仲冬・大雪・炬燵
歳時記での季語の分類では、冬は、初冬・仲冬・晩冬と分類され、大雪(たいせつ)の昨日12月7日からは、仲冬に入ることになる。
念のため、それぞれの期間を示しておく。その前に、まず、冬というのは、「立冬(11月7日)から立春の前日(2月3日)まで」とされているようだ:
初冬 立冬(11月7日)から大雪の前日(12月6日)まで
仲冬 大雪(12月7日)から小寒の前日(1月4日)まで
晩冬 小寒(1月5日)から立春の前日(2月3日)まで
暖冬なのか、それとも、季節がずれているのか、小生の実感では、やっと初冬に差し掛かったという気がする。東京在住の小生だが、電気ストーブを先週末の土曜日から使い始めた。その日は、曇天で夜になって風雨となった。日中も部屋の中は寒く、薄暗く、ストーブの熱線の赤が部屋に洩れ零れる。赤みを帯びた部屋のカーペットや棚などを見ると、今年も冬が来たなと思ってしまう。
が、俳句の世界では、決まりは決まりなので、とにかく、昨日からは、仲冬なのである。初冬は「しょとう」とか「はつふゆ」と読むが、仲冬は「ちゅうとう」と読む。
さて、今日は炬燵のことを少々。といって、別に炬燵についての薀蓄を傾けようというわけではない。小生、以前、当てずっぽうで、炬燵と韓国などに一般的なオンドル(「韓国人とオンドル」)との関連について憶測を逞しくし、炬燵の歴史を探る中で、いつかオンドルと行き当たるのではと、駄文・愚考を重ねたことがあったが、見事に小生の見当が外れてしまったことがある。
悲しいかな、その論考(?)の行方が分からない。代わりに、昨年末にメルマガにて公表し、本年の秋口にホームページに掲載した「冬の海に思う」というエッセイがあることだけ、記しておく。その中に、ちょっとだけ、炬燵に触れているし。というか、そこでは炬燵に入りたいと書いているだけであるが…。
オンドルは、「韓国人とオンドル」にもあるように、「オンドルは熱の伝導、 放射、 対流を利用して効率よく部屋を暖める暖房法である。」であり、「寒さの厳しい韓国に古くから根ざしたオンドルは、床下に石をつかい煙のトンネルをつくり、その上に薄い板石をのせ、泥を塗り、さらに特殊な油紙を張って床とするものである。外や台所にある焚き口で火をたくと、その煙がトンネルを通って部屋の反対側の煙突から出るあいだに、床下から部屋全体を暖める仕組みになっている。」である。
炬燵とは、基本的に発想が違う。やはり、韓国などは、寒さが日本とは段違いに厳しいものがあるのだろう。
それと、日本家屋の気密性の低さがある。余程でないと、日本の家屋は、隙間風が通る。何処かしらから風がスースー通り抜けていくのである。だから、部屋全体、家屋全体を暖めようとしても、意味がないのである。で、炬燵や囲炉裏など、一定の範囲のみを暖める暖房の方法を選択してしまったのだ。
炬燵の起源は、小生が思っていたよりは新しい。起源は室町時代だという(「日本文化いろは事典」)。「室町時代、消えかけ(「おき」、と言われる状態)の炭に「紙子〔かみこ〕」という紙で仕立てた服を被せ、その上にやぐらを置いて布団をかけ、暖を取ったのが炬燵の始まりです。」というのである。
更に小生が驚いたのは、掘り炬燵が、「明治42年にバーナード・リーチという人が最初に作ったもの」だということ。明治の初期どころか、江戸時代にはあったものと勝手に思い込んでいた。そういえば、江戸時代を舞台にした時代劇には登場しない…。
ちなみに上掲サイトには、「昭和30年頃からは、東京芝浦電気が開発した電気炬燵が主流となりました」とある。小生が生れた頃に電気炬燵が主流になった、小生は電気炬燵と共に育ったというわけか。だから、体がヌクヌクしているのだろうか。少なくとも東京にいる今の小生、一冬を通して、夜は毛布一枚で眠っているのだ。それも、気がついたら、毛布から足が食み出している。天然の暖房装置なのか。
コタツは、表記として、炬燵のほかに、「火燵・火闥・火榻などと書」とか。
また、上記したように、「掘り炬燵(切り炬燵)は、もともと囲炉裏の上に櫓を置き布団を掛けたもので、歴史は古く室町時代に登場し」た(「日本の暖房の歴史」)わけで、囲炉裏こそが、炬燵の前史であり、土台だということか。
さらに、「日本の暖房の歴史」によると、「炬燵が発達した裏には、木綿生産の伸展による木綿布団の普及と、木炭・炭団などの燃料生産の増大が、大きな要因としてありました。」という。なるほど、である。囲炉裏もそうだが、それが発展して、炬燵になるには必要十分なる条件が揃わないと不可能だった訳だ。
日本の家屋は、気密性が低い、そのことと炬燵(や囲炉裏)の発達とが関係あるかのように書いたが、「日本の住まいが伝統的に全室暖房に向いていないこと」もさることながら、「そのための十分な燃料がなかったことなども要因でした。また、質素・倹約を美徳とした暮らしぶりにも、一因があったようです。」とのこと。
そりゃ、そうだね。
どうやら、炬燵の起源をたどると、囲炉裏に行き着くようだ。ここで、再度、「日本の暖房の歴史」を参照させてもらう。
興味の湧く記述がいきなり見つかる。「炉は、縄文や弥生時代の住居跡にもすでに見られ、煮炊きなどの炊事や暖房の道具として、また照明の役割も果たすなど、生活の中で重要な機能を担っていました。」というのだ。
この炉がやがて発展して、囲炉裏となり、囲炉裏を中心とした居間、冠婚葬祭などの儀式などの時に使う座敷、わら仕事などの土間という、特に農家などに見られる家屋につながっていく訳だ。その土間には、過日の日記でも触れた竈(かまど)が置かれたりする。
日本だと、「縄文時代の炉は、床を浅く掘り込んだだけの地床炉、その周りを石で囲う石囲炉、地床炉の中に甕を埋めた埋甕炉などの形式があり、さらにそれらの複合型の炉も発見されています。」ということで、炉は、床に置かれる。
例えば、ロシアでの暖房というと、すぐに浮かぶペチカは、「元々は北欧地方の暖炉(囲炉裏)から発達したと言われています。」という。
この北欧地方の暖炉(囲炉裏)というのは、床置きの炉なのか、それとも、暖炉というくらいだから、壁際に設置されているものなのか。
また、暖炉と床式の炉との関連は如何に、何処かに接点があるのか、などと疑問は尽きない。機会があったら、炬燵床しい思いを胸に探求してみたいものだ。
炬燵が恋しいと思いつつも、我が部屋にある暖房は、電気ストーブである。一冬をこれで過ごす。暖房装置としては、これで十分なのだが、炬燵という昔ながらの風物に馴染んでみたいという願望、満たされない願望はどうしようもない。
さて、季語とは話がずれてしまった。
ここで日記らしいことを少々。
昨日は、この無精庵徒然草を「夜鷹蕎麦」と題して、蕎麦の話題やら、ハルノートの話題を扱ったが、本日は、炬燵を扱った。さすがに、創作までには手が回らない。
その代わり、メルマガでこれまで公表してきたエッセイを蔵置するサイトを昨夜半前に設置した。題して、「無精庵明月記」である。とりあえず、五つほど、三年前の雑文を載せておいた。これから、追々、追加していく。
これで、以下のサイトが揃ったことになる:
「無精庵徒然草」…つまり、このサイトで、季語随筆日記を毎日、書いていく。
「無精庵方丈記」…掌編(虚構作品)などを随時、掲載していく。今日も一つ、載せた。
「無精庵万葉記」…書評エッセイを随時、載せていく。当面は、既発表分の掲載が多いかも。
「無精庵投句の細道」…「無精庵徒然草」などで載せた川柳や俳句などの蔵置サイト。
「無精庵明月記」…エッセイの蔵置サイト。随時、新作も載せる。
このように、ブログを複数設けるのは、ホームページへのアップ作業が全く、追いつかない現実があるからである。ブログのお蔭で、アップ作業が捗り、これで掌編作品の未アップは、あと二つほど。
小生の予定では、今後、「無精庵越中記(仮称)」(富山関係の雑文掲載サイト)と「無精庵駄文記(仮称)」(駄文・駄洒落・語源探索サイト)、あとは、できれば、タクシーやオートバイのサイトも設けたいが、さて。
この態勢が整った段階で、ようやく、滞っているメルマガの配信作業も再開できるはずである。
とにもかくにも、徹底して、あれもれこれもと書いていくつもり。それしか能がないのだ。
今日の季語随筆では、「著書では、治療の甲斐あって妊娠したものの、今年2月に流産した経験などを赤裸々に告白した上で、子供を産む立場の女性への理解を訴えている」という『私は、産みたい』(新潮社)を刊行された野田聖子氏のこと、イナキビモチ(稲黍餅)のことを採り上げるつもりだったが、叶わなかった。
これも、後日、機会があったら、触れてみたい。
おっと、何か、忘れてやしませんか。そう、駄句だ。これがないと、締まらない。書き終えた気がしない。
炬燵にて眠る楽しみ夢に見る
炬燵にはミカンとテレビあればいい
炬燵にて屁する楽しみ懐かしき
炭火燃え炬燵の闇も赤くなる
潜り入り熾き火探しの朝となる
誰よりも早く起きての熾き火炊き
炬燵から窓の雪見る至福かな
熾き火に炭を足す母の背よ
炬燵板気がつきゃ猫の塒かな
気がつけば朝を迎える炬燵かな
炬燵にて漫画三昧夢のごと
炬燵にて足を絡める温みかな
囲炉裏端鍋の湯気立つ冬の夜
囲炉裏端嫁と姑の差し向かい
囲炉裏端天井燻せと魚焼く
囲炉裏端囲む人の輪消えていく
囲炉裏端誰も来ぬまま開かずの間
鍋物の汁が零れて涎かな
散るモミジせめて土にて憩うなら
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