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2004/12/05

都会の落ち葉

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 今年は気を揉むほどに紅葉が遅かった。
 さすがに12月に入るとここ東京も朝晩は冷えて冬を感じさせる。それでも日中は、ともすると11月の中旬から下旬にさしかかる頃合いの陽気だったりする。
 紅葉は、この数日、一気に来襲したかのようで、近所の葉桜も真っ赤に変色した途端、呆気なく散っていく。桜は花びらも咲いたと思ったら、満開を愛でる間もなく、桜吹雪もかくばかりはと、散っていく。まるで葉っぱも、自分が花びらであるかのように、散り際を潔くしないと拙いのではと思い込んでいるようで、どこか、哀れというより、滑稽なような、風情を感じるより、戸惑いの感を覚えさせる。
 東京都内を車で流していると、日中は渋滞などで、じっくり風景を楽しむ余裕も乏しかったりするが、夜も更け、車も自分のペースで走らすことが許されるようになると、街路樹の紅葉ぶり、あるいは樹木の種類によっては落葉ぶりを鑑賞することも楽しい。
 時に、まさに盛んに枯れ葉の舞い散る並木道に遭遇することがある。桜吹雪の道を走るのも、物凄いが、真夜中などに落ち葉の吹雪の道を走るのは、冬ざれた木立の物寂しさと相俟って、別世界に紛れ込んだような、異様な風情を覚える。
 桜に限らず、落葉の激しい木はケヤキやクヌギなど、いろいろある。
 落ち葉の季節ともなると、朝晩など、近所を歩くと、一戸建ての家など、家の主や奥さんが、門前に散って吹き溜まったり、路面に張り付いたりしている落ち葉をせっせと掃いている光景に出くわすことが多い。
 掃いても掃いても、散りやまない落ち葉。見ている小生には、枯れ葉の舞う光景というのは、なかなか風情があったりして、絵になる。事情が許されるなら、ずっと散る様を眺めていたいような気分になることもある。
 晩秋から冬にかけては、湿気も少ないし、箒などでアスファルトの路面を掃く乾いた音が、耳に響いてくる。別に耳障りというわけでもない。湿っていないので、不快感も和らぐのだろうか。
 落ち葉、音、と来ると、学生時代など、枯れ葉よー♪もいいが、秋になるとよく掛かっていた、アルバート・ハモンド(Albert Hammond)の「落ち葉のコンチェルト」を思い出す(「本町受験英語 」というサイトの、「なつメロ英語」の頁にて、原詞・訳詞を知ることができるだけじゃなく、曲も聴ける。歌付きだ! このサイトを覗けば分かるが、歌詞には「落ち葉」という言葉が出てこないばかりじゃなく、そもそも秋に関係する曲でさえない。原題は『全人類の平和のために For the Peace of All Mankind 』なのだ。でも、イデオロギー云々に関係するのではなく、ある女性に捧げた曲なのである。)
 が、実際に掃いている身になってみれば、そんな悠長なことも言っておられないだろう。
 ともすれば、落ち葉が恨めしいと思ったりもするのではなかろうか。
 掃き集められた落ち葉は、一体、どういう道を辿るのだろうか。やはり、何処かで焼却処分されるのか。それとも、近年のエコ意識もあって、掻き集められ、ボカシなどを入れて、堆肥にされていくのか。有効利用、それもいい。
 落ち葉というのは、都会では、一体、邪魔者なのか。紅葉を愛でさせてくれ、散る風景に風情を覚えさせ、舞い散っていく光景を楽しませる、役目はそこまでの、どこか半端な存在に過ぎないのか。実際、落ち葉が路面に落ちていたりすると、バイク乗りである小生、カーブに限らずブレーキを懸ける際には、神経が磨り減る思いをさせられる、そんな厄介な存在だったりする。
 3日の営業中だったか、車中でラジオを聞いていたら、山間部の列車など、レールに落ち葉が貼り付いたりして、車輪が空転し、スピードが上がらない、あるいは逆に、下手するとブレーキの効目が弱まることもある、などという話をしていた。
 半端というと、つい、濡れ落ち葉という言葉を思い起こしてしまう。自分が誰かに濡れ落ち葉のごとくくっ付いているわけではないが、ひっつく対象が人間ではなく、風景や情感や思い出や想像力の世界であっても構わないというのなら、小生は立派な濡れ落ち葉族だ。
 濡れ落ち葉族というと、家庭で所在をなくした中高年オヤジの別称だったり、いずれにしても、仕事以外に趣味と言えるものがなく、奥さんらの行く先や遊び、交際にベッタリ貼り付いて行くしか能がない連中だったりする(そんなイメージがベッタリ、貼り付いている)。
 もっと悲惨な場合は、粗大ゴミと呼称されたり。
 ところで、この「濡れ落ち葉」という呼称、一般に評論家の樋口恵子氏による造語と思われている。小生も、そう思っていた。実際、1989年に彼女は、この言葉で流行語・新語表現賞を受賞されている。
 が、彼女に言わせると、「これはあるシンポジウムで伝聞として聞いたもので」、「近ごろは、粗大ゴミではなく『濡れた落ち葉』と言うのですって」と聞いたのだとか。
 ちなみに、「粗大ゴミ」という呼称(流行語)も樋口恵子氏によるもの。上掲のサイトを読んでいて、「ワシも」なんて流行語も思い出した。
 が、思えば、濡れ落ち葉という言葉は、場面によれば綺麗な言葉だし、シトシト雨の降る都会の片隅の公園で、雨に濡れる落ち葉などを眺めていると、なんとなく心が落ち着く。木に芽吹き、育ち、青々とした葉っぱになり、やがて、役目を果たした、ご苦労さんとばかりに末期の耀きを紅葉としてこの世に印象付けた後、風に舞い、踊り、散っていく。
 アスファルトの路面に舞い落ちても、それで安泰というわけではない。風が吹けば、こちらへ、あちらへと吹き飛ばされ、風がなくとも車の通り過ぎるたびに、またまた舞い上げられたりする。あるいは、路肩の何処かに吹き寄せられる。掃き溜めの堆積に埋まっていく。そうして、やがては、掃き集められ、何処かへと運ばれていくわけだ。
 が、雨が降ると、そんな慌しい運命を辿る落ち葉も、束の間の安らぎの時を憩っているように感じられたりする。
 忙しいだけの時を過去のものとし、今は、雨に打たれながらも、ひっそりと動かざる時の不可思議を体に感じているかのようだ。
 そんな落ち葉たちだが、雨に打たれる時にだけ、束の間の安らぎの時を迎えるのは、寂しい。
 場所が都会など、市街地ではなく、山間(やまあい)の地などにあったなら、きっと落ち葉は、別にリサイクルなどという大袈裟なことでなく、自然なサイクルに従っているうちに腐葉土になるなど、落ち葉の辿るべき運命を全うしていたはずなのだ。
 そう、C.W.ニコルの唱える、「森は肺、川は動脈、湿原は腎臓」など、敢えて意識する必要もなかったわけだ。
 落ち葉ということではないが、小生は、デヴィッド・W・ウォルフ著『地中生命の驚異』(長野敬+赤松眞紀訳、青土社刊)や、リチャード・コニフ著『無脊椎動物の驚異』(長野敬訳、青土社刊)などを昨年、読んだことがある。土中の豊穣さを痛感したものだった。土中には、地表の動植物より膨大な種類(と量)の生き物が生息している。落ち葉は(落ち葉だけじゃないが)腐葉土となって、大地の中の世界を豊かなものにしているのである。
 それも、風に散らされて大地に敷き詰められるだけで。
 まあ、でも、そんな行末など気にせずとも、落ち葉の舞う光景は素晴らしいのだが。

 散る枯れ葉行方の先の遥かなり 
 枯れるともやがて命の肥やしかな

 冒頭に掲げた写真は、3日の営業中、芝公園で撮った東京タワー。ライトアップされていることでも分かるように、夜半にはなっていない。
 画像には、「冬の日の常夜灯の寂しかり」などと句を付したが、実際には、東京タワーは、終夜照らされているわけではない。
 夏は青めのライトで涼しさを、秋や冬などはオレンジ色の光で暖かみを演出しているというが、秋口などは、温みを感じられたけれど、さすがに師走の頃ともなると、橙色や赤っぽい光が健気に冬の寒さを和らげようと頑張っているのだろうけれど、それが反って逆に淋しく感じられたりして。
 そんなに頑張らなくていいよ。暖かみより、むしろ、能舞台の薪のような幻想感のほうが小生は好きなのだし。

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コメント

こんばんは。
弥一さんはご存知か、多摩動物公園では「落ち葉のプール」が開園したそうです。約60cmに積み上げられた落ち葉の中で子どもたちが自由に遊べるーなんか心和みますよね。

投稿: oki | 2004/12/06 00:03

 tdさん、こんにちは。
 トラックバック、ありがとう。
 下手な句、下手な写真で、申し訳ないです。
 芝公園の写真も撮ったけど、自分で見ても、ひどいので没。つい、tdさんの撮られた写真を日記に使いたいと思ったり。
 これからも、宜しく!

 okiさん、コメントをありがとう。
 小生、落ち葉のプールのことはテレビで見たのか、知っていました。で、ネットで検索し、いいサイトがあったら、リンクさせようと思ったのですが、検索のトップに出たサイト、画像が表示されないので、やめたのです:
 http://www.asahi.com/national/update/1128/002.html
 こうしたプール、いいですよね。

投稿: 弥一 | 2004/12/06 02:42

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