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2005/02/23

世界らん展

 季語随筆日記を綴るようになって、柄にもなく路上の草花に関心を向け、草木に関わる話題に耳を傾け、それどころか何も知らない無粋な小生が無謀にも草木について何事かを語るようになってしまった。
 これが、騙りにならないよう、ひたすら祈るばかりで、書きながら、ついでに冷や汗も掻いている。
 今日の表題は、「蘭」にしようと思っていた。昨日、車中でラジオを聴いていたら、「蘭」の話題があったからだ。仕事中だったこともあり、断片的にしか聴けなかったが、どうやら、「世界らん展」がどうだとか、言っているような。
 で、今、ネット検索してみたら、「世界らん展」が今、東京ドームにて開催中なのであり、「蘭のイベント 世界らん展日本大賞 公式Webサイト」もネット検索のトップに登場してくれた。「公式メールマガジン - ご案内 - 蘭のイベント 世界らん展日本大賞 公式Webサイト」なる、メールマガジンも配信されている。
「世界らん展日本大賞2004の上位入賞花を公開!」とかで、「日本大賞」を受賞した作品も見ることができる。
見所ガイド」の頁があって、「光のオーキッド・ファンタジー」や、「假屋崎省吾の蘭の世界」、「6か国の大使夫人による皿の上に蘭を飾りつけるディッシュ・ディスプレイ展示コーナー」など、いろいろあるが、個人的には、「日本を代表する6つの流派による特別展示」ということで、「池坊、小原流、古流松應会、古流松藤会、草月流、龍生派、それぞれの力作展示が並」ぶところを見てみたい。できれば、日本を代表する6つの流派による、鎬を削るような闘いの火花の散る生々しい様を見たいものだが。
特別企画『スペシャル・フライデー・ナイト』を25日(金)に開催! 」ということで、25日(金)には、「作家「椎名 誠」さんをゲストに迎えて講演会が行われ」るというが、どうして椎名 誠さん、なのだろう。
 小生は、同氏のファンではないので、彼のことは詳しくない。だからだろうか、彼と蘭とがどうやっても結び付かないのだ。
 ようやく得た手掛かりは、『砂の海-楼蘭・タクラマカン砂漠探検記-』(椎名誠著、新潮文庫)。「楼蘭」…。「楼蘭王国」…。「楼蘭の貴婦人」…。「蘭」が出ている…。が、さすがに少し、無理があるような。

 昨日、ラジオで聞きかじったことの大半は、小生のモノに拘らない性格が出たのか、きれいさっぱり忘れてしまった。
 ここで多少のことを書き連ねても、恐らくは、大概の人には常識の範囲を出ないのだろうと思う。
 小生には初耳のことも、あら、何を今更、ふふん! と鼻で笑われそうである。いくら花の話題だからと言って、それではあんまりである。
 なので、ここは一つ、知らん顔でこの話題を通り過ぎようと思ったが、昨日、クリーニング店に行ったら、店先に豪奢な鉢植えの花が咲き誇っている。店の人に、この花、何ですかと尋ねたら、「蘭です」だって。
 ああ、これが有名な蘭かと、小生、感心頻りだったが、しかし、これが蘭なのか…と、今一つ、腑に落ちない。
 というのも、どこかで見た蘭とは様子が違うのである。
 あれも蘭なら、これも蘭。一体、「蘭」ということで、どういうイメージを持てばいいのか。花の風情などだけでは頭の中が混蘭してしまう。
 
 ところで、「蘭」は、俳句の季語上は、「藪蘭」や「胡蝶蘭」だと夏の季語だが、「蘭(らん)」だけだと、秋の季語として扱われるようである。【秋蘭 秋の蘭 蘭の秋 蘭の香 蘭匂う 君子蘭 カトレア】といった表現で使われることもあるようだ。
 春の季語表を、春爛漫、目を爛々と輝かせて探しても、見つからない。このこともあって、今日の表題に選ぶのは躊躇われたのだった。
「蘭」が秋の季語扱いなのは、東洋蘭の多くが秋に咲くからだとか。春に花が咲くということで、東洋蘭界では、支那春蘭と区別するために日本春蘭という区分けもするらしい。
 昨日のラジオで「蘭」が地上で一番成功した花という言葉を耳にした。どういう意味で一番なのか、肝心の点が分からず終い。
 ネットで調べてみると、「ランは地球上の被子植物の進化の頂点にたつともいえる植物群で、今もなお新しい種が生まれつつあるといわれています」という文が目に付いた。
 そのあとに、「最も遅く地球上に現れたランは、生きる場所をどこに見つけたのでしょうか?」と続く。どうやら、ここに何か蘭の繁栄、蘭の地上での成功のヒントが隠されているようである。
「ランは最も遅くこの地球上に現れたため、既に他の植物に覆われた環境へ進出しなければなりませんでした。そこで、自分の体のつくりや栄養分を得る仕組みを変えることにより、より生存競争の少ない、つまり他の植物があまり生えていない岩の上や、高い樹の上での生活に適応していったのです」という。
 つまり、初めからニッチ(隙間)で生きるしかなかったから、知恵と工夫で生存の方法と場所とを獲得したというわけである。
 ネット検索で更に調べると、「植物で一番進化した被子植物の2つの枝の、芽の葉が1枚の単子植物では蘭が、双葉を出す双子植物では桜が、それぞれ進化の頂点にあるそうだ」という一文が見つかった(「うつせみ 1996年 2月25日 蘭」より)。
「カトレヤは代表的なラン」ということで、「カトレヤ類の植物分類上の位置づけ」という頁を見てみる。この頁を覗くと、植物の世界の中でのラン科の位置付けや、ラン科の特徴が纏められている。
「うつせみ 1996年 2月25日 蘭」の頁には、「(前略)……白、赤、黄、紫、緑、などあらゆる色とその組み合わせで容姿を誇る。人間が競って交配種を作ったせいもあるが、元々は交配してくれる特定の昆虫に適応して進化し多様化したそうである」とある。
 例えば、「擬態による防御戦術をとった昆虫」がいて、「白い蘭の花弁にそっくりな姿で蜂などをおびき寄せるハナカマキリ」がいるという。
 ラジオの中では、逆に蘭の花の齎す環境に適応して進化した昆虫もいるとも言っていたような気がするが、ネットでは確認しきれなかった。
 ネット検索した甲斐があったというか、「CalypsoLip Orchids & Nature」というサイトを発見した。その中の、「Diary2000-3」という頁がなかなかいい。
 正直なところ、今日の季語随筆日記は、この頁(サイト)の発見と紹介で十分、見返りがあったような気がする。
 写真と付されたコメントを読むだけで、ランについてあれこれ知ることができるし、想像をめぐらすこともできる。興味深そうな書籍の紹介もあるとあっては、言うことない。
 先に、「「ランは最も遅くこの地球上に現れたため、(中略)、より生存競争の少ない、つまり他の植物があまり生えていない岩の上や、高い樹の上での生活に適応していったのです」という一文を引用したが、このサイトには、この点についても丁寧に説明してくれる:

 着生ランは寄生植物ではない--樹木になにも与えないし、張りつくのにうってつけの場所を提供されるだけで、木から何かを与えられることもない。ほとんどの着生ランは熱帯のジャングルで進化した。ここでは非常に多くの生物が、ジャングルの地面を確保しようとして争い、大半がその戦いに負けて絶滅して行く。ランがジャングルで生き延びたのは、土ではなく空中で生きる能力を開発し、確実に日光と水が得られる場所--木の枝という他の植物より高い場所--に身を落ち着けたからだ。戦いを放棄したおかげで、生き延びたといえる。これらのことを考え合わせると、ランはきわめて抜け目ない植物に見える。--どこから見てもそうだ。
(転記終わり)

 このサイト主の方は、写真展を催されたこともあるようで、「 ”野性ランの姿” 2000年2月6日~13日」を覗くと作品を見ることができる。
 蘭の花の世界は、どうやら、とてつもなく広く深そうだ。 ランのハンターがいる…。さもあらんという気がしてくる。
 小生は、以前、「蘭の花妍(けん)を競って咲き誇る」や「蘭の花気品香らせ反り返る」という句を吟じたことがある。
 蘭は香りも素晴らしいという。「蘭の香りを移したほうじ茶」で、「古労茶」などもあるのだとか。ほうじ茶は香りも味も好きだ。そこに蘭の香りが漂ったら、一体、どんな風になるのか興味津々である。

 蘭の花競うは妍か品なのか
 蘭の花負けるが勝ちを知るのかも
 蘭の花香りに噎せて夢心地
 蘭の香を伝い辿って恋の闇
 蘭の茶や馥郁として豊かなり

 
 ついでながら、我がホームページの画像掲示板に、「シンピジューム」の素敵な画像を提供してもらっています(635)。「らん科しゅんらん属」ということで、蘭の仲間。花言葉は、「飾らない心、豪華」だそうで、小生には一番、縁の遠いもの。だからこそ、慕わしいのかも。

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コメント

こんにちわ、はじめまして。
「世界らん展」を検索して、こちらにたどり着きました。紹介されているHPを含め、とても読み応えのある素敵なブログですね。
弥一さんのブログには、力及びませんがTBさせていただきました。

投稿: きのこ | 2005/02/23 17:33

きのこさん、はじめまして。TBやコメント、ありがとうございます。
読み応えがある…。写真などを入れて読みやすく来訪者に楽しいようにしたいのですが、容量が四ヶ月で半分を超えそうになってしまい、今は写真の掲載を控えている。結果的に文章ばかりになってしまって。
今朝、ちょっとだけきのこさんサイトを覗いてきました。
今は、寝不足で頭が痛い。一眠りしてから、また、改めてお邪魔させてもらいます。

投稿: 弥一 | 2005/02/24 16:13

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