覗くと、実に多士済々の方々がプロデュースに関わっていることが分かる。総合プロデューサーの三方のうち、泉眞也氏や木村尚三郎氏らのことは、小生も名前くらいは知っている(泉眞也氏の講演を聞いたことがある)。

「月刊地域づくり」というサイトの中の、「「身近な宝」を発掘し、磨き上げよう」に涌井 雅之氏の基本的な考え方の一端が示されているようだ。
 ここには、「均衡と調和にこそ価値」「「不易と流行」のバランス」「景観十年、風景百年、風土千年」「自然には多面的機能がある」などの同氏の考え方の鍵となると思しき言葉が並ぶ。
 特に、「景観十年、風景百年、風土千年」は彼の考え方の根幹に関わるようで、「筆者はその関係を「景観十年、風景百年、風土千年」というフレーズで、時間の軸に景観を位置づけ解説している。ここでいう景観とは、今という時に正対している見えがかりであり、風景とはそこに暮らす人びとが生活のために自然とせめぎ合いつつ見いだした、記憶を込めた景観のありさまと考えたい。風土はさらに風景が歴史的に重なり、その地域の個性が特徴化され、他の地域の人びとに明らかに違いとしてわかる無意識下の記憶である」という点は、着目しておきたい。
 景観については、小生も以前、景観条例との絡みで拙稿の中で触れたことがある。
 
「愛・地球博」の「日本庭園」で、彼の考え方がどのように形となっているのか見てみるのがいいだろう。
 さりながら、「長久手会場の森林体感ゾーンに造られた日本庭園は水がテーマ。源流から渓谷を流れ、やがて海へとそそぐ水の持つさまざまな“表情”が広さ7ヘクタールの庭園に凝縮されている」といっても、小生は未だ実際の景観を見ていない。
「「伝統技術を使って、今までにない日本庭園を表現した」と博覧会協会の会場演出総合プロデューサー涌井雅之さん。機械で霧を川の上に発生させたり、城づくりの技法を使った石垣を配したりするなど、斬新な仕掛けがちりばめられている。愛知は昔から豊富な水による恩恵を受ける一方、水害にも悩まされてきた。涌井さんは「水への理解を深めてほしい」と語る」とあっても、小生は、今のところ、口をあんぐり開けて、ポカーンとしているばかりである。


 春の野は夢の中ではのどけしか
 春の野やひねもすのたり昼寝せん
 春の野をすみれの香にぞなつかしむ

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