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2004/12/19

月に雁(かり)

s-DSC01184s-DSC01183 土曜日の営業は、これまた悲惨なもので、ただただ駅などでお客さんを待ったり、やたらと街を流して回ったり。挙げ句、疲れ果てて場末の公園などに車を止め、夜空などを眺め、風流を気取ってみたり。
 そう、営業がはかばかしくないと、何をしても、ただの気取りにしかならないのである。
 こんな時こそ、チャンスだとばかりに、都内の方々で写真を撮りまくったりもしてみた。車を走らせている最中に、暇の徒然というのか、いつも以上に変てこな句が浮かんでしまって、だったら、その句に合うような風景を撮ろうなんて思いついたりしたからである。
 前から撮りたいと思っている画像に、夜空を背景に走るモノレールかゆりかもめという乗り物の光景。が、目にはしても、シャッターチャンスというと、なかなか恵まれない。夜中になって、ふとそのアイデアを思い出し、試みようとしたが、時、既に遅く、モノレールは終電のあと。
 この画像を撮りたいのは、恐らくは、夜空に窓明かりばかりが目立つであろう写真を、宮沢賢治の銀河鉄道をイメージさせてこの日記(季語随筆)に載せたいと思っているからである。その写真には、何か句を載せたいが、ま、そこそこの写真が撮れたら、自分なりにイメージを膨らませて句をひねりたい。その日の来るのが楽しみである。

 さて、昨日、運転中に思いついた句というのは、以下のような他愛もないもの:
 
 葉桜の散り残っての落ち零れ

 駄句なので、説明しないと詠われている情景が分からないだろう。
 桜の季節が終わり、葉っぱだけとなって緑豊かな街路樹や公園を縁取る木々としてわれわれの目を和ませてくれていた葉桜も、その葉っぱが、16日木曜日から金曜日の朝にかけての木枯らしに、すっかり吹き飛ばされ、いよいよ裸木となってしまっている。
 が、よくみると、木の立つ位置も関係するのだろうが、葉っぱの落ち残っている木もある。そのほとんど裸木同然の枝などに散り残っている葉っぱというのは、散らないで頑張っていると見なすべきなのか、それとも、未練がましくしつこく枝や梢に付き纏ったまま離れないとみなすべきなのか、つまりは、本来ならあの木枯らしに、そう、満開となった桜の花びらたちが時が来ると呆気なく、そして潔く散っていくように、ちょうどそのように散ってしまうべきなのであり、ああ、それなのに残っているというのは、見苦しい、下手すると見苦しい以上に滑稽ですらある…のか、そんな感覚がふと小生の脳裏に過(よぎ)ったのである。
 あの、冬の風にもめげずに枝にくっ付いている葉っぱたちは、とっくに赤っぽく変色しているのだし、いずれにしても、あと数日もしないうちに散るはずなのだ。だったら、あの木枯らしの日に散っていたほうが、よほど美意識に叶うのではなかろうか。
 が、この美意識、小生の勝手な、どちらかというと我が侭な価値観に拠って立つエゴの所産と思えなくもない。むしろ、若いとは言えない小生であれば、懸命に枝にぶら下がりつづける、散る間際の、恐らくは鉄棒にぶら下がる小生であれば、限界を迎えて手がブルブル震えているであろう様を連想させてしまう、そんな切ない、けれど、健気でもある頑張りを、本来は応援すべきはずなのである。
 でも、自分のことなら、しつこいと言われても未練がましく、食いついていこう、生き延びようと必死になったりするくせに、他人事となると、もっと潔くしろよ、もっと美意識を大切にしろよ、立つ鳥後を濁さずだぞ、なんて勝手なことを言う。

 葉桜や木枯らしに耐え散り残る

 余談がながくなってしまった。とにかく、小生、仕事が暇なのを口実に、公園に車を止めては、あれほどに葉っぱの緑の豊かだった葉桜が、今では残り少ない赤茶けた葉っぱを数枚残しているだけの桜の木の光景を撮ろうと、幾度となく試みたのだった。その成果は、さて、どうだろうか。
 参考に、同じ公園で見つけたイチョウ(?)の黄葉ぶりなどを見てもらおうと小さく写真を載せておいた。

 表題こそが今回の日記のテーマだったのに。といっても、この「月に雁(かり)」は、季語でもなんでもない。
 仕事中、ラジオから切手の話題が聞えてきた、その話の中心に、この有名な、切手収集マニアなら垂涎の的の一つだった(今も?)安藤広重画の「月に雁」切手が出ていたのだ。
 切手収集というのは、一昔前、ブームとなっていたもので、小生も、少しは集めていた。父の影響もあったと思う。尤も、父は、切手のみならず、お酒のラベル、お寺に参詣した折の手形などなどいろいろ集めていた(今はどうなのか知らない)。
 小生の切手収集のテーマは、集め始めた頃、故・ケネディ大統領の人気、アポロ宇宙船、月への人類の到達などがあって、「宇宙」に関連するものだった。宇宙船や、月に人類が立った光景など、各国の宇宙や天文関係の切手を集めていたのである。
 当然ながら、高価なものには手が出せない。時折、父の切手整理の様子などを眺めることがあったりしたが、その中には、「月に雁」「見返り美人」など、小生の疎い知識でも高価そうな切手が数多くあった。「月に雁」などは何枚もあったのに、友達に請われるままに交換か与えるかしたそうで、今となっては一枚もあるかないか(もう、換金してしまったのだろうか)。
 思えば、「月に雁」切手を眺めていて、それが安藤広重の筆になる図柄だと知っていたかどうか。父などに聞いたり、切手の図鑑などを見て、目にはしていたはずだが、脳味噌にはまるで刻まれていない。
 今、改めて眺めなおしてみると、その図柄の品のよさ、構図の素晴らしさに感服する思いである。我が家の居間(茶の間)には、襖の破れを繕うように、浮世絵(のコピー)が何枚も貼られてあった。安藤広重のあの名品、雪の「蒲原」や、雨の「庄野」、あるいは、鈴木春信の、題名のわからない作品などが無造作に襖や壁に貼ってあったのだった。
 が、「月に雁」や「見返り美人」「ビードロを吹く娘」(喜多川歌麿)などは、切手でその存在をそれとは知らないままに遭遇していたわけである。
「月に雁」には、隅っこに広重筆とあるのは勿論だが、「馬鹿印」ともあるという。「「鹿」を「福」の字になぞらえ、左の「馬」を「寿」と読むことができる」そうで、「一つの洒落として広重が用いたものであろう」とか。
 画の左上には、「こむな夜が又も有うか月に雁」という句が付せられているが、この句は、『和漢朗詠集』から採られたものだとか。
 小生、探してみたが、それらしいものが見つからない。以下の漢詩が該当するのだろうか:

幾行南去之雁。一片西傾之月。
赴征路而独行之子。旅店猶●。
泣胡城而百戦之師。胡笳未歇。
(「幾行(いくつら)南(みなみ)に去(さ)る雁(かり)、一片(いつぺん)西(にし)に傾(かたむ)く月(つき)、征路(せいろ)に赴(おもむ)きて独(ひと)り行(ゆ)く子(し)、旅店(りよてん)なほ●(とざ)せり、孤城(こじやう)に泣(な)きて百(もゝ)たび戦(たゝか)ふ師(いくさ)、胡(こ)笳(か)いまだ歇(や)まず」黒丸は表記できないらしい)

 最後に駄句で締め括りにしようかと思うが、生憎、「月に雁」は季語ではないし、秋(仲秋の名月辺りか)と思われ、いずれにしても、今の時期の光景でもない。
 余談だが、この「月に雁」は、日本画の伝統的な画題のようだが、「良いツキを刈り込む」という意味合いもあるとかかんとか。
 が、「月に雁」は、頭髪の寂しくなった状態を風雅に表現するとも:

 月に雁去り行く果ての冬の空
 月に雁つい連想するローンかな
 月に雁まぶたに残る切手帳
 つきを刈りペンペン草の我が家かな
 月に雁見上げるばかりに終わりけり

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コメント

こんばんは。
弥一さんも切手収集が趣味だったのですか。
僕もです。
親戚が郵便局に勤務していたのでよく安く譲ってもらいました。中学時代はそれを切手収集がやはり趣味の仲間と交換したりして。
そのおじさんもやはり痴呆になりあの世に行ってもうだいぶ経ちます。
けど切手はまだ残っており、手紙出すのに使ったりもしますね。
弥一さんは集められた切手どうなさってますか?
母の調子もかなり落ち着いてきています。
このまま年越しといきたいです

投稿: oki | 2004/12/20 00:04

 小生も、当時集めた切手のアルバム、今も残っています。でも、収集は中学に入って間もなく、やめた。ブームの終焉と共に。本当の熱意じゃなかったってことか…。
 サラリーマン時代、たまにだけど、切手はシートで買っていた。手紙を出す際に貼れるけど、手紙を出す機会がない。換金しちゃおうか。
 おかあさまの容態が安定しておられるとか。小生の方も同じです。
 ところで、昨日、下北沢近辺に通る予定の立派な道路のことがテレビで特集されてましたね。

投稿: 弥一 | 2004/12/20 07:02

青梗菜さんじゃないけどオークションとかに出品してみたらいかがですか。
記念切手なら今でも集めてる人結構いるから高く売れるかも。
そういえば僕は行きませんでしたが、逓信博物館でローダーコレクション日本の切手の展覧会もあったようですね。
ブログへのコメントもどうもです。
明日は生稲さんのcasTy の生配信の日、気分転換に参加するか思案中。

投稿: oki | 2004/12/21 00:46

「生稲さんのcasTy の生配信」よく、分からないけど、気持ちがあるんなら、一度は行ってみたほうがいいかも。で、どんなだったか、日記に書いてね。 小生、生稲晃子ちゃんのファンです。年齢的にも合うと思うんだけど、ダメかな。

投稿: 弥一 | 2004/12/21 02:10

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